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賢者巡礼  作者: ナハァト
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知らなければ、知っている人に聞けばいい

 説明を受けた。

 現皇帝ラトールには三人の息子が居る。


 第一皇子――ラフラル・リミタリー。

 正皇妃との間にできた子で、まあ言ってしまえば、現皇帝を小さくした感じのような、似たような性格の持ち主だそうだ。

 皇位継承権第一位。所謂皇太子。

 そして、完全なる敵側。


 第二皇子――アンル・リミタリー。

 現皇帝ラトールがメイドに手を出し、それでできた子で、実は第一皇子であるラフラルより先に生まれているが、庶子であるため第一ではなく、ついでに皇位継承権もない。

 それでも第二皇子として数えられているのは、豊富な魔力量を有しているらしく、そこに目を付けられているからだそうだ。

 リミタリー帝国の危険性を知ると、セカンと共に反乱を起こそうとした。

 現在は捕らわれの身……らしい。


 第三皇子――ネラル・リミタリー。

 今目の前に居る子。

 既に亡くなっている第二皇妃の子で、十二歳とまだ幼さはあるが頭の良い子――と元近衛騎士団で現在は反乱軍の中核の一人、トゥルマは言う。

 そうは見えないが……それを口にしない方がいい、というのはわかりきったことなので、口にはしない。

 ただ、リミタリー帝国の危険性にはもっと幼い頃から薄々気付いており、その頃からアンルに懐いていたそうだ。


 とりあえず、殿下A、殿下B呼びは駄目だと空気的にわかるので、区別がつくように名前と殿下を合わせて呼ぶことにした。

 セカンがそのままなので、トゥルマもそのままである。

 まあ、名称なんてそれくらいだ。

 そうして、アンル殿下とネラル殿下が旗頭となって、元周辺国の者たちと協力して反乱軍を組織して、リミタリー帝国と敵対している――というのが現状である。

 アンル殿下とネラル殿下は元周辺国領土の方によく訪問しており、人となりは知られていたため、皇子が反乱軍の旗頭となっても受け入れられているそうだ。

 ちなみに、セカンが口にしていた殿下とは、ネラル殿下のことではなくアンル殿下の方とのこと。

 アンル殿下が捕らわれていることを、セカンは知らなかったようだ。

 以前、反乱軍との合流はここではないと言っていたが、まずアンル殿下の居場所を知ってから、合流するために動くつもりだった。

 しかし、アンル殿下に連絡を取ろうとしても取れず、嫌な予感というか不安は抱いていたそうだ。

 きっと、その不安を紛らわすために夜の店に入り浸ってのめり込むように……かどうかはともかく、連絡を代わりに受けたネラル殿下とトゥルマたちが来て、今しがたその事情を知ったそうだ。

 なので、これからはその捕らわれたアンル殿下を助け出すために動く。

 死んでは……いないと考えられている。

 その理由として、魔力量の豊富さを利用されている、と考えられるからだ。

 リミタリー帝国は魔道具の開発・製造に力を入れていて、そのために魔力が必要だというのなら……まあ、可能性としては高い。

 だからこそ、早く助け出したいのは反乱軍として共通の認識だが、問題が一つ。

 どこに捕らわれているのか、反乱軍の方も掴めていないのだ。

 調べているが、偽情報も含まれていて判明しない。

 頭を悩ませる反乱軍。

 ネラル殿下も、アンル殿下を思ってどこか悲しそうだ。

 ただ、俺は思う。


「……あいつらなら知っているんじゃないか? そういう裏の部分に詳しそうだし」


「誰だ?」


 セカンが尋ねてくる。

 いや、お前もよく知っている集団だよ。


     ―――


「アンル殿下の行方? いや、知らないな」


 暗殺集団の団長――あの現れた時に前に出ていたサファイアちゃん推しの暗殺集団の一人で、未だに名前は教えてくれないので、団長と呼ぶしかなかった――が、そう答える。

 あのあと、直ぐに呼び寄せたのだ。

 来るまでの間に、簡単に事情説明はしておく。

 といっても、経緯は曖昧に伏せておき、今は表立ってではないが協力してくれていることさえ理解してくれればいい。

 実際に現れて――暗殺者なのに、普通に会議室の扉を開けて「うぃーっす」と入ってきた――トゥルマと兵士たちは特に警戒していたが、いきなり襲いかかるよう真似はしなかったので、理解してくれたと思う。

 俺とセカンはホッと安堵したものだ。

 セカンにとっては、伏せている方でも協力者となっているし、二重の意味で、だろう。


「本当に知らないのか?」


 セカンが再度確認。


「いや、本当に。忘れているとかではなく」


 暗殺集団の団長は再度答える。

 嘘を吐いているようには見えないが……念のため。


「もし嘘だったら、そういうヤツだってチクるぞ」


 誰に、は言わなくてもいいだろう。


「誓って嘘ではない。だから……」


 会いに行くなよ、と暗殺集団の団長の目が怖い。

 セカンも。

 ……もしかして、未だに俺の話が出てくるとか?

 まさかね。

 指名してくれる客を増やしたいとか、そういうことだろう。

 それに、できれば俺だって会いたくない。

 セカンと暗殺集団の団長から要らぬ敵意を向けられたくないのだ。

 そこら辺がなければ、まあ………………いや、セカンと暗殺集団の団長よ。何故俺をジッと見てくる。怪しい……ではない。


「……まあ、いい。少なくとも、私はその言葉を信用しよう」


 セカンがそう結論付けた。

 ついでに俺の会わないという選択についても信用すると口にして欲しい。

 暗殺集団の団長の言葉については、俺や冒険者たちも異論はない。

 ネラル殿下とトゥルマたちは……まあ、セカンがそう判断するなら、という雰囲気だ。

 ただ、そこで暗殺集団の団長が口を開く。


「ただ、これは今知らないというだけで、調べれば何かわかることがあるかもしれない」


 全員の視線が暗殺集団の団長に向く。

 一斉に見られることに慣れていない、と暗殺集団の団長は少しビクつきながらも続きを口にする。


「そちらが調べたといっても、場所も人員も元周辺国の方ばかりだろ? ネラル殿下は皇子といっても権力までは与えられておらず、リミタリー帝国の元近衛の人や付き従う兵士が居ても、あんたたちは言ってしまえば表の人間だ。裏の人間ではない。裏には裏にしか流れない情報もある。いや、寧ろ裏はそんなのばかりだ。アンル殿下がどこに捕らわれているかわかるかもしれないな」


 そういうことなら、とお願いする。

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