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賢者巡礼  作者: ナハァト
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もしかしたら、これって……と思うこともある

 ………………。

 ………………。

 痛っ!

 打ち付けるような痛みを感じる。

 ……ん? 何が、どう……。

 意識がハッキリとしない……が、僅かではあるが時間と共に目覚めていくのを感じた。

 目を開ける。

 最初に視界に飛び込んできたのは、薄暗さ。

 妙に暗く、少し先が見える程度。

 その見える範囲の中で目に付くのは、鉄格子。

 ……意味がわからず、一度目を閉じて再度確認。

 前方に鉄格子。左右は石壁で固められていて、後方は――と確認しようとして気付く。

 満足に体を動かせない――というか、両腕をうしろに回されていて、さらに手枷と足枷が嵌められており、満足に動かすことができない。

 それに、猿ぐつわを噛まされていて言葉を発するのも難しくなっている。

 ………………。

 ………………。

 そのままこの状況を捉えるのであれば、ここは牢屋で、俺はその中で捕らえられている、ということである。

 ……あれ? 前も牢屋に入っていた記憶があるな。

 ただ、それは望んで――自ら進んでなので、その前後の記憶がある。

 しかし、今は違う。

 どうして牢屋の中に? ……はっ! もしかして、この失われた記憶に何か重要な意味があるのではないだろうか?

 たとえば、とある犯罪組織が壊滅しかねないことを知ってしまい、思い出そうとしても中々思い出せず、さらにはとある犯罪組織が命を狙ってもきているのだが、その中で美女と出会い、なんだかんだと行動を共にして信頼関係を築くのだが、実はその美女はとある犯罪組織と繋がっていて……いや、ないない。それはない。

 というか、そう考えている内に思い出した。

 不覚、と言うしかないが、「暗黒騎士団(ブラック・ナイツ)」の二人にやられたんだったな。

 周囲の状況とかそういうのを気にしなければどうとでもやれたのだが、さすがに町中であれ以上のことはできない。

 だが、もし次があれば……絶対にやり返してやる。

 どうやり返すかを考えるのはあとだ。

 まずは現状の打破を――。


「おっ、動いた。目覚めたようだぜ」


「お前が雑に投げ入れるからだろ」


「別にいいだろ。ここに入るヤツに気遣いなんて。どうせ、拘束具をどうにかすることはできねえんだからよ。できることは精々喚くだけだが、猿ぐつわを噛ましているし、そういう心配もいらない。……まっ、そんなことをする元気も、明日にはなくなっているだろし……ほら、気遣う必要はないだろ?」


「別に気遣いが必要だなんて言ってねえだろ。雑に扱って死なせちゃマズいってだけだ。最低限死なないように扱えって言っているんだよ。まあ、お前が言ったように、元気なのは今だけだろうけどな」


 そんな会話が聞こえたかと思えば、鉄格子の向こう側に二人居たようだが、既に足音が遠ざかっていく。

 聞こえてきた内容から察するに、俺を牢屋の中まで運び……いや、雑にということは、運んで放り投げた、とかかもしれない。

 だから痛みを受けて、目が覚めた、と。

 ……そういえば、どことなく頭が痛い気がする。

 これはもしや放り上げられた時に頭を打った、というのが可能性として一番高い。

 このじんじんと続く痛み……たんこぶできているぞ、これ!

 治療を要求する! 雑に扱うな!

 ジタバタしたいが、身動きは取れず。

 そういえば、聞こえてきた会話で、元気なのは今だけと言っていたのはなんだ?

 つまり、明日には元気ではなくなるとか、そうなる理由に見当も付かないし……怖いわ。

 とりあえず、この猿ぐつわ、手枷、足枷の三点セットをどうにかするか。

 自由を得るため、身体強化魔法で無理矢理――。


「また、連れて来られたのか……大丈夫か?」


 どこかから声が聞こえてきた。

 先ほど会話していた二人の声ではない。

 状況から考えるなら……別の牢屋だろうか?


「ん、んんん?」


 猿ぐつわでまともに声は出ないが、「ん? 誰だ?」と問いかけてみる。

 まあ、唸っているようにしか聞こえないが。

 これで通じてくれればいいが。


「猿ぐつわされているのだろう……初日はそうだ……明日には……はず……さ……」


「………………」


「………………」


「んんっ!」


 途中! と唸る。


「あ、ああ……すまない……ここでは……言葉を発し続けるのも……大変なのだ……」


「んんんんんんん?」


 どういうことだ? と問いたいが……というか、唸るのも面倒だ。

 とりあえず、猿ぐつわを外そう。

 そのためには手枷が邪魔だが、身体強化魔法で無理矢理外すか。


「はあ……ふう……良し……疑問に思うのは……わかる……ここは……常に魔力を吸われ続けているのだ……だから、日が経てば……常に魔力枯渇状態となって……まともに動くことができなくなる……」


「んん……んんん~……」


 なんかいつもと使用感が違うような……変な横槍が入っているような……だったら、さらに注ぐ魔力量を増やして無理矢理――。


「おそらく、猿ぐつわだけではなく……手枷と足枷もされて……身動きが取れない状態だろう……今、それを取り払いたいだろうが……無理をして余計な体力を失わない方がいい……枷には魔法使用に対して……阻害する魔法陣が組み込まれていて……まともに発動」


 ――ふんっ!

 バギッ! という破砕音と共に手枷と足枷を壊し、自由を得る。

 猿ぐつわも外す。


「……今の音はなんだ? ……え? まさか……」


「ったく。こんなのを嵌めやがって。それで、なんだっけ? なんか話している途中だったな」


 どこに居るかは見えないが、声が聞こえてくる方へ問いかける。


「いや……その……枷は魔道具であって……魔法行使は阻害されてまともに発動しないと……」


「ああ……」


 そういえば、なんか妙に邪魔される感覚があったな。

 邪魔できないくらいの――激流のように魔力を流してどうにかしたが。

 感覚としては、魔法を使用しようとして過分に魔力を流してしまった時と似たようなモノなので……まあ、いつも通りと言えばいつも通りである。


「力業でどうにかした」


「そ、そうか……」


 どうしてそこで呆れたような声になるのだろうか。

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