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賢者巡礼  作者: ナハァト
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一度誤解されると解くのが大変

 脱獄のための準備に入る。

 まずは顔を突き合わせて相談した方がいいというか、俺以外の者たちは体力的に回復していないために声を出すのも大変そうなので、俺が全員の牢の鉄格子を捻じ曲げて外に出すし、一か所に集めておく。

 セカンの牢屋前でいいか。

 なんか、セカンはまとめ役みたいなモノだし。


「……あれ? 私は出してくれないのか?」


「え? 話し合うだけだし、ここなら出す必要ないだろ? 鉄格子越しで充分だ。声は届くだろ」


「いや、なんか私だけ閉じ込められているのも……いや、見方によってはこっちが外で、そっちが牢屋の中に見えなくもない気が……」


 セカンがぶつぶつ言っている間に、全員を揃える。

 そうして脱獄のための話し合いを始めるのだが、やはり足りないのは外の情報。

 それがなくては話にならない。

 いざとなれば強行という手段も取れるが、その場合は失敗の可能性が高くなる。

 だが、そこは問題ない。

 何しろ、こちらにはアブさんが居るのだ。

 外の状況はアブさんに探ってきてもらうことにした。

 アブさんについては、俺の使い魔……従魔……召喚獣……友達……親友……仲間……相棒………………ピンとくるのは相棒だったので、この場に居る者には相棒とだけ伝えておく。

 見た目が刺激的であるし、アブさん自身がいきなり多くの人に姿を見せるのはちょっと……と見せる気がなさそうだったので、それで押し通すしかなかった……んだが――。


「……そうか。まあ、なんだ。心の支えは必要だ」


「こうして助けられたんだ。俺たちはダチだ。だから、外に出れば飲みに付き合うし、一緒に遊ぼうぜ」


「俺も経験がある。だから、その気持ちはわかる。故に、私たちは仲間だ」


 数人から温かい目と態度で接せられた。

 ……あれ? これ、もしかしてだが……俺の妄想だと思われている?


「いや、現実に居るから! なっ! アブさん!」


 アブさんからの返事はない。

 多分、聞こえていないんだろう。

 外に声が漏れてバレる訳にもいかないため、大声を張り上げることができないのだ。

 それに、魔力を吸い取る場所ということもあって、それを嫌ったアブさんはこの中に入ってくることもない。

 つまり、今この場にアブさんが現れることはない、ということ。


『………………』


「………………その目をやめろ! 本当に居るから! 妄想でも空想でもないから! 居るから! 本当に居るから!」


『うんうん。わかっているよ』


「いや、わかってねえだろ! お前ら!」


 このままここに置いていってやろうか、こいつら。

 まあ、連れていくと約束したし、実際に置いていくような真似はしないが。

 とりあえず、アブさんが外の情報を持ってきてくれればわかってくれるだろう。

 なので、アブさんに外の情報を集めてもらいつつ、こちらはこちらで脱獄計画を一晩中練っていった。


     ―――


 話し合いが終わる。

 アブさんのことは……信じてくれた、と思う。

 正確な情報をもたらしてくれた訳だし。

 ……まあ、それでも温かい目と態度は消えなかったので、あとで脱獄とは別の念入りな話し合いは必要かもしれないが。

 ともかく、あとは実行に移すところまで決まったが、その頃には陽が昇ろうとしていた。

 さすがにここからの実行は無理。

 目立つことは間違いないし、注目が集まれば「暗黒騎士団(ダークネス・ナイツ)」が出張ってくるのは間違いない。

 いや、俺としてはやられた借りを返すという意味で、今度は倒してやる気満々なのだが、俺以外……いや、俺とセカン以外はさすがに「暗黒騎士団(ダークネス・ナイツ)」はマズい、と弱腰だった。

 まあ、その気持ちはわからないでもない。

 今は俺以外の誰も装備類もない訳だし。

 なので、それしかないというように、人目を忍んで夜に決行することになった。

 つまり、今日一日……いや、今から半日、ここで耐えなければいけない。

 異変があれば相手に警戒を抱かせてしまうし、俺は大人しく、他の皆はこれまで通りで過ごす必要がある。

 早速まずはと連れてきた時と同様にみんなを牢屋へ運ぶ。

 誰がどこかは……あっ、そっちね。

 各自が知っているので問題ない。

 ただ、それで終わりではなく、問題は別にあった。


「………………」


「………………鉄格子、曲がっているな」


 牢屋の中に戻したあと、見たままを言われる。

 ただ、俺の答えは決まっていた。


「まあ、出すのに必要だったし」


「それはそうだが……どうする? さすがにこれはマズくないか?」


「まあ、どちらかと言えば……ギリギリでマズい、か?」


「いや、ギリギリでなくてもマズいだろうがよ! バレるよ! 脱獄する前にバレるから、これ! はい、終わり! 脱獄終了!」


「いや、まだ大丈夫だって。ほら、夜が暑くて、その暑さで曲がった、とか?」


「そんな訳あるか!」


 だよな。

 さすがにそれだと通じないので、とりあえず曲げた時と同様に身体強化魔法で、今度は真っ直ぐに伸ばしてみる。


「………………まあ、アレだ。ここ、薄暗いし……これで大丈夫だろ?」


 今日だけ騙せれば充分である。

 他のところも同じようにして、最後は自分のところを真っ直ぐにして終わった。

 あとは時間が経つのを……あっ、そういえば枷壊したんだった。

 ……どうしよう。

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