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賢者巡礼  作者: ナハァト
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落ち着くまで待つのも大事です

「王雷」の石化が解けた。

 見た限りだと、特に異常のようなモノはない。

 三人共が困惑しているのは、現状の理解ができないからだろう。

 それも仕方ない。

「王雷」からすれば、つい先ほどまでバジリスク・特殊個体と戦っていて、逃げ出そうとしていたところで、いきなりここである。

 当然だ。

 これで、この場に居るのが見ず知らずの者たちばかりであれば、場はより混乱していたかもしれない。

 けれど、ここには身内が居るのだ。


「……クララ」


 泣きそうな表情でラフトがそう口にし――。


「……ビライブお兄さま」


 既に涙を流しているビネスがそう口にする。

 呼ばれて反応したクララとビライブが、ラフトとビネスを見て訝しげな表情を浮かべるが……直ぐにハッとした表情へと変わった。


「まさか、ラフト兄ちゃん?」


「ビネス……なのか?」


 その問いかけにラフトとビネスは何度も頷く。

 なんか感動の再会のように感じる。

 きっと、当事者以外では、水のリタさんの記憶がある分、俺がそれを一番強く感じているだろう。

 自然と、本当に良かった……と思い、笑みが浮かぶ。


「はあ? あの二人がラフトとビネスって……そりゃ確かに似て……似過ぎているな。でも、記憶の中にある二人はもっと幼い感じで、まるで成長した姿………………そうか。そういうことか。なんてこった」


 ニーグがそう口にする。

 どうやら答えに辿り着いたようだ。

 クララとビライブも同様。

 だからこそ、「王雷」は気付く。

 一人欠けていることに。

 周囲を見回し――カーくん、ブッくん、ホーちゃんに何かを感じたのかギョッとし

ついでとばかりに俺のことも不思議そうに見たあと、求める人物を探すが見つからず……。


「……そうか。俺らだけかよ」


 悲痛な表情を浮かべる。

 いや、生きてはいるよ。スケルトンになって、だけど。

 さすがにそれを今ここで言うつもりはないが。

 当事者というか、「王雷」にだけ教えるつもりである。

 ただ、今ではない。

 なので、このままここに居ても仕方ない。

 まずは「王雷」も自分の置かれた状況というか、どれだけの月日が経ったのかを知るところからだろう。

 それで落ち着いた頃に話せればいいと思う。

 今のところは、石化から解けたのが確認できただけで充分だ。


     ―――


「王雷」の石化が解けてから数日が経った。

 他にも副団長やSランクの槍使いの人も石化は解けたと聞く。

 会ってはいない。

 Sランクの槍使いはともかく、副団長には会いたいが色々と忙しいだろうと思い、落ち着くのを待つことにした。

 その間、俺は母さんとリノファと共に、王都・ガレットの観光をしている。

 観光自体は楽しい。

 ただ、勧誘が……正直面倒だ。

 俺ではない。

 リノファを勧誘するヤツが多い……のだが、大抵というか、母さんが一睨みすると必ず謝って去っていく。

 もうここまでが一連の流れではないかと思ってしまうほどだ。

 とりあえず、リノファが変な勧誘に引っかからないように気を付けないといけないのだが……スケルトンを用意すれば間違いなく引っかかりそうで怖い。

 まあ、普通はそんな用意できないので、結局は杞憂なのだが。

 アブさんは好きに過ごしている。

 王城見学をしていたのだが、なんでも「青い空と海ブルースカイオーシャン」のために、自分のダンジョンに城を建てるかどうか考えているそうだ。

 うん。やめておけ、と言っておいた。

 さすがにやり過ぎだ、とも。

 いざ城を用意されても、「青い空と海ブルースカイオーシャン」の面々はきっと苦笑だろう。

青い空と海ブルースカイオーシャン」とよく相談してから決めるように、と一応言っておいた。

 カーくんは、早速ブッくんを鍛え始めている。

 それにホーちゃんも付いていっている感じだが、それがどのような光景になっているのかはわからない。

 何しろ、竜の姿で行うそうなので、さすがにこの場、近隣で行えるようなモノではなく、かといって「天塔(ヘブンタワー)」ですると最悪というか間違いなくダンジョンを壊しそうなため、王都・ガレットからかなり離れたところにある開けた場所で行っているそうだ。

 ジルフリートさんに頼んで、王都・ガレットに出入りできるようになったカーくんが、一日置きくらいに戻ってきているので、そう聞いている。

 いつラビンさんのダンジョンに戻るかわからないため、確認のためにそうしているのだ。

 ただ、カーくんが向かっている方向の先で、偶にだが空に向けて光線が照射されているのは……無関係だな、きっと。うん。そうに違いない。

 何しろ、それで今少しばかり冒険者ギルド・総本部と商業ギルド・総本部が騒がしくなっている。

 何事かと調査を送るべきか、それともいたずらに刺激しないように静観するべきか、で悩んでいるようだ。

 王城の方でも少し騒がしいらしい。

 しかし、下手に大丈夫だと伝えるのも、どうしてわかると問われると困るというか、正直に言えない以上は「勘」としか答えようが……いや、待てよ。

 竜杖で飛んで確認してきたことにして、竜同士が争っている、で大丈夫じゃないか?

 それで下手に近付こうとは思わないだろうし、竜というのがカーくん、ブッくん、ホーちゃんに結びつかなければいいのだ。

 ……まあ、普通は結び付かないんだけどな。

 でも、人の想像力を侮ってはいけない。

 どこの誰が、カーくんたちを人化した竜だと言い出すかわからない……いや、言うか?

 いやいや、さっき侮るな、と思ったところだ。

 それに、どうせその内ラビンさんのダンジョンに戻るのだから、その間近付かないようにすればいいだけである。

 とりあえず、静観する方に一票を投じておくか。


     ―――


 そんな感じで過ごしている内に、漸く、というべきか、「王雷」の方から俺に会いたいとお呼びがかかった。

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