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賢者巡礼  作者: ナハァト
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言葉だけで凶悪な感じもある

「それで、ここはどこだ? なんなんだ?」


 周囲を窺いながら、そう尋ねた。

 猿ぐつわと手足の枷は外したが、薄暗さは変わらない。

 光源が後方にあるようなので視線を向ければ、石壁の上部に鉄格子の嵌まった小さな窓があって、そこから先に見えるのは夜空。

 月明かりで照らされているだけ。

 そこに向かって飛び上がり、鉄格子を掴んで外を確認。

 まず、窓は本当に小さく、たとえ鉄格子がなくともここから人が出るのは無理。

 それと、地面が直ぐそこにあった。

 ……地下か?

 飛び下りて、考える。

 薄暗い中で行動するのもなんだから、まずは光属性で明かりを……用意してもいいが大丈夫だろうか?

 多少見えてはいるとはいえ、薄暗い中にいきなり光なんて発すると、間違いなく視界が焼ける気がする。

 なら、視界に優しい光で………………できる気がしない。

 間違いなく、視界を焼き尽くす光になる。


「ここは……魔区の地下……先ほども言ったが……ここは夜以外……常に魔力が吸われていく……その吸った魔力を利用して……魔道具師たちは……魔道具を製作している……特に、戦闘用を……」


 ………………。

 ………………。

 なんか言葉にすると、視界を焼き尽くす光――凶悪な感じがするな。

 気軽に使っていいモノではないような気分に……。


「……あれ? 今、なんか言った?」


「ぐっ」


 どさっ、と何かが倒れた音がした。


「えっと……なんか、すまん」


 とりあえず、声が聞こえてきた方に向けて謝っておいた。

 できればもう一度聞きたいのだが、相手から待ったが入る。

 少し休みが欲しいそうなので、待つことにした。

 さすがにこの状況で何も知らずに動くのは危険……かどうかは問題ではないのだが、情報が得られるなら得ておきたい。

 それに情報によっては、そこから取れる選択肢が増えるかもしれない。

 ……まあ、ここをどうにかするのは間違いなさそうだが。


     ―――


 少しして、話せるようになったので話を聞く。

 先ほどまでと変わらずどことなく苦しそうで途切れ途切れではあるが、大体は理解できた。

 まず、先ほども言っていたそうだが、ここは帝都の魔区にある地下部屋で、ここに閉じ込めた者たちから魔力を吸い続ける部屋だそうだ。

 そう。者たち。複数。

 今は俺を含めて十人が閉じ込められているそうだ。

 それも、リミタリー帝国出身ではなく、それ以外の出身の帝都に来た冒険者たち――特に魔力量が豊富な魔法使いばかりを狙って、無理矢理攫って来て閉じ込めている。

 そんな魔力量が豊富な魔法使いばかりを正確に狙い続けるものだろうか、と思うが門の上部に魔力測定の魔道具が設置されていて、出入りするだけで確認できるようにしているそうだ。

 ……ああ、あの爆発したヤツか。

 つまり、今は壊れている? ……いや、代わりのとかありそうだし、そっちを使っているか。

 それで、なんでそんな魔力量の豊富な魔法使いばかりを集めて魔力を吸っているかというと、それで魔道具開発と生産をしているからだ。

 魔道具製作には豊富な魔力が必須なんだと。

 やっていることは完全に犯罪だが、これはリミタリー帝国に訴え出てもどうしようもできない。

 何しろ、皇帝含めてリミタリー帝国の上層部が主動で行っていることだからだ。

 訴え出ても、権力で――力でねじ伏せられる。

 この国は……闇のアンクさんの記憶の中にある頃から何も変わっていない。

 一度潰れた方がいい気がする。

 元周辺国の方に協力するのも一つの手かもしれない。

 そのためにはここから出ないといけない訳だが、それも難しい……いや、無理だそうだ。

 監視の目が厳しいというのもあるが、まずここに人が攫われてきていることを関係者以外の人が知らないので外部からの救助はないと言ってもいい。

 なら、実際に攫われて捕らわれている自分たちで――と思うのだが、それも無理。

 日中は常に魔力を吸われることで魔力枯渇状態が続いて声すら上げるのも大変なつらい状態となっていて、夜は眠って朝方には魔力が回復するが、そもそもここに捕らわれているのは元々非力な魔法使いな上に、嵌められている枷は魔法行使を阻害する魔道具であるため、魔法も使えない。

 なので、物理的に出ようとしてもそれだけの身体能力はなく、実質的に不可能に近いのだ。

 もちろん、装備も取られている。

 ……え? 嘘? と確認するが、確かに今の俺は普段の衣服を着ているだけ。

 竜杖も、ドラゴンローブも、マジックバッグもない。

 ………………。

 ………………。

 もし、少しでも手を出していたら……マジデユルサナイ。

 それ相応の報いを与えると心に誓う。

 ただ、これまでのことを考えると、竜杖には意思がありそうだし、怒られそうで怖い。

 謝って許してくれるだろうか……。

 竜杖との絆を信じよう。

 ――と、そこまで聞いて、一つの疑問。

 俺、魔法使えているけど? 無理矢理だけど。

 そこで一つの推測だが、俺の魔力量が想定外過ぎるのではないか、と思う。

 何しろ、門にあった測定の魔道具を爆発させているし。

 一人でも莫大な魔力量を、今は五人分受け継いでいる訳だし。

 阻害できるような魔力量ではない、ということかもしれない。

 こうなると……日中に魔力を吸われるというのも怪しいな。

 奪い尽くせない気がする。

 まあ、それはリミタリー帝国に大量の魔力を与えるようなモノなので、試そうとは思わない。

 出られるなら、さっさと出た方がいい。


「……というか、随分と詳しくないか?」


「ああ……それは……私が元……『暗黒騎士団(ダークネス・ナイツ)』の一人だった、からだ」


 何? ……敵か? いや、こうして同じように捕らえられているのなら味方か?

 元、だと言っているし。

 ……ちょっと声だけじゃなくて見てみたくなった。

 そう判断して、枷を壊した時と同じく魔力量に任せて身体強化魔法を発動。

 無理矢理鉄格子を曲げて人が通れる穴を作って、そこから牢屋の外に出る。

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