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賢者巡礼  作者: ナハァト
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出したからといって受理されるかどうかはわからない

 王都・ガレットから出る――前に門の近くで、皆で挨拶し合う。

 特にブッくんとホーちゃんは、「王雷」の石化解除に立ち会っていたから直ぐカーくんの鍛錬が始まった、ということで、面識という部分では薄い。

 まあ、それは「王雷」もそうだ。

 なので、ここで改めて自己紹介し合う。

「王雷」としてはバジリスク・特殊個体戦に協力してくれたブッくんとホーちゃん、石化解除の力を貸してくれたリノファに感謝の言葉を伝えていた。

 会いたいと思っても、これまで中々タイミングが合わなかったらしい。

 そうして、自己紹介をしてから出発する。

 アブさんも紹介は……あとだ。

 さすがに町中で姿を現わす訳にはいかない。

 そうして出発してから少しだけ歩いてうしろを振り返ると、ラフトとビネスが居た。


「兄として妹が心配でね。あっ、冒険者ギルド・総本部の方は大丈夫だ。休暇届を出しておいた」


「妹として兄が心配なのです。商業ギルド・総本部の方はお構いなく。休暇届を出していますので」


 ……休暇届(それ)、受理されてないよな?

 というか、ここまでくると、本当に仲がいいのでは? と思わなくもない。

 揃って叱られているし。

 逆にラフトとビネスが王都・ガレットに入っていくのを見送ってから、先へと進む……そのまま徒歩で。

 いや、だって、これは仕方ない……というより、すっかり忘れていたのだ。

 どうやって「王雷」をラビンさんのダンジョンまで――正確にはラビンさんの隠れ家まで連れていくのかを。

 さすがに母さんやリノファのように、竜杖で運ぶのは……無理。

 魔力が足りない。

 どうしたものかと思っていたが、解決策は直ぐそこにあった。

 カーくん、ブッくん、ホーちゃんの竜組に頼ればいいのだ。


「いや、初めからそのつもりであったぞ。ラビンからもそう頼まれていたが?」


 既に話はついていたようだ。

 さすがはラビンさん。

 すごいぞカーくん。


「と言うかな、アルムよ。お主の母親とリノファも、我にお願いすれば良かったのでは? と思っていたのだが……」


「………………まあ、あれだよ。ほら。ね。親孝行……そう。親孝行みたいなモノだよ。リノファは、そもそも俺とテレイルが義兄弟の誓いを交わしているから義妹であるし、家族だから俺が自分の力で……ということでどうだ?」


「……そうだな。うんうん。そうだな」


 優しい眼差しは勘弁して欲しい。

 とまあ、数日前にカーくんとそんなやり取りをしていたので、移動に関しては問題なかった。

 ただ、そこから挨拶回りとかあって未だに「王雷」には移動について話せていない。

 こっちでどうにかする、とは伝えているのだが。


「それでリタが居るところまでどうやっていくんだ?」


 ニーグが尋ねてくるので、もう少しだけ歩く、と伝えて歩いていく。

 近過ぎると、カーくんたちが竜の姿に戻った時に、大騒ぎになりかねない。

 そうして少しだけ離れて王都・ガレットの壁が見えなくなった辺りで、まずアブさんを紹介……した瞬間に、初対面であるブッくんとホーちゃん、「王雷」が戦闘態勢に移る。


「……いやいや! 大丈夫だから! 敵じゃない! 敵じゃない! ほら、見て! 怯えているから! しまえ、しまえ! 武器をしまえ! 身構えるな! 怖がっているから!」


 ぷるぷると震えるアブさんの前に立って庇う。

 これでまた人との関わりを断つようになったらどうしてくれる。

 漸くここまで慣れたんだぞ。

 ただ、庇ったのは俺だけではない。


「……私の目の前で……骨を、折ると言うのですか?」


 この場の空気を黒く染め、重苦しいモノへと変貌させるほどの圧力を発するリノファ。

 駄目だ! リノファ! そっちにいってはいけない!

 戦闘態勢を取っていた全員が降参を示す。

 怒れるリノファは、俺とアブさんがどうにか落ち着かせた。

 そして、そのあと、カーくん、ブッくん、ホーちゃんは竜の姿へと戻る。

 クララとビライブは大きく口を開けて呆気に取られた。

 しかし、ニーグは――。


「うおおおおおっ! すっげー! 竜だ! 竜! 初めて見た! 想像よりもなんて強そうなんだ!」


 目を輝かせて大はしゃぎである。

 特に、想像よりも強そう、という部分が良かったのだろう。

 カーくんは調子に乗って、筋肉を見せる……いや、魅せるポーズを取っていく。


「ふんっ! ふんっ! ふんんっ!」


「おいおい、なんて厚く鍛えられた筋肉だよ! なんて盛り上がっている筋肉だよ! なんて視線を引き寄せる筋肉だよ! ナイスマッスル!」


「おお! 話がわかるではないか!」


 カーくんとジークが通じ合う。

 あれ? 水のリタさんの記憶の中だと、ジークにそんな素振りはなかったと思うのだが……まあ、よく考えてみると、ジークは格闘家だ。

 種族問わず、鍛えられた体というのには敏感なのかもしれない。

 そうしてカーくんとジークが通じ合っている間に、クララはホーちゃんと、ビライブはブッくんと仲良く話し始めていた。

 ここは互いに恋人が側に居るということで、それで仲良くなったようだ。

 まあ、「王雷」は強い冒険者であるし、度胸があるということだろう。

 ただ、その前に一ついいだろうか?

 竜組に喜ぶのはいい。

 しかし、先ほどのアブさんとの態度の違いで、アブさんが落ち込んだんだが、どうしてくれる?

 そんなだと……ほら、ウチのリノファが黙って――。


「……落ち込んでいる骨もいい」


 ………………。

 ………………。

 んん~……。

 パンパン! と手を叩いて出発を促す。

 アブさんの心のケアは「青い空と海ブルースカイオーシャン」に任せよう。

 母さんとリノファは俺が竜杖で、アブさんは自ら飛んでというのは変わらず、ニーグはカーくん、クララはホーちゃん、ビライブはブッくんと、それぞれ背に乗せて、ラビンさんの隠れ家に向けて飛び立った。

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