努力と同じってこと
「聖者」、「聖女」スキル持ち並の強力な聖属性持ちに当てがあると伝え、三柱の国・ラピスラから飛び立つ。
普通はそれだけでそうですか、とはならないと思うのだが、そこは王家所属であり、ラフト、ビネスとはバジリスク・特殊個体と共に戦った仲だ。
「これで石化が解けた時、引きとめられたと言うぞ」
これで一発である。
まあ、実際のところ、石化解除に足りないのが強力な聖属性であるのなら、問題ないだろう。
俺の当てとは、リノファだ。
リノファはそもそも「聖女」スキル持ちであるため、条件は達成できている。
それに、思いの力だけでカーくんを動かしたのだ。
少なくとも並の「聖女」ではな………………あれ? カーくんを動かしたことに、「聖女」は関係あるだろうか?
物理的な問題………………いや、ある。うん。ある。
そういうことにしておこう。
リノファに訳を話せば協力してくれると思うが……駄目だったら、別の手を考えるか。
それに、ついでという訳ではないが、ブッくんとホーちゃんについても話ができる――いい機会である。
そんなことを考えながら、ラビンさんの隠れ家に戻った。
―――
ラビンさんの隠れ家から魔法陣を通ってダンジョン最下層へ。
感じる気配的に、皆はボス部屋の中に居るようなので入る。
以前もあったような、以前にできていたような、そんな少し高くなっている場所。
その前に皆は居た。
少し高くなっている場所に、皆の視線が向けられている――と思ったが、リノファだけはカーくんが掴み留めていた。
不穏……ではない。
漂う雰囲気は……期待、だろうか。
どういう状況? と思っていると、少し高くなっている場所の上に、左右からスケルトンが一人ずつ現れ、中央に並んで立つ。
「どうも~、スケルです!」
俺から見て左のスケルトンがそう名乗り――。
「こんにちは。ルトンです!」
俺から見て右のスケルトンがそう名乗り――。
「「二人合わせて、スケルトンです!」」
二人のスケルトンはそう名乗った。
いや、元々スケルトンだと思うのだが……きっとそういうことではないのだろう。
見ている皆が拍手を送る。
俺も合わせて拍手を送った。
二人のスケルトンは拍手を受けたあと、話し始める。
「まあ、今はこうして骨だけのスケルトンになってしまいましたが、実のところ、元人間なんですよ、私たち」
スケルがそう言い――。
「そうそう。俺たち肉体があったの、前はね。でも、そんなん随分前の話やし、それが今更どないしたん?」
ルトンが頷き、そう返す。
スケルは悩むように言う。
「なんと言いますか、前に肉体があったからこそ、今はその違いがわかるようになったというか、こうなって私は思うことがある訳ですよ」
「何を思うん?」
「いや、スケルトンって骨だけで肉体がない。つまり、体を動かす筋肉がないということなので、戦うにしろ、物を運ぶ、動かすにしろ、力がまったく足りないと思う訳ですよ。身に付けるモノも、軽い衣服が精一杯で重い金属製の鎧なんて身に付ければ、一歩も動けません。いや、重みで骨が砕け散ってしまうでしょう」
「それこそ、骨身に染みるってヤツやな」
「骨だけに」
スケルとルトンが顔を見合わせ、お互いに面白いことを言ったみたいな雰囲気を醸し出す。
とりあえず、いつでも魔法を放てるように竜杖を構えておこう。
二人の会話は続く。
「でも、言う通りやな。スケルトンやと、片手で持てるのは剣一本くらいやわ。それ以上は重くて無理」
「でしょう? でも、ここが不思議なのが、スケルトンの上位――スケルトンナイトとかですよ」
「何が不思議なん?」
「いや、スケルトンナイトの中身は私たちと同じ骨なのに、普通に武具とか身に付けて、さらに自由に動いているじゃないですか。筋肉がないはずなのに、どうしてそんなことができるのかな? と」
「は? そんなん決まっとるやん!」
「そうですよね。魔力が」
「骨密度や!」
「ん? え?」
「は? ん? なんかおかしなこと言うたか?」
「いや、おかしなことと言うか、魔力の質や量が関係あるのでは?」
「まあ、そこら辺も関係あるかもしれへんけど、一番は骨密度や! 俺らスケルトンと違って、上位は骨密度自体が違うんやで! 俺らと違って骨自体が頑丈なんや!」
「では、骨密度を上げれば、私も上位に?」
「なれるやろ。でもな、直ぐ上げるのは無理や。骨密度はそういうもんと違う。毎日毎日、日々の生活の中で、少しずつ骨密度を上げて丈夫にしていかなあかんねんで」
「ははあ、なるほど」
「何がなるほどや」
「いや、骨密度を上げるのは、毎日骨骨とやっていくのが大事ってことですよ」
「なんやねん、それ。もうええわ」
二人が揃って頭を下げる。
「「どうも、ありがとうございました」」
皆から大きな拍手が送られる。
俺もしておく……が、何これ? これも歓迎の芸か?
……まあ、その一端なんだろうな。
確かにこれなら、もしアブさんのダンジョンで冒険者と出会っても……大丈夫だろうか?
不安になる。
まあ、事前告知くらいはしておいた方がいい気がする。
ただ、それよりも気になることが一つ。
アブさんが少し高くなっている場所の少し奥で、腕組みしながら見守っているのは……なんだ?
何度も頷いている。
肉体があれば、泣いていそうな雰囲気も醸し出していた。
……もしかして、アブさんが考えた芸なのだろうか?
とりあえず、あの場所に火属性の魔法でも撃っておく?




