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賢者巡礼  作者: ナハァト
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マジで痛いよね

 とりあえず、アレだな。

 バジリスク・特殊個体は未だに暴れているということは、視界はまだ戻っていないのだろう。

 今の内にもう少しやり返しておくか。


「良し。どうにかしてくるか」


 行ってくる、とブッくんとホーちゃんに向けて手を振り、竜杖に乗って宙へと舞い上がる。

 いや、本当に、どうして竜杖で飛ばなかったのか――まあ、それだけバジリスク・特殊個体を警戒してというか、視野が狭くなっていたとしか言いようはないが、ここはそれだけの広さと高さがあって、普通に移動するよりも速いというのに……すっかりと失念していた。

 バジリスク・特殊個体のところに向かう前に、途中で降下して石化して砕けた土壁の一部を二つ拾っておく。

 ブッくんとホーちゃんは様子見――はせず、攻めていくようだ。

 確かに、バジリスク・特殊個体の視界はまだ白いままだろうし、今が好機。

 さあ、他の皆も、今だ! 総攻撃! と思ったが、そういうば、他の皆も視界は似たようなモノだった。

 なんか、すみません。俺のせいだな、うん。

 皆が戦線復帰できるまでの間、俺が頑張ろう。

 まあ、これからやることは嫌がらせだけど。

 石化眼には散々悩まされたので、これくらいはやっておかないといかない。

 精神衛生上。


「シュロ……シュロロ……」


 バジリスク・特殊個体の上まで行くと、少しばかり落ち着きを取り戻していた。

 ただ、まだ視界は戻っていないのか大人しい。

 その頭部――片方の眼の上まで下降して、竜杖の上に立ち上がり、砕けた土壁の一部を二つ、両手に持って構える。

 近付いてわかったが、眼がでかい。

 人が普通に落ちるくらいの大きさがある。

 いや、わかりきったことなのだが、やっぱり近付いてみて初めてわかる大きさってあると思う。


「……シュロ?」


 俺の気配を感じたのか、バジリスク・特殊個体が薄目を開ける。

 わかるわかる。視界不良でも確認したくなるよな。

 キンッ! と石化眼を防いだ音がした。

 そこにすかさず両手に持った砕けた土壁の一部を擦り合わせる。

 そうすると不思議でもなんでもなく、さらに砕けて粉末のような土埃が落ちていき、バジリスク・特殊個体の眼の中に。


「シュ、ロロロロロッ! シュロロロロロ!」


 再度バジリスク・特殊個体が暴れる。

 いや、今回は暴れ狂うだろうか。

 大きく暴れているので、とばっちりを受けないように上昇して離れる。

 ゴロゴロして辛かろう。

 意外と痛かろう。

 おそらく、これまでの蛇生の中で初めての経験だろうから、痛みと戸惑いで混乱中なのは間違いない。

 暴れ狂って危険ではあるが、絶好の機会ではある。


「ふっ!」


 ブッくんがバジリスク・特殊個体の巨体を殴る。

 暴れ狂った動きなので予測は立てづらいはずなのだが、タイミングはぴったりで、バジリスク・特殊個体の巨体が大きく跳ねた。


「さっきはよくも私のブッくんを叩き飛ばしたなあ!」


 飛び上がったホーちゃんが追加で跳ねたバジリスク・特殊個体の巨体を蹴り落とす。

 正直言って、ブッくんの拳よりも痛そうなのは……いや、アレだ。足の方は筋肉量が違うから必然的に威力が変わってくるのであって、それだけの違いのはず。


「突然の発光で目がやられたかと思えば、どうやら絶好の機会だ!」


 視界不良から回復したラフトが、めったやたらに巨大な槌を打ち付ける。

 槍持ち男性と双剣持ち勧誘も戦線復帰して、それぞれ攻撃していく。


「今、この状況で臆する者はこの場には居ないわよね!」


 こちらも同じく視界不良から回復したビネスが、矢を射り、魔法――風属性魔法も放っている。

 Sランクの魔法使いも戦線復帰しており、火属性や土属性による魔法攻撃を連発していた。

 そのさらに後方は――大丈夫そうだ。

 半身近くが石化している副団長を騎士たちが守るように立っていて、Aランクパーティ二つも石化している「王雷」をきちんと抱えている。

 ……落としてなくて本当に良かった。

 まあ、距離があったし、俺が壁のように立っていた訳だから、それで多少なりとも軽減したのだろう。

 反省しておく。

 急な発光、良くない。

 心の中で反省しつつ、バジリスク・特殊個体を見る。

 多少落ち着きはしたが、まだ暴れていることに変わりはない。

 視界は戻っていないようだが、こちらの攻撃がほぼほぼ通っていない。

 全体的に効果が薄いというか、物理も魔法も黒い靄が攻撃吸収でもしているかのように軽減されている。

 やはり、バジリスク・特殊個体を倒すのなら、黒い靄をどうにかしないといけないようだ。

 初手に放った合成魔法でも表面の鱗を焼いただけだったし、さらに軽減までされると次は表面の鱗を焼くことすらできるかどうか………………表面?

 待てよ………………いけるか?

 いや、どうせ、今のところ打つ手はないのだ。

 やってみる意味はある。

 それに、一度経験しているのだから、やってやれないことはない。


「……ブッくん! ホーちゃん!」


 バジリスク・特殊個体の頭部に向けて降下しながら名を呼ぶと、二人は追従するように来てくれた。

 ある程度距離が近付くと、ブッくんが声をかけてくる。


「アルム! どうした?」


「ブッくんとホーちゃんの二人で、バジリスク・特殊個体の口を開けてくれ!」


「それで、どうにかなるのか?」


「ああ、どうにかする!」


「……わかった!」


 ブッくんが頷くとホーちゃんも頷きを返す。

 二人は先行するように一気に駆け、暴れるバジリスク・特殊個体の巨体を器用に避けて頭部へ。

 そのまま流れるようにブッくんが上顎を殴り、ホーちゃんが下顎を蹴って、強制的に口を開かせる。


「それじゃ、行ってくる!」


 バジリスク・特殊個体の開いた大口から、体内へと突っ込んでいく。

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