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賢者巡礼  作者: ナハァト
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危険だと背中がゾワゾワする?

「『黄覆 貫き穿つ 振るわれる一突きは 集うことで形作られる頑強な塊 土槍(アース・ジャベリン)』」


 クフォラが魔法を発動。

 その周囲の土が空中に浮かび上がって集まり、魔法名の通りの槍を形成。

 八本。


「……多くない?」


 いや、それだけではなく、大きさも普通より大きい。

 人の頭くらい簡単に貫きそうだ。

 というか、大きさもそうだが、数も普通は一本か三本のはずなので、それだけでもクフォラが並の魔法使いではないことを証明している。

 まあ、「暗黒騎士団(ダークネス・ナイツ)」だし、並でないのはわかっていることだ。


「『青流 流体が集いて 天まで噴き上がり すべてを飲み込み弾く 水壁(アクア・ウォール)』」


 水壁を張って土槍を防ぐ――が、何本かは貫通して襲いかかってくる。

 だが、そうなる可能性も見越していた。

 何しろ、魔法には一応相性があるのだ。

 火は風に強く、風は土に強く、土は水に強く、水は火に強い。光と闇は相互。無は特殊で、強く通じるモノもあれば、まったく効果がないモノもある。

 まあ、魔法の威力――注がれる魔力量で覆すこともできるのだが、同じ威力同士、あるいは多少上回っている程度であれば相性の方が作用する、といったところか。

 少なくとも、余程の差がなければ覆すのは難しいだろう。

 そこら辺は受け継いだ記憶によって把握できている。

 なので、クフォラの放つ魔法がどれだけの威力かわからなかったため、回避行動を既に取っていた。

 水壁を張るのと同時に横に駆け出していたため、貫通してきた数本の土槍は俺に当たることなく、地面に突き刺さって崩れていく。

 水壁の範囲を抜けると同時に――。


「『青流 集約して穿ち 削り貫く 一筋の流れ 水光線(アクア・レーザー)』」


 クフォラに向けて水光線を放つ。


「『黄覆 集いて頑強 密接して強固 すべてを断ち塞ぎ一切の侵入を防ぐ 土壁(アース・ウォール)』」


 クフォラが自身の姿を覆い隠すように土壁を作り出す。

 水光線が土壁に当たるが――貫き切れなかったようだ。

 やはり、相性の問題はでかい。


「……フフフ。セカンと共に来たことで、あなたのことについて確信が持てましたよ」


 クフォラが土壁を消し、浮かべた笑みを見せてくる。


「俺のこと?」


「ええ。あなたでしょう? ワンド団長が手配をかけた、セカンと共に帝都から逃げ出した者は」


「……まあ、その通りだが? それが?」


「先ほど私の炎蛇を消したことといい、ワンド団長から聞いた帝都から逃げ出した際の方法といい、水属性魔法を得意としているようですが、こうして土属性も使える私には勝てませんよ。情報では風属性も使うようですが、言わなくてもあなたが体験したように火属性も使えますので、魔法の相性的にはお互い優位と劣位を持っています。なら、勝敗は魔法使いとしての実力ですが、残念ながらそれは私の方が上である以上、あなたは勝てません。おわかり頂けるかしら?」


 ……あ~、なるほど。まあ、言いたいことはなんとなくわかる。わかるよ。でも、その理屈でいくのなら、俺の方が強くない? いや、俺が未熟なのは変わらない。それは間違いない。それでも、魔力量がそもそも違うし、「暗黒騎士団(ダークネス・ナイツ)」の黒い鎧で強化しようとも、それでもこちらの方が上な気がする。それに相性と言っても、それは注ぐ魔力量でどうとでもできるし……俺からすれば、寧ろクフォラの方が勝てる要素がないが?

 ……ああ、でも、そうか。クフォラからすれば俺がどれだけの魔力量を持っているかとか、実際は水属性と風属性だけではなく、あと火属性、光属性、闇属性の三属性が使えると知らないのだから、そう思っても不思議ではないな。


「わかって頂けたようですね」


 勝者の笑みを浮かべるクフォラ。

 しまった。考え事に集中して黙っていたからか、沈黙は肯定と受けとめられたようだ。


「では、大人しく降参してください。無駄に傷を負う必要もないでしょう……でないと、そのあと監禁して私しか見ないように調教する際に楽しめませんから」


 ………………。

 ………………。


「え? ん? なんて? か、監禁?」


「それと調教です」


「い、いや、なんでそんな話に?」


 というか、これまでの流れなら、反乱軍の情報を引き出すための拷問、あるいはワンドが俺と闇のアンクさんとの関係を聞き出そうと拷問……どちらも拷問だな。それはそれでどうなのだろう。暗い未来しか……いや、まだ捕らわれていないのだから悲観するのは早い――じゃなくて、なんでそんな話に?

 クフォラは頬を染め、もじもじしながら上目遣いで答える。


「……そんなの、決まっているでしょ。さっき、私の乙女心を傷付けたんだから、その罰だぞ♪」


「………………」


「………………」


「『青流 集約して穿ち 削り貫く 一筋の流れ 水光線(アクア・レーザー)』」


「『黄覆 螺旋を描いて 貫き抉れ 歩みをとめること叶わず 螺旋土槍スパイラル・アース・ジャベリン』」


 俺が水光線を放ち、クフォラが螺旋状の土槍を放つ。

 魔法は中間地点でぶつかり、せめぎ合う。


「ぐぐぐ……」


「ふぬぬ……」


 相性的には負けているが、そこは魔力量で補う。

 けれど、中々押し切れない。

 クフォラの魔力量が思っている以上にある。

 ただ、それはこちらも同じ。クフォラが思っている以上の魔力量持ちなのだ。

 さらに魔力を注いで一気に押し切――ろうとする前に何かが飛来して、魔法がぶつかり合っているところに当たり、その衝撃でちょっとした爆発が起こる。

 土煙が大きく巻き起こり、視界を覆う。

 さすがに身動きが取れないため、警戒しながら様子を窺っていると、土煙が晴れていき……クフォラの横に黒い鎧を身に付けた男性が立っていた。

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