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賢者巡礼  作者: ナハァト
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暗闇って本当に何も見えないよね

 竜杖に乗って空へと舞い上がり、帝都の外壁を越えるとアブさんが居た。


「無事に出られたようだな」


「まあな。そもそも、俺一人ならそう難しいことじゃない。ところで、皆は?」


「最後の……なんだったか? まあ、とにかくアルム以外の者が揃うと、計画していた通りに近くの森の中へと移動を開始した。今はまだ向かっている途中だろう」


 向かっているのなら良かった。

 セカンとか俺を待ちそうだったし。

 帝都外壁付近とか、外壁から狙われる可能性もあるような場所で待たれるとか居られるのは、俺としてもやめて欲しかったので安堵だ。

 あとは、この夜の間にどれだけ移動できるか、だな。

 ある程度痕跡を消しながらの移動となると時間はかかるが……まあ、その辺りはセカンも心得ていると言っていたから大丈夫だと思う。


「そうか。特に怪我人とかは?」


「近接でやり合っていた者は多少、といったところか。まあ、それも助け出した者たちの中に回復魔法を使える者が居たので直ぐに治っていたが。命に係わるような傷を負った者は居ない。この国の兵士を相手取っていたと考えると、中々優秀な部類ではないか?」


「そうだな」


 答えながら、視線を帝都に向ける。

 残る直近の問題は――。


「追跡してくると思うか?」


 同じことを考えていたのか、アブさんがそう言ってくる。


「まあ、形だけは追跡部隊を出すんじゃないか」


「形だけ?」


「ああ。いくら元『暗黒騎士団(ダークネス・ナイツ)』のセカンが居るとはいえ、逃げ出したのは五十人くらいでしかない。本当に内戦間近なら、リミタリー帝国側も準備を行っているだろうし、本格的に追跡させるだけの余裕はないと思う。それに、結局のところ、俺たちがどこに向かうかはわかっているだろうし」


「……反乱する側。確か、元周辺国の集まりだったな。その口振りだと、アルムもそこに向かうのか?」


「ああ。その予定だ。まあ、殿下次第では個人で動くことになるかもしれないが。俺の目的は『エラル・リミタリー』と『ワンド』に対する、アンクさんの復讐を行うことだからな」


「そうか。ところで、あのアンク殿が復讐を願うとは何をされたのだ?」


「まあ、そう願うだけのことだよ。俺はその記憶を受け継いだだけだし、知りたければアンクさんに聞いてくれ。教えてくれるかどうかはわからないが」


「それもそうだな。ただ、某が手伝うのは構わないだろう?」


「喜んでお願いするよ」


 そんな会話をしつつも、帝都の様子を窺っていたが、追跡部隊のような者たちが出てくる様子はなかった。

 行く場所がわかっている以上追う気がないのか、あるいは俺が燃やし尽くしたU型建造物の方を優先させているのか。

 ワンドが命令を出して必死に守ろうとしていたし。

 まあ、建造物であるし、また造られる可能性はあるが……時間はできたと思っておこう。

 とりあえず、セカンたちと合流するか、と帝都から離れていく。


     ―――


 ………………。

 ………………。

 え? あれ? どこ? セカンたち、どこに居るんだ?

 追跡を逃れるためとはいえ、本気で痕跡を消し過ぎではないだろうか?

 まったくわからない。

 くそっ。せめて陽が出れば……まだまだ夜は長そうだ。

 どうする? 真っ暗だというのもそうだが、森の木々に邪魔されて何も見えない。


「……アルムよ。もしかしてだが、見失っているのか?」


 アブさんの問いかけに、ビクリと肩が跳ねる。

 しかし、これは別に隠すようなことではない。


「正直に言えば、その通りだ。この暗闇の中でまったく見えない。寧ろ、空を飛んでいるからかもしれないというか、地上が黒くしか見えない」


「人の目だと大変そうだな」


「そう言うってことは、アブさんには見えているのか?」


「うむ。ハッキリと見えているぞ。といっても、目で見ている訳ではない。元々目はないしな。魔力で感――骨伝導ですべてを見通せる」


 なるほど。


「……無理に骨で……いや、なんでもない。わかるのなら案内を頼む」


「うむ。任された!」


 アブさんが嬉しそうにしている……それで充分だ。

 そうして、アブさんに案内してもらい、セカンたちの進行方向上で待機して合流する。


「いくら計画していた通りとはいえ、上手く痕跡を消していたつもりだったが、よくわかったな。陽が出て視界が確保されてからになると思っていた」


 セカンが感心するように言ってくる。

 アブさんの存在を信じてくれていないので、どう答えたモノか……。


「あ、ああ、まあな」


 とりあえず、曖昧に答えておく。


「それで、無事に脱出できた訳だし、ここから先はセカンに任せていたが、かなり遠い町まで行く予定だったが本当にそこまで行くのか?」


「ああ。帝都近辺だとやはり影響力があるからな。元周辺国の領土にある町まで下がらないと安全とは言えない」


「それはそうか。まあ、案内は任せるよ。そういうのはそっちの方が詳しいだろうし」


「任せてくれ」


 セカンを先頭にして、夜の暗闇の中を進んでいく。

 正直なところ、夜の森の中を進んでいくのは危険なので遠慮したいところだが、今は逃走中のため足をとめる訳にはいかない。

 一応、念のためにと、アブさんには少しばかり先行してもらっている。

 危険があれば知らせてもらえるように。

 まあ、幸いと言ってもいいのか、脱出した五十人は元騎士や冒険者パーティといった戦闘の心得のある者たちなので、大丈夫だと思うが。

 と、思っていたのだが……ん? あれ? アブさん。どうした? こっちに来て。


「……アルムよ。この先に、盗賊と思われる者たちの拠点があるようだが?」


 なるほど。

 こちらは戦闘集団だから……休憩所ってことかな?

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