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賢者巡礼  作者: ナハァト
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本能で真実に迫る人って居るよね

 竜杖に乗って空を飛ぶ。

 といっても、乗っているのは俺だけで、アンル殿下を背負った金髪の男性と、ファイは竜杖に掴まっている状態である。

 どこに進めばいいのかは、アブさんが向かうべき先を案内してくれているので問題ない。


「はははははっ! すげえな! 空飛んでいるぞ、これ! いや、見てたし、知っていたが、いいな、これ! 面白い!」


 ファイが喜び、空中なのにぶらぶらと動く。

 その動きに引っ張られて、竜杖が少し揺れる。

 俺は落ちないので安心しているが、そうではない人も居る。


「う、動かないでいただけますか! ファイ!」


 金髪の男性が狼狽えながらそう口にする。

 少しばかり顔面が蒼白になっているような気がしないでもない。


「あ? なんだ、エル。怖いのか?」


「ち、違います! 私はアンル殿下を背負っているのですよ! アンル殿下を無用に怖がらせるのは如何なものかと言っているのです!」


 ファイが玩具を見つけた子供のような笑みを浮かべる。

 ちなみに、当のアンル殿下は地上を見て「おお~……」となんか空に居るという状況を楽しんでいるように見えた。

 背負われている状況だというのに、案外大物かもしれない。

 それとも、それだけ金髪の男性が手を放さないと信じているのか……まあ、金髪の男性は本当に怖いのか、絶対放すものかと竜杖をガッチリ掴んでいる。


「……うりうり」


「や、やめてください!」


 そこにファイがちょっかいをかけようとして、金髪の男性が焦っている。

 やめてあげなさい。


     ―――


 空から見ると動きがよく見えていた。

 魔道具研究所の町・マアラからの去り際で見えたのは、紫髪の女性と兵士たちは既に動き出していたということ。

 ただ、それはこちらを追うような動き――ではない。

 いや、こちらを追っている兵士たちも居るのが見えたのだが、数名と少数だった。

 もっと大々的に兵士を出して追ってくると思ったのだが、どうしてだろう? と不思議に思っていると――。


「おそらく、クフォラは私たちの向かう先――そこに元周辺国の軍が展開していると考えたのでしょう。それを警戒して、ますは少数で偵察。規模を確認している間に、マアラに防衛を敷く……だと思われますが、違和感もあります」


 アンル殿下が少し離れた位置となった魔道具研究所の町・マアラを見ていたかと思えば、俺を見てそう口にしてきた。

 クフォラは……あの紫髪の女性のことか。

 覚える必要があるかわからないが……また会いそうな気がしないでもないので、一応覚えておこう。

 というか……あれ? 俺、口に出していたか?


「あれ? 違いましたか? マアラを見ていましたし、クフォラの出方を考えていたと思ったのですが?」


 いや、合っているけども……なんというか、アレだな。急に存在感を出してきた、アンル殿下。

 戦闘ではないところで光るのかもしれない。


「間違ってはいないが、違和感というのは?」


 まだ空を飛んでいる状況なのに、金髪の男性の目が鋭くなる。

 アンル殿下への言葉遣い――と思っていそうだが。


「エル。その忠誠は嬉しく思いますが、私は気にしていませんよ。相応の場で、その人なりの相手に対する言葉遣いであれば充分だと思っています。なので、あなたも気にしないでください」


 アンル殿下がそう言ってくる。

 ……仕方ないな。金髪の男性にファイを仕掛けさせようと思っていたがやめておこう。

 ファイは、そうそうと頷いている。

 いや、どちらかと言えば、お前も気にしない(こっち)側だからな。

 言葉遣いとか面倒とか思っているだろ。


「……それで、質問の答えは?」


「はい。マアラは魔道具研究所の町です。魔道具の研究・開発に力を入れているリミタリー帝国にとって重要拠点であることに変わりありませんし、それなりの兵士を駐留させていますが、それはそれなりでしかなく、他の町と比べて防衛力が高い程度です。何しろ、帝都に魔区がありますから、最悪放棄しても問題ないのです。なのに、クフォラがわざわざマアラで防衛を選択したことに違和感がありまして……」


 う~ん……と考え出すアンル殿下。

 ただ、俺はその答えを知っている……いや、正確には答えを知っている者を知っている、だろうか。

 俺はファイを見る。

 ファイは面倒そうな表情を浮かべた。


「……あるぞ。面白くないのがな」


「え? 何かあるんですか?」


 驚きの声を上げたのは、金髪の男性。

 いや、どうして「暗黒騎士団(ダークネス・ナイツ)」のお前が知っていない? と思ったのだが――。


「あるって言っているだろ。まあ、お前はクフォラから裏切りの疑惑を向けられていたようだし、得られる情報を制限させていたんじゃねえか?」


「……くっ。私がそう思われるのはその通りですし構わないのですが、だからといって、私が知らずに居て、あなたが知っているというのが……」


「お前、大概失礼だよな。そこはまあ、俺がという存在の成せる業だな」


 ファイはうんうんと頷くが、俺、アンル殿下、金髪の男性は呆れ目でファイを見る。

 何言ってんだ、こいつ、と。

 しかし、こういう存在って本当にいつの間にか知っていたり、確信に迫っていたりするんだよな。油断できない。

 ファイはそのまま金髪の男性に声をかける。


「だが、詳細は無理でもお前も一端くらいは聞いているんじゃないか?」


「え? ………………まさか! 完成しているのですか!」


 金髪の男性が驚きの表情を浮かべる。

 その詳細を聞きたい――ところではあるが、先を行くアブさんが下を指し示す。

 指し示す先にはセカンたちが居た。


「話はあとだ。セカンたちが居た。合流するぞ」


 そう声をかけて、地上へと下りていく。

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