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賢者巡礼  作者: ナハァト
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そういえば居るんだった

 三柱の国・ラピスラの王都・ガレットに着いた。

 そこで気付く。

 俺は問題ない。

 アブさんも元々透明なので問題ない。

 母さんとリノファは……問題ない。

 問題はカーくんである。


「……どうやって入る?」


 王都・ガレットに入るための列に並んだ時に気付いた。

 俺は冒険者ギルドカード、あるいは商業ギルドカードがあるので問題なく通れ、アブさんは透明なので素通りで、母さんとリノファもギルドカードに類するモノを持っているそうなので入ることができる。

 しかし、カーくんは何も持っていない。

 ブッくんとホーちゃんの時はダンジョン帰りの流れというか、共にギルド・総本部の長であるラフトとビネスによる顔パスで通ることができたが、今は居ない。

 カーくんが、ムンッ! と拳を固く握る。


「押し通る!」


 はい。駄目です。

 ……どうする?

 先に入って、ラフトとビネスに許可を……いや、そもそも俺は王家所属だから、ジルフリートさんにお願いすればいいのか。

 何しろ、ジルフリートさん。この国の王さまだし――なんてことを考えていると順番がきた。

 とりあえず、カーくんだけここで待ってもらうのもなんだし、やはり俺だけが先に入って、ジルフリートさんから許可を――。


「あれ? アルムくんじゃないか。そういえば、副団長が今は出ていると言っていたな。戻って来たのか?」


 そう声をかけられる。

 親しげな感じが含まれていたので、誰だろうと思えば、あの幼馴染の恋人と結婚予定の騎士だった。

 他にも見知った騎士たちが共に居る。

 さすがに門番と騎士では階級が違うのか、門番は騎士たちに向けて「ご苦労さまです!」と敬礼を行う。


「え? あれ? どうして王都・ガレットの外で?」


「ああ、ほら、『天塔(ヘブンタワー)』の歴代到達階数が更新されたから、それで冒険者だけでなく他にも攻略できるだけの力を持つ人たちの熱が上がって、今は普段以上の数が『天塔(ヘブンタワー)』に詰めかけているんだよ」


「まあ、当然の流れのような気がしないでもないな」


「まあ、それで、普段は冒険者たちが依頼として片付けている細々とした依頼――『天塔(ヘブンタワー)』に関する依頼以外が残るようになって、それらが残るのは良くないと、今だけ騎士や兵士が依頼処理のお手伝いをしているという訳だよ。冒険者ギルド、商業ギルド共にね」


「なるほど。ご苦労さまです」


 大変だな、騎士も………………あっ!


「でも、これはいいところで出会った!」


「ん? 何かあるのかい?」


 騎士たちに頼んで、カーくん含めて全員問題なく王都・ガレットに入ることができた。


     ―――


 ……忘れていた。


「Oh! やっべ! 遂にこれまでの中で一番の逸材を見つけてしまった! 天の導きに感謝(サンクス)! 見ただけでわかる輝き(シャイン)を持つお嬢さん! 冒険者ギルド・総本部に所属して、成功(サクセス)、してみない?」


 困惑するリノファにそう声をかけたかと思えば――。


「HEY! HEY! HEY! HEY! なん……て筋肉(マッスル)なんだ、旦那! 俺はこれまでこれほどの筋肉(マッスル)を見たことなんてない! ナイスバルク! この筋肉(マッスル)を前にすると、自然とそう言ってしまう……神だ。この筋肉(マッスル)には神が宿っている! 是非! 冒険者ギルド・総本部で、その神筋肉(ゴッド・マッスル)、披露してみない?」


 そのまま流れるようにカーくんにそう声をかけてきて――。


「すいませんでしたー!」


 母さんを前にすると何故か謝った。

 それが誰か――こいつを忘れていた、というのはSランクの勧誘である。

 ちなみに、アブさんは王都・ガレットに入って直ぐの屋台や人の多さの賑わいによって、上空へと即座に逃げていた。


「いやいや、アルムくん。すごい二人が居たかと思えば、一緒に怖い人が居て即座に謝ってしまったけど、この人たち知り合い? アルムくんの知り合いってことは、俺の知り合いでもあるってことでいいかな?」


 いや、良くないな。

 というか、母さんが怖い人ってなんだ。

 謝れ! ……いや、開口一番で謝っていたな。


「というか、親しげに話しかけないでくれますか?」


「そんな今更他人行儀なんてナンセンスだぜ! 一緒に死線を潜り抜けた仲――もう俺たちマブダチっしょ!」


 いや、勝手にそんな認識しないでもらいたい。

 三柱の国・ラピスラで出会った人たちの中でマブダチと呼べる存在は、副団長や騎士たちだけである。


「それよりも、勧誘ではなく『天塔(ヘブンタワー)』には行かないのか? 結構な数が行っているんだろ?」


「そうね。でも、俺は前回ので頑張ったから、今はいいかな。それに、勧誘だけじゃなく、普段は細々とした依頼も楽しいしね!」


 そうか。こいつも駆り出されている訳か。

 ……くっ。こいつができる冒険者のように感じるのは、きっと勘違いだ。


「それで、この人たちはアルムくんがわざわざ連れて来たようだし、アレ関係かな?」


 まあ、ラフトとビネスからある程度は事情を聞いているだろうから、容易に想像がつくだろう。

 なので、その通りだと頷きを返す。


「そっか。それじゃあ、勧誘する訳にはいかないね! それじゃ、またね! アルムくん!」


 ……またはないと思いたい。

 なんというか、嵐のように来て、そのまま嵐のように去っていった感じ。


「なんだったのでしょうか?」


「この筋肉の良さがわかるとは、いいヤツなのかもしれんな」


「……何故、怖がられたのでしょうか?」


 アレを特に気にする必要はない。

 母さんも気にしないように。

 とりあえず、もう勧誘に絡まれませんように、と思いながら王城に向かった。

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