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賢者巡礼  作者: ナハァト
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偶に予測で核心を突く時もある

 王都・ガレットに戻ってから数日が経った。

 石化している「王雷」、半身近くが石化している副団長、石化で手と槍が一体化している槍持ち男性の石化は――まだ解けていない。

 従来の石化解除が通用しないような相当強力な石化らしく、石化解除は難航していた。

 バジリスク・特殊個体というだけあって、石化の方も特殊のようだ。

 それでも、その元であるバジリスク・特殊個体の死体の一部を素材として利用することで、少なからず前進はしている、とその辺りのことはジルフリートさんから聞いている。

 というのも、今は日に一度は王城に出向いているからだ。

 普段は、既に定宿と化している「穏やかな木漏れ日亭」に居る。


「知っているかい? なんでも、天塔(ヘブンタワー)の歴代到達階数が更新されたそうだよ。でもね、私はその裏に何かあったんじゃないかって聞いていてね。もちろん噂で、だよ。なんだろうねえ……私としては、実は人命救助だった、とかだと思っているんだけど」


「……そうですね。そうだといいな」


 相変わらずというか、女将さんが情報通すぎる。

 予測が核心を突いている辺りが怖い。

 さすがに秘密なので、曖昧に同意しておいた。

 ただ、ジルフリートさんからは毎日王城に来るのは面倒だろうし、王城内に部屋を用意すると言われたが断った。

 もちろん、毎日王城に行くとなると、その分後輩門番に絡まれることになるが、必ず先輩門番が居るようになったので問題ない。


「せ、先輩! て、手! 今日は手が極まって――」


「うるさい! お前は毎度毎度! 学習しろ! 彼は王家にとって大事な客だと何度言えばわかる!」


「そういったところの先に、俺とあいつの関係があるんです!」


 どういう関係だよ、と言いたかった。

 しかし、毎回違う関節技を見ることができるので、勉強になっていて、そちらの方に集中しているため、わざわざ口を開く必要はない。

 先輩門番の技が多彩で素晴らしい。

 それに、王城の部屋を断ったのは豪華過ぎて落ち着かないというのもあるが、俺が恐れているのは暗部の隊長だ。

 もし、俺があの秘密日記を読んだとバレた場合――どうなるのかわからないのが怖い。

 下手をすると口止めで……いや、さすがにそこまでは……暗部・隊長に良識があると信じよう。

 ……暗部だけど。

 バレたら死ぬ気で謝ろう。

 それで、俺が毎日王城に向かうことになった理由だが、これはバジリスク・特殊個体が大き過ぎて保存ができないからである。

 必要な分を取って、俺のマジックバッグに戻している感じだ。

 そんなバジリスク・特殊個体の扱いだが、石化解除に必要な、使用した分は王家、冒険者ギルド・総本部、商業ギルド・総本部が合同で買い取ることになっていて、残りはこの三つで分け合って買い取る方向で話が進んでいる……はずなのだが、既に冒険者ギルド・総本部と商業ギルド・総本部は、相手よりも多く買い取るために水面下の争いをしている……のだが、前ほど険悪ではないようなので、多少なりとも歩み寄ってはいる。

 特殊個体ということで金額の設定はまだ決まっていないそうだが、それでも最終的には破格の金額になるだろう――というのが、ジルフリートさん、ラフト、ビネスの見解だ。

 それで、その破格の金額だが、分配は戦闘参加者で分けられることになり、その大半は俺、ブッくん、ホーちゃんに渡されることになる。

 これはバジリスク・特殊個体との戦闘においてどれだけのことを果たしたかで決められ、全員納得済み。

 といっても、大半ではない部分を残りの面々で分けても、かなりの金額になるそうだが。

 他にも、今回の選抜に入っていた面々には、それぞれしっかりとした報酬が出るそうだ。

 なので、後々だがそれなりの金額が懐に入ることになるが……いつになるかわからないので、気長に待つとしよう。

 今のところひっ迫している訳ではないし。

 ただ、直近でお金が必要な人たちが居る。

 ブッくんとホーちゃんだ。

 二人は気楽な方がいいと俺と同じ宿に宿泊しており、今は久々の外を満喫すると、毎日のように王都・ガレット内で観光デートを行っているため、お金がかかるのである。

 今、そのお金を出しているのは俺。

 まあ、バジリスク・特殊個体の報酬から回収できるので、特に問題はない。

 ……ないったら、ない。

 楽しんでいるようなので、何よりなのだが――。


「アルム。早く会わせて欲し」


「さあ! 今日も行くわよ! ブッくん! 人の世界も中々楽しくなっているわね!」


 ブッくんとしては早くカーくんに話を通して欲しいようだが、ホーちゃんはデート優先のようだ。

 まあ、頑張れ……は違うか。

 お幸せに、だろう。

 それで思い出したが、今回の件で無事に戻ったら幼馴染の恋人と結婚すると言っていた騎士が、結婚することになった。

 式も挙げるそうで、それに来て欲しいと言われたのでもちろん行く。


「はいはい! 私も行きたい! 興味あるわ! もちろん、祝福もするわよ! だからいいわよね?」


 ホーちゃんも行くことになった。

 ブッくんも半ば強制的に。

 騎士も共に危機を乗り越えた仲間意識があるのか、是非来てください、と笑顔で応じた。

 祝う人数が増えるのはいいことだ。

 けれど、その日付はまだ決まっていない。

 副団長の石化が解けてから挙げることになっているからだ。

 だから――。


「末永くお幸せに!」


 祝福の言葉だけ先に伝えておいた。

 そうして、さらに数日経ったが――未だ石化解除は叶っていない。

 けれど、バジリスク・特殊個体の素材を使用することで大きく前進しているそうなので、あともう少しだと思われる。

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