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賢者巡礼  作者: ナハァト
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足せるなら足すよね?

 水人形(アクアゴーレム)に魔力を注いでさらに大きくする。

 燃え盛る土人形ブレイズ・アースゴーレムの倍くらいに――巨大な水人形ビッグ・アクアゴーレムと呼べるまでに。

 これでなら、本体と言うべき石人形の部分にも負けずにまともに戦える――こちらが優勢になるはずだ。


「くっ。さらにそこまで大きくするとは……なんて魔力量。羨ましい。けれど、これは考えようによっては………………そう。それだけ大きな思いでなければ、私を受けとめて包み込めないということ。つまり、私の思いに応えてくれようと」


「いや、これくらい大きければ倒せるかなって」


「……だから、真面目に返すなと言っているぅ!」


「変にこじれているからだろうが! せめて勘違いを正そうと」


「正さなくていいのです! 勘違いしたままでいいのです! いえ、勘違いさせなさいよ! 夢を見させて! そして、そのまま私を幸せにし」


巨大な水人形ビッグ・アクアゴーレム! GO!」


「最後まで言わせなさいよ!」


 巨大な水人形ビッグ・アクアゴーレム燃え盛る石人形ブレイズ・ストーンゴーレムが再度ぶつかり合い、殴り合う。

 体積が増したからか、こちらが押し負けることはない……ないのだが、やはり決めきれない。

 本当に、思っていた以上に石部分が硬い。それに、纏っている炎も厄介だった。最初に纏っている炎にぶつかることでこちらの表面が削れて形が歪み、それで力が分散しているようだ。それがわかっているからか、クフォラも燃え盛る石人形ブレイズ・ストーンアースゴーレムに魔力を注ぎ、纏う炎の火力を高めていた。


「フフフ。この纏っている炎の火力は、そのまま私の心の熱さを示しているのです。この炎(私の思い)……消せると思わないことですね!」


 聞こえなかったことに……いや、聞かなかったことにした。

 代わりに、魔法を発動。

 大きさで足りないのなら、別のを足すだけ。


「『緑吹 纏うは 外敵を吹き飛ばし 何者も触れさせない鎧 風纏い(ウィンド・ウェア)』」


 巨大な水人形ビッグ・アクアゴーレムの全身に風を纏わせる。

 すると、両手が渦潮のように動き始め、言ってみれば渦巻く水の人形ホワールプール・ゴーレムだろうか。

 これなら、と殴りかからせる。

 渦巻く水の人形ホワールプール・ゴーレムの渦巻く拳は、燃え盛る石人形ブレイズ・ストーンゴーレムの纏う炎を消してなお、石部分を削り取った。

 一部が抉り取られ、燃え盛る石人形ブレイズ・ストーンゴーレムはバランスを崩して上手く殴りかかれない。

 今が好機、と一気に畳みかける。

 渦巻く拳を――連打連打連打……。

 反撃の隙は与えない。

 燃え盛る石人形ブレイズ・ストーンゴーレムの石部分はこちらが攻撃する度に削れていき――最後は石人形(ストーンゴーレム)としての形を保てなくなって砕け散る。

 クフォラが信じられない、信じたくない、と大きく目を見開く。


「う、嘘よ! こんなの! そ、そう! 夢! これは夢! これこそ夢よ!」


「夢見る時間はもう終わりだ! いい加減、頭を冷やせ!」


 渦巻く水の人形ホワールプール・ゴーレムの拳がクフォラを打つ。

 元が水ということを活かしてそのまま腕を伸ばし、壊れた扉から帝城のホールへと入り、さらに伸ばしてクフォラを大階段の先――謁見の間の大扉に叩き付ける。

 伸ばした腕を戻し、壊れた扉から帝城のホールの様子を窺うと、クフォラは謁見の間の大扉を背にして立っていた。

 といっても、辛うじて、という感じで、いつ倒れもおかしくない。

 それでも立つと、行く手を遮るというのなら、今度は魔法で、と考えたところで――。


「こ、こんな、私でも……いつか、きっと……」


 さすがに距離があったので、口の動きから察してこんな感じの呟きだと思う。

 ばたり、と倒れるクフォラ。

 なんというか、「暗黒騎士団(ダークネス・ナイツ)」というだけではなく、色々とすごい魔法使いなのは確かである。


     ―――


 クフォラを倒したことで、この場の勢いは完全にこちらの方へと傾き、セカンたちが中心となって反乱軍の精鋭たちが、大階段を守るリミタリー帝国軍を一気に倒していった。

 それでこの場を掌握――とはならなかった。

 帝城に襲撃をかけてそれなりに時間が経っていたというのもあるが、何より帝城のホールで暴れ過ぎた。

 ここに居る、戦っている、といって居るようなモノなため、渦巻く水の人形ホワールプール・ゴーレムは大き過ぎるので井戸に戻して帝城のホールに戻ると、帝城の外――帝都側や帝城内から、多くはないがリミタリー帝国軍の援軍が駆け付けてきて、再び戦闘に入る。

 目だっただろうしね、ゴーレムが。

 特に俺のは大きくしたし。

 だから、リミタリー帝国軍の援軍を俺が招き寄せたと言っても過言では……いや、過言だな。うん。そういうことにしておこう。時間だ。時間。そうに違いない。

 それに、こちらも決着まであと少し。

 追加も来るだろうし、さっさと援軍を倒して――。


「ここのことは気にせず、行ってください! リミタリー帝国軍の援軍は私たちが抑えますから、その間に!」


 反乱軍の精鋭の一人がそう言って、俺を先に行かせようとしてくる。

 いや、俺だけではない。セカン、トゥルマ、エル、ナナンさんにも、それぞれ反乱軍の精鋭が先に行けと声をかけていた。


「お前たちの意志、確かに受け取った! ……死ぬなよ。終わったあと、お前たちとは私秘蔵の美味い酒を酌み交わしたいからな」


 セカンがそう言い、謁見の間の大扉へ向かう。

 トゥルマも反乱軍の精鋭たちに声というか死ぬなという指示を出してから向かい、エルとナナンさんも頷いてから謁見の間の大扉へ。


「いや、でも援軍はまだ」


「だから、俺たちが対処できる今の内に行って、俺たちがやられる前に終わらせてきてください」


 戸惑う俺に、反乱軍の精鋭の一人がそう言ってくる。

 ……わかった、と頷きを返してから向かう。

 反乱軍の精鋭たちとリミタリー帝国軍の援軍が戦っている中、謁見の間の大扉の前に、俺、セカン、トゥルマ、エル、ナナンさんが集う。密かに、アブさんも付いて来てくれている。

 行くぞ、と頷き合ってから、出会い頭の攻撃に注意しつつ、謁見の間の大扉を開けた。

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