思っていたよりもできる時ってない?
――目が焼けそうだ。
いや、違う。これだと目自体が焼けるということだから、視界が焼き付きそうだ。
でも、実際は目が焼けそうでも間違いはない気がする。
それぐらいの熱量を、先にある場所から感じ取れた。
視線の先がそんな状態なので薄目でしか確認しかできないが、そこは火と光の合成魔法「光斬剣・火炎纏い《フレイム・ロール》」で作り出した螺旋状の火炎を纏う光り輝く巨大な剣と、U型建造物から照射された黒い光線がぶつかっている場所。
……どうにか、黒い光線が反乱軍の本陣に照射されることは防ぐことができた。いや、まだ完全に防いだ、回避できた訳ではない。
黒い光線はまだ照射され続けている。
黒い光線自体はぶつかっている場所から放射状に広がっていた。上部はそのまま空に消えていき、下部は地上に降り注いでいる。
幸いだったのは、反乱軍の本陣と守るという意識から反乱軍の最前線に出ていて、さらにそこから巨大な剣を前に突き出したので、衝突したところが反乱軍からある程度距離があったということ。
放射状に降り注ぐ黒い光線が反乱軍に当たることはなかった。
寧ろ、リミタリー帝国軍が陣取っていた方に近く、反乱軍に攻めるため前に出ていたようなので、そちらの方に被害が出ている。
ただ、確認できたのはそこまで。
意識がもうそっちには割けない。
目の前に集中しないといけない。
何しろ、防いでいる巨大な剣が今にも砕けそうなのだ。
「ぐ、ぐぐぐ……」
黒い光線の勢いがすさまじく、巨大な剣にガンガン魔力を注いでどうにか形を保っているが、少しでも気を抜けば一気に砕け散って、そのまま焼き尽くされるだろう。
集中。集中。これ以上は何も考えずに巨大な剣を維持することだけに集中。
………………。
………………。
「うぬぬぬぬぬ……」
駄目だ。集中できないというか、思考が散らばる。
こういう時に限って――というべきか。アレだ。きっと、黒い光線が放射状に散っているのが良くない。それがどうしても薄目の視界に入るから、同じように思考が散らばってしまうのだ。きっとそうに違いない。
だが、このままではまずい。思考が散らばることで巨大な剣が砕け……砕け………………あれ? 砕けない? なんか意外にいけそうな気がしてきた。
いやいや、黒い光線の元となっているのは、魔法使い凡そ百人分の魔力量。それに比べてこっちは俺一人。俺の方が先に魔力が尽き………………いや、まだまだいけそうな気がする。
あれ? おかしいな。合成魔法を使い、それに魔力をガンガン注げば直ぐに魔力が尽きるのに……ん? ……いいや、違う。違うな。間違っているぞ。俺。
今、俺が受け継いでいるのは莫大魔力五人分。
それが具体的にどれだけの量であるかは俺の感覚でしかわからないが、その量を一般的に置き換えた場合、もしかして……魔法使い凡そ百人分よりも多い? 何しろ、五人すべてがそもそも莫大な魔力量持ちだし。
……なんか余裕がでてきた。こういうのも気の持ちようと言うのだろうか。
先ほどまでは砕けそうだった巨大な剣も、今はしっかりとしている。
いや、それでも黒い光線が脅威であることに変わりはない。
照射される瞬間がわかったからこそ今こうして対応できているが、もしいきなり照射されればさすがに対応できずに焼き消されてしまう。それは間違いない。
でも、今は俺の勝ちだ。
「ふ、んんんんん……」
巨大な剣にさらに魔力を注ぐ。
修復のために、ではなく、より強く強化するために。
――輝きが増していき、それに合わせて纏っている螺旋状の火炎がさらに大きく激しくなり、それで勢いが付いて巨大な剣が回転を始めて、黒い光線を完全に受け切る。
いや、少し押すだけで押し返すことができた。
だから――一気に押し返す。
「……『白輝赤燃 光斬剣・火炎纏い・発火突撃』」
駄目押しと、さらに魔力を注いで巨大な剣をより強化して――。
「はあああああっ!」
気合の声と共に前に、黒い光線を押し返しながら進んでいく。
「うわあああああっ!」
「ぎゃあああああっ!」
「ど、どけどけえ! こっちにくるなあ!」
なんか騒がしい声が聞こえてきたと思うと、それは地上からだった。
……ああ。俺が押し返したことで、放射状に散らばっている黒い光線が降り注いでいる場所も変わっていくのか。それから逃れようと、リミタリー帝国軍が逃げまどっている。あっ、棒立ちしていたバトルドールが焼き尽くされた。退くという行動は取れないのだろうか?
まあ、地上がというか、リミタリー帝国軍がどうなろうが今は関係ない。
このまま一気に前へ――合わせて、押し出すように手を前に突き出す。
回転する巨大な剣がその動きに合わせて飛び出し、黒い光線を放射状に割きながら少しもとまることなくぐんぐんと進んでいき――その途中で黒い光線の照射が終わるが、回転する巨大な剣はそのまま衝突するようにしてU型建造物を破壊する。




