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賢者巡礼  作者: ナハァト
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祝福の場……だよね?

「王雷」を水のリタさんに会わせるために、ラビンさんのダンジョンに戻ることにした。

 とりあえず、それで水のリタさんの憂いもなくなる訳だし、一応だがこの国でできることは終わったかもしれない。

 ……「天塔(ヘブンタワー)」の最上階とか気にはなるが。

 しかし、64階より上に居るのがバジリスク・特殊個体とかそこら辺のレベルの魔物となると……さすがに今の段階では無理な気がする。

 なので、「王雷」をラビンさんのダンジョンに送れば、そのまま鍛えて、新たな魔力と記憶を受け継ごうと思う。

 ただ、そうするためには、もう少し時間がかかる。

 行きます、で行けないのだ。

 色々と準備があるというか、やることがある。

 まず、俺。

 副団長の石化が解けたということで、幼馴染と結婚すると言っていた騎士の結婚式に出た。

 共に「天塔(ヘブンタワー)」を進んだ騎士たちも参加していて、皆で盛大に祝う。

 偶に、一部から「ちくしょー!」とか「爆ぜろ!」とか「羨ましくなんてないからな!」とか、怨嗟のような心の声が聞こえてきたような気がしたが、きっと気のせいだ。

 何しろ、結婚式。祝福の場だ。

 そんなことある訳ない。

 別の一部からも「……若い頃は俺もあんな感じだったな」とか「あいつもいずれ家に居場所が……」とか「今の内に外での時間の潰し方を教えておくか……」とか、何やら妙に達観している騎士たちも居たが……こっちも気のせいだろう。

「お幸せに!」としっかりと祝福しておいた。

 次いで、アブさん。

 気になる建物は見終わったそうだが、今度は内装が気になるようで、壁を素通りできる力を使って、色んなところに侵入しているようだ。

 ……さすがにそれはどうだろう。

 犯罪の類に分類しそうだが、まずアブさんの姿が他の人には見えないしなぁ……。


「それに、某もきちんと弁えているぞ。事前に様子を窺い、男女の営みが行われているようなところには入っていない」


 いや、気持ちはわかるが、それは窺っている時点で駄目なような――。


「ああ、あとそういうのとは違うが、強盗が入って住民が襲われているところがあって、さすがに即死魔法は目立つと思い、その時はうしろからこそっと近付き、強盗にだけ姿を現わして脅かすと、それで強盗は気絶して住民に通報されて捕まっていたな」


 なら、いいか。

 人のため、取り分け命に関わっていたのなら、容認するしかない。

 ただ、アブさん的にはここだけではなく他のところも見たいそうなので、出発するならいつでもいいそうだ。

 次に、母さんとリノファ。

 買い物続行中。

 いざとなればラビンさんが用意してくれるだろうし、そんなに買う物があるのか? と疑問だが――。


「そのようなことではいけませんよ、アルム。男性には頼めない物が色々とあるのです」


「逆もまた然り、です。男性にも、そういうのがあると思いますが?」


 ……確かに、というか、他人には頼めない物ってある。

 母さんとリノファの言葉に納得。

 まあ、今直ぐ出発という訳ではないので、それまでには終わると思う。

 しかし、そういうことなら商業ギルド・総本部のマスターであるビネスを紹介するから割引してもらう? と提案したら、既に知己の関係で割引もしてもらっていた。

 多分、石化解除の時だと思われる。

 念のために確認したが、きちんと良識内での割引だった。

 たくましいというか、なんというか。

 次は、カーくん、ブッくん、ホーちゃんの竜組。

 未だカーくんによるブッくんへの鍛錬は続いている。

 当初は空に向けて照射される光線に慌てふためいていた王都・ガレットであるが、静観することになって今は慣れたモノ。

 住民とかここ数日体験した者は、「ん? まだ続いていたのか?」くらいの感覚である。

 カーくんはきちんと一日置きに戻ってきていた。

 いつかはわからないが出発するとは伝えているので、わかった時に声をかければいいそうだ。

 鍛錬の様子は気になるが、それを口にすると俺もどうだと巻き込まれそうなので何も言わない。

 ……頑張れ。ブッくん。

 空に向けて照射される光線に向けて小さく握り拳を作り、心の中で応援しておいた。

 最後に、「王雷」。

 ニーグはこれといって問題なく、いつでもいいそうだ。

 というのも、石化していた時間が長かったため、長命種でもない限り知り合いが存命していない。

 それは悲しいことだと思うが、ニーグはもう割り切っているようだ。

 強い人だと思う。

 なので、ニーグは問題ない……が、「王雷」の残る二人――クララとビライブが問題だった。

 いや、当人は問題なく、移動するのはいつでも構わないという姿勢だ。

 問題となっているのは、ラフトとビネスの方。

 せっかく石化が解除して再び会えたのだから、と思いっきり引き留めにきている。

 いや、気持ちはなんとなくわからないでもない。

 一緒に居たい、というのも。

 でも、クララとビライブは怒っていた。

 どうやら、冒険者ギルド・総本部と商業ギルド・総本部の今の関係性――それと、そのきっかけも知ったらしい。

 なんたることだ!と。

 組織の長がそれでどうする!と。

 どっぷりと仲良く――とは言わないが、もう少し仲良くなるまで戻る気はない、とハッキリ告げていた。

 その瞬間、ラフトとビネスは肩を組んで仲良しアピールをしたそうだが、嘘くさかったそうだ。

 ……まあ、ね。

 あと、そうして聞いている時に知ったのだが、クララとビライブ――恋人関係であった。

 ほーほー、そうなのか。

 これは水のリタさんの記憶の中にはなかったことだが………………いや、記憶を探ってみると、相談を受けているようなところがあるな。

 聞けば、恋人関係になったのは石化する少し前で、その報告がまだだっただけのようだ。

 今は水のリタさんの代わりに、俺が「おめでとう」と言っておく。

 そのことを知ったラフトとビネスがさらに声を荒げるが、クララとビライブはつーんとして聞く耳を持っていなかった。

 そんな感じで多少時間はかかったが、数日後には目途が立った。

 なので、ジルフリートさんや副団長、仲良くなった騎士たちにも、また来る! と一時の別れの挨拶をして、いつでも来てくれて構わない、という返答をもらってから、ラビンさんのダンジョンに戻るために出発する。

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