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賢者巡礼  作者: ナハァト
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偶には外で――と思う時がある

 とりあえず、黒い大蛇のようなモノには物理が効きづらそうなので、相手がエラルとワンドでないのなら、使う魔法は闇属性にこだわる必要はない。

 火属性魔法で溶かしてもいいし、光属性で焼き尽くしてもいいし、風属性で……まあどうにかできるかもしれないし、水属性で……なんだかんだどうにかできそうな気がするし、別にこだわらないだけで闇属性で……使ってみないとなんとも言えないが大丈夫だろうし、黒い大蛇のようなモノをどうにかする手段はいくらでも持っている。

 ………………。

 ………………。

 火属性と光属性かな。

 安定しているし、冒険するには謁見の間(ここ)は手狭だ。

 いや、謁見の間が狭いという訳ではなく、俺の魔法は基本広範囲になることが多いので、屋内に向いていないというだけである。

 ……はあ。青空の下。外で思いっきり魔法を使いたい。

 だからといって、屋内で魔法が使えない訳ではないのだ。

 帝城内でこれまで何度も使ってきたし、セカンとの約束でできるだけ被害も出さないように気を付けていて、上手くいっている。

 まだ多少の少の方で間違いないはずだ。

 それを維持していこう。

 そんな決意と共に魔力を漲らせる。

 黒い大蛇のようなモノの反応は顕著で、しゃー! が、しゃあー! に変わって、かなり警戒を強めたように見えた。

 けれど、黒い大蛇のようなモノは逃げない。

 俺を殺すように命令されているからだ。

 ……もし、黒い大蛇のようなモノが本当に生物としての大蛇であれば、本能が働いて逃走していたかもしれないと考えると……少しだけ可哀想な気がしないでもない。

 だからといって、狙われているのが俺の命である以上、手を抜くといった選択肢は存在しないのだ。

 まずは――。


「『白輝 断絶し 闇を閉ざす』」


 閉じ込めて動きに制限をかけようとするが、詠唱を始めると同時に黒い大蛇のようなモノが這い寄りながら迫り、ある程度近付くと跳びかかってくる。

 足ではなく胴体の方に噛み付いてきたので、体をずらして回避。黒い大蛇のようなモノはそのまま俺の横を通り過ぎていくのだが、そんな俺の動きを学習していたのだろう。

 尻尾のようになっている部分が曲げられ、その先端が俺の胸部を突き刺そうとしていた。


「『不可侵の輝き』」


 詠唱はやめずに、迫る尻尾のようになっている部分に向けて竜杖を振るう。

 ぶつかり、甲高い衝突音が響き、迫る尻尾のようになっている部分の軌道がずれて、俺の体をかすめることなく通り過ぎていく。

 内心では少しヒヤッとしつつ――。


「『光檻(ライトケージ)』」


 光の檻の中に黒い大蛇のようなモノを閉じ込める。

 あとはこのまま外から溶かせるくらいの超火力の火属性魔法を撃ち込めば終わりだ。

 火属性魔法の詠唱に入ろうとすると、黒い大蛇のようなモノが、光の檻の中で連接剣のような体をぐるぐると回転させて――光の檻を斬り裂く。

 少なくとも、普通の武器では斬り裂けない程度の強度はあった。

 それをこうも簡単に――ワンドという枷がなくなったことで、より動けるようになり、それが鋭さに繋がった、とかだろうか?

 でもまあ、斬り裂かれたのは事実なのだから、受けとめて次に繋げればいいのだ。

 それに、なんなら黒い大蛇のようなモノでも斬り裂けないだけの魔力を込めればいいだけ。

 つまり、まったく気にする必要はないと、詠唱に入る。


「『赤燃 羽ばたきが空を燃やし 火の粉を舞い散らせ その身に触れるモノを焼き尽くす 炎鳥(フレイムバード)』」


 炎で形成された鳥……多分鷹か? これは? ――が十数羽出現して、黒い大蛇のようなモノに向かって飛んでいく。

 黒い大蛇のようなモノは噛み付いたり、連接剣のような体を振るって斬り払う。

 学習したあとであればどうにかできる手段を行ったかもしれないが、初見ではどうにかできるのは無理である。

 数羽噛み付かれたり、斬り払われたりしたが、それだけで、残りは黒い大蛇のようなモノに張り付く。

 ちなみに、これに込められた魔力量はかなりで――それこそ合成魔法並に注いでいる。

 それは相当な高温となっており、黒い大蛇のようなモノにとっては想定外だった。

 炎で形成された鳥が張り付いたところが溶け始める。

 気付いた黒い大蛇のようなモノが振り払おうと暴れるが、しっかりと張り付いているのでそう上手くはいかない。

 何より、そのまま見ている俺ではないのだ。

 駆け出し、竜杖を利き手とは逆に持つ。


「『白輝 呪縛を断ち切り 戒めを解き放つ 眩く白き輝刃 光斬剣(ライト・ブレード)』」


 利き手に、光り輝く光剣が作り出され、さらに魔力を――これも合成魔法並に注ぎまくって強化する。

 輝きが強くなるだけではなく、鋭さが増し、剣身も倍に伸びた。

 光剣が充分に届くまで接近すると、黒い大蛇のようなモノが俺に気付くが――もう遅い。

 一閃。

 体のどこかに当たればいいと思っていたので、別に狙った訳ではないが、振り抜いた光剣は黒い大蛇のようなモノの大口のような部分を斬り裂き――もう何度か斬り裂いて、黒い大蛇のようなモノの連接剣のような体をバラバラにする。

 よっしゃー! と炎で形成された鳥が破片となった部分を燃やしていく。

 それで黒い大蛇のようなモノは動かなくなった。

 ………………。

 ………………。

 本当に動かなくなったのだろうか?

 念のため、竜杖でツンツン突いてみる。

 ……動かない。大丈夫そうだ。

 実際、まあ手強く……というよりはやりづらくなったので、ワンドを排除した判断は間違っていないと俺も思う。

 ただ、それだけでは足りなかっただけ。

 俺の魔力量についてもそうだが、何よりも足りなかったのは、黒い大蛇のようなモノ自身の学習量だと思う。

 戦闘についてもっと学習していれば……結果は変わらないだろうが、もっと手こずっていたかもしれない。

 けれど、これで邪魔するモノはなくなった。

 あとは、エラルとワンドへの――闇のアンクさんの復讐の続きを果たすだけ。

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