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賢者巡礼  作者: ナハァト
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濃いヤツが薄くなることだってある

 戦いは終わった。

 人数は増えたが、終わったことは終わった。

 終わったことは間違いない。

 俺からすれば不毛な戦いなのだが、当人たちからすれば必要な戦いだったのだ。

 まず、俺がかけ声と共に両腕を交差したあと、普通に戦いが始まった。

 人数ではトゥルマと「日の出傭兵団サンライズ・マーセナリーズ」が勝っているが、個としてはセカンとファイが勝っている。

 といっても、さすがに生死までは懸けておらず、普通に殴り合いだ。

 戦いに関しての嗅覚が優れていそうなファイも、それに合わせている……というか、なんであいつは普通に交ざっているのだろうか?

 ただ、確かにセカンとファイは強いが、トゥルマと「日の出傭兵団サンライズ・マーセナリーズ」も負けていない。

 人数差を活かして上手く戦っている。

 いくらセカンとファイが強かろうとも――そう思った時、セカンが声を張った。


「総員! 戦の時ぞ!」


「「「輝く時だ(シャイニーング)!」」」


 冒険者たちが飛び出してきた。

 いや、これだと語弊があるというか、他の冒険者たちに悪い。

 何しろ、冒険者たちの他に暗殺集団も交ざっているのだ。

 つまり「夜明け騎士団(デイブレイク・ナイツ)」が現れた。

 これで戦局が変わるかと思ったが、トゥルマが直ぐに手を打つ。


「集え! 同士よ!」


「「「華やぐ時だ(ブリリアーント)!」」」


 兵士たちが現れた。

 いや、これだと語弊が……ないな。共に来ている兵士たちはみんな「黎明の破壊騎士団ドーン・ブレイクナイツ」だ。

 流れるように、「夜明け騎士団(デイブレイク・ナイツ)」はセカンとファイに、「黎明の破壊騎士団ドーン・ブレイクナイツ」はトゥルマと傭兵団に合流して殴り合いが始まる。

 もう少しこう、これはどういう状況だ? と疑うヤツは居ないのだろうか?

 というか、本当にファイの存在が浮く……いや、ファイが浮くって……。


「……ファイ!」


 呼ぶとファイがこっちに来る。


「なんだ? と言いたいが、なんとなくわかる。あれだろ? これは俺が交ざっていいヤツじゃないってことだろ」


 戦いのことになると空気が読めるようだ。

 その通りだと頷き、ファイは待機となる。

 なので、あとは終わるまで見学していればいいと思っていたが、そうはならなかった。


「これは……また、夜のお店のことで戦っているのですか?」


 この戦いに参加していない者たちに守られながら、ネラル殿下が現れた。


「よ、夜のお店?」


 共に居るアンル殿下が驚いている。

 ネラル殿下からそのような言葉が出るとは思っていなかったようだ。

 まあ、それは俺もだが。

 だ、誰だ! そんな言葉を教えたのは!


「……どういうことなのかな? 弟が妙な言葉を覚えてしまったようなのだけど? 説明してくれる?」


 笑顔なのに、その雰囲気には恐怖を覚えた。

 というか、どうしてそれで俺を見るのかわからない。

 寧ろ、俺はネラル殿下には秘匿するように動いている派であることを教えよう。

 ネラル殿下の執事とメイドに協力してもらい、アンル殿下に説明した。

 もちろん、ネラル殿下には聞こえないように。

 納得してくれたかはわからないが、俺、執事、メイドは頑張ったということだけは伝わったと思う。

 そうしている間に、決着が着く。

 最後は、セカンと傭兵団の団長だけが立っていて、互いに拳が相手の頬に当たっていた。


「……ふっ。やるな」


「……そっちこそ」


 そう言って、二人共倒れる。

 この結果は――引き分け? でいいんだろうか? いい気がする。

 少なくとも、互いにただの敵ではなくなったと思う。

「敵」と書いて「とも」と読む場合もある的な、そんな何かに……なっていると言いな。

 まあ、このあと、セカンとトゥルマは、アンル殿下からオハナシがあると思う。


     ―――


 セカンとトゥルマがアンル殿下とオハナシしている間に、傭兵団の団長と話をする。

 具体的にはここに現れた目的だ。


「……同士ではなかったのか?」


 いや、その話はいいから。

 ほら、今その話は繊細な事柄というか、怖い笑みの人が居るからやめようか。

 その問いの答えは「はい」か「YES」しかないし、その話はあとでというか、もうしないでおこうか。結果は同じなのだから。

 そうして話を聞く。

 アンル殿下を魔道具研究所の町・マアラから救出したあと、空を進む俺たちのあとを兵士が数名追っていて、その途中で傭兵団「日の出傭兵団サンライズ・マーセナリーズ」にも付いてくるように命令したそうだ。

 数名だとさすがに偵察目的だろうが、それでも大勢で行こうとしたのは……まあ、見つかった時の囮とか盾にしようという魂胆だったのだろう。

 立場上逆らうことができず、「日の出傭兵団サンライズ・マーセナリーズ」は兵士たちに付いていったが、その対象が俺たち――正確には協力した俺だとわかり、逆に兵士たちを倒して捕らえ、そのまま合流しようとした。

 そこで運がいいのか悪いのか、セカンとファイと先に邂逅して、ああなったと。

 捕らえたリミタリー帝国の兵士たちは、復活したこちらの兵士たちが受け取り、冒険者たちの協力を得て見張っている。

 まあ、何か聞ける情報があればいいが、期待はしない方がいいだろう。

 それに、「日の出傭兵団サンライズ・マーセナリーズ」という強力な味方ができたことの方が、間違いなくいいことである。


     ―――


 下手に動き過ぎるとあと追いの軍とすれ違いが起こるかもしれないので、魔道具研究所の町・マアラからもう少し離れるだけに留めて、あと追いの軍が進んでくるであろう道が見えるところで休むことした。

 休んでいる間に、セカンたちは「日の出傭兵団サンライズ・マーセナリーズ」や捕虜としたリミタリー帝国の兵士たちから、魔道具研究所の町・マアラについて可能な限りの情報を得て――三日後。

 あと追いの軍と合流し、魔道具研究所の町・マアラへと攻め入る。


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