すごいことはすごいと言ってあげましょう
前話の終盤がわかりづらく、そのままわかりづらいままだとイメージもしづらいですし、それだと今後の数話分ですが影響してきますので、このままでは良くないと、その部分だけ改稿しました。
変えたのは、終盤の「黒い大剣と黒い大盾が触手のようになって黒い鎧にくっ付いた」部分で、もう少しイメージしやすいモノに変えています。
改稿したモノは下記。
「黒い大剣にあった継ぎ目が連接剣のように伸びていき、
黒い大盾は継ぎ目の部分から縦に四分割に分かれ、
黒い連接大剣となったモノの柄部分にくっ付くように繋がって、
四分割した黒い大盾の先端がそれぞれ内側に折れて牙のようになる。
その形をそのまま見れば、上下の大牙を見せるように口を開けた――巨大な黒蛇、だろうか」
と、黒い大剣と黒い大盾だけがくっ付いて、黒い大蛇のようになった、という形に思い切って改稿しました。
黒い鎧は黒い鎧のままです。
ここだけ知っていれば、前話の話を読み返す必要はございませんが、以前の前話を読んだ方には少し混乱させてしまうかもしれません。
それについては本当に申し訳ございません。
これで少しでも読みやすくなれば幸いです。
こちらの方で話を進めますので、よろしくお願いします。
黒い大剣と黒い大盾が繋がって、黒い大蛇のようなモノとなった。
元が金属ということもあってか、黒い大蛇のようなモノが少し動くだけで金属同士がぶつかる甲高い音が幾重にも響く。
少しうるさい。
それを見て、またか――と思う。
ただ、脅威度から言えば、少々物足りない。
いや、前回――バジリスク・特殊個体がおかしいのだ。
あれは例外として、改めて黒い大蛇のようなモノを見る。
元々大きかった黒い大剣がさらに伸びたので人の倍以上の長さがあって、牙のようになった黒い大盾も恐ろしく見えなくもない。それこそ、人の頭など容易に貫きそうだ。
「フハハハハハッ! どうだ! 恐ろしいだろう! これこそが栄えあるリミタリー帝国の魔道具の力が具現化したモノなのだ!」
ワンドが自慢するように言ってくる。
視線をずらせば、白衣の男性もどこか誇らしげにしていた。
「おお! 素晴らしいぞ! ワンドよ! その大きな牙でそこの小僧の頭を噛み殺そうという訳だな! 面白い! その光景を見てみたいぞ!」
エラルがそんなことを言ってきた。
さっきまで怯えていたようなモノなのに、今は意気揚々としている。
「はっ! お任せを! お望みのままの光景をお見せしますよ!」
ワンドも意気揚々としてきた。
そこまでだろうか? と考えてもわからないので、とりあえず、黒い大蛇のようなモノをしっかりと見てみる。
………………。
………………。
いや、やはり怖くない。
どうしても、バジリスク・特殊個体が脳裏を過ぎってしまう。
まあ、比べること自体が間違っているのだが、それを抜きにしても……やはり脅威には感じない。
しかし、ワンドと白衣の男性を見れば、何か言って欲しそうに見えなくもないので、何か言って欲しいのだろう。
「考える時間をくれ」
「感性が死んでいるのか? ここは普通恐れるところだろうが!」
素直に思ったことを言ったのに、何故かワンドは怒気を高めた。
感性が死んでいるとか、そう言われる意味がわからない。
わからないけれど答えたいから考える時間が欲しい、というだけなのに。
それに、普通恐れると言われても、どうしても恐怖は抱かないのだ。
まあ、どうやって動いているのかはわからないが……それか!
「勝手に動いている!」
「違うわっ! 恐れを抱けと言っているのだ!」
「恐れ? いや、それよりも動いているんだぞ。ただの大剣だったのと大盾だったのが。そっちの方がすごいと思うんだが?」
どう考えてもそっちだろう、と俺は思う。
すると、白衣の男性から同意の声が上がった。
「そう! その通りなんですよ! 試作段階とはいえ、すごいことなのですよ、これは! 何しろ、そもそも開発者は、リミタリー帝国史上一番の大天才であるこの私! 大天才である私がバトルドールの技術を使って作り出した魔道具なのです!」
なるほど。バトルドールを元にしている訳か。
言われて、妙に納得した。
……そう言われると、なんかすごさが落ちたような……いや、うん。すごいことは、すごい。
「バトルドールは人の形を取っていましたが、何も人の形にこだわる必要はない! 形はなんだっていいのです! であれば、常に携帯しているモノでも構わない! そう、たとえば武具! 魔力供給と命令は絶対ですが、それでもバトルドール級の戦力を携帯できるのは最大の魅力なのです! さらに、ある程度知能も与え、戦闘に対して」
「……だから、うるさいと言っている」
「より効率的に動けるよう――ぐふっ!」
饒舌に語る白衣の男性を、ナナンさんが物理的に黙らせた。
今回は二度目ということもあってか威力が強く、白衣の男性は気絶した……気絶、だよな? まあ、別にどっちでもいいか。俺が気にする必要はない。
「でもまあ、結局のところは魔道具なんだろ? それでそこまで強気になられてもな」
ワンドに向かって余裕の笑みを浮かべてみれば、ワンドも余裕の笑みを浮かべる。
いや、真似すんなよ。
「なら、試してみるがいい! そして、そのまま死ぬのだ! 行けっ!」
ワンドが命令を出すのと同時に、黒い大蛇のようなモノが本当に蛇のように這って襲いかかってきた。
身体強化魔法は、まだ継続している。
黒い大蛇のようなモノが飛び上がり、俺を噛み殺そうとしてきたので、タイミングを合わせて竜杖を振って打ち飛ばす。
ただ、元が黒い大剣と黒い大盾という大きさも相まって、思っていたよりも重い。
身体強化魔法中でもそこまで飛ばすことができなかった。
まあ、アレだよ。
これは俺が貧弱という訳ではないし、身体強化魔法も全開ではなく、全体的にかけているので、少し配分を間違っただけだ。
……心の中でそうしておく。
黒い大蛇のようなモノはなんでもないように床に落ち、そのまま再度襲いかかってくる。
今度は這ったまま来たので、俺は下からすくい上げるようにタイミング良く竜杖を振り――黒い大蛇のようなモノは直前でとまって避けられた。
そういえば、効率的に動くとかなんとか――と考えている間に噛み殺そうとしてきたので、咄嗟に飛び退いて避ける。
今の、先ほどよりも速度が上がっていたような。
そこに――。
「死ねい!」
ワンドが輝く黒い鎧の効果で瞬時に距離を詰めて殴りかかってきた。
姿勢は悪いが、足に力を入れて横っ飛びして、どうにか避ける。
「……なるほど。少し面倒になったかもしれない」
直ぐに姿勢を正し、竜杖を構える。




