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賢者巡礼  作者: ナハァト
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避けたと思ってもぶつかることもある

 一軒家を出る。

 まさかここで元周辺国側と接触するとは思わなかったが、よくよく考えてみれば、ここはひとつ前に寄ったルーベリー国のワフォアからリミタリー帝国に入った時に最初に辿り着く町。

 ワフォアに元周辺国側に協力しているヴァネッサさんが居たのだから、接触するために元周辺国側がこの町に居たのだろう。

 もしくは、接触したあとか。

 ……あとだろうな。

 だから、ヴァネッサさんも内戦間近だとハッキリわかっていたのだろうし、俺に協力して欲しいとお願いしてきたのだろう。

 まっ、それは断った。

 いや、実際のところは協力してもいいのだが、今ではない。

 まずは俺がリミタリー帝国に来た目的を果たさないと……協力するとするなら、それからだ。

 なので、今考えるべきは、これからのことというか、正直なところ、このままこの町に居ると、また接触されそうな気がしないでもない。

 いや、ないとは思う。

 しかし、絶対ではない。

 ……だったら、ということで、もうこの町を出ることにする。

 でもその前に確認。

 路地裏に引っ込み、アブさんを呼ぶ。


「どうした? アルムよ。何かあったのか?」


「いや、何もない。それより、もうこの町を出ようと思うんだけど、構わないか?」


 そう尋ねると、アブさんは考えるように顎に手を当てる。


「……それは構わないが、いいのか? アルムのことだから、先ほどの者たちに協力するのだと思っていた。あの者たちの方なのだろう? 協力して欲しいとお願いされていたのは」


「ああ、そうだと思う。でも、今は協力しない」


「今は?」


「ああ、今は。まずはこのリミタリー帝国の状況を知るところからだ。……まあ、何も変わっていなさそうだから、結果的に協力することにはなるかもしれない。でも、それはこの目で確認してからだ」


「まあ、某はアルムの付き添いのようなモノであるし、その辺りの判断はアルムに任せているが……なるほど。アンク殿の方を優先している訳か」


「そういうことだ」


 俺にとっての優先順位は、元周辺国側よりも闇のアンクさんの方が上である。

 今はそのために行動したいのだ。

 アブさんも納得してくれたので、まずはこの町を出ることにする。

 といっても、時間的に遅いというのはわかっているので、多分だけど次の町に着く前に野宿になると思う。

 でも、また元周辺国側だろうがリミタリー帝国側だろうが、どちらにしても接触されると面倒なので、さっさと出ることにした。


     ―――


「………………」


 んんー。そう思って出たのだが……んんー。

 なんと言えばいいのか……リミタリー帝国の帝都に向かうため、入って来た方とは真逆の位置にある門から町の外に出ると、何やらその街道の先で数十人くらいの兵士たちが陣を組んでいた。

 いや、正確に言えば、その最中といったところ。

 門の前でとまってその光景を見続けるのは怪しさ全開なので、素知らぬ顔で歩き出し、その横を通り過ぎていく。

 アブさんは上空から様子見だ。

 ……特に通行止めをしている訳ではなさそうである。

 違うな。これは、町から出てくる何かを待っているようで、それ以外は放置という感じだ。

 それがなんのかは考えるまでもないだろう。

 内戦間近であるし、陣を組もうとしているのがリミタリー帝国側の兵士のようなので、元周辺国側――俺が先ほどまで接触していたというか接触させられていた者たちが出てくるのを待ち構えようとしているのだ。

 ……もしくは、しびれを切らせばそのまま町に攻め込むつもりかもしれない。

 リミタリー帝国側が何も変わっていなければ、町の一つや二つ、失おうがまったく気にしないだろうし。

 ……というか、変わっていないんだろうな、多分。

 準備が出来次第とか、人数が揃ったらとかで、攻め入りそうだ。

 元周辺国側をそのまま逃がすつもりはないだろうし。

 そうなると、この町が戦場になるのか。

 さすがに見て見ぬ振りはどうなんだろうか。

 初めて行った町だし、特に思い入れもない。

 でも……屋台のパンは美味かった。

 あれが失われるのは惜しい。

 ………………。

 ………………。

 仕方ない。元周辺国側に協力することになるが、魔法で――なんてことを考えながら。素通りしていると――陣のうしろの方で、ツンツン青い髪の男性が居た。


「………………」


「………………」


 俺が視線を向けると、ツンツン青い髪の男性もこちらに視線を向けてきた。

 視線が合う――が、そのまま俺は素通りして――。


「いやいやいやいや! 待て待て待て待て!」


 ツンツン青い髪の男性に引き留めるように立ちはだかる。

 ちっ。面倒なのに見つかってしまった。


「……何か?」


「いやいや、何しれっと行こうとしているんだよ! いや、俺もこの再会はどうかと思うし、もっと劇的な再会の方が良かったのは間違いないが、それでも再会は再会だ! さあ、続きをやろうぜ!」


 ツンツン青い髪の男性が武器を――黒い槍を構える。

 まさか、リミタリー帝国側と接触するとは思わなかった。

 どちらにしても、面倒なのは変わらない。

 どうしたものか……。


「え? 何々? え? いきなりなんですか? 初対面ですけど? 再会とか言い出して、こわっ!」


「え? 初対面? あれ? いや、ついさっき、やり合ったよな?」


「は? やり合ったって何急に? やり合っていませんけど? 急にそんな関係があったと言ってくるなんて、こわっ! 衛兵! 衛兵! ここになんか怖い人が居ます!」


「違う! 違うから! 来なくていい! 来なくていいから! 大丈夫! 大丈夫だから! なんでもない! なんでもないから! 何もしていない! 何もしていないから!」


 ツンツン青い髪の男性が周囲をしきりに気にし出して慌て出す。

 何かやましいことでもあるのだろうか。

 というか、町中ならまだしも、外に衛兵は居ないだろ。

 それに、今はリミタリー帝国側の兵士しか居ない。

 なんというか、ツンツン青い髪の男性はリミタリー帝国側だが、意外とノリがいい気がする。

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