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賢者巡礼  作者: ナハァト
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そもそも上げて欲しいとは言っていない

 話し合いが終わると同時に、物事は一気に進んでいく。

 俺の役割としては、選抜メンバーを天塔(ヘブンタワー)・64階まで連れていくことと、そこまで行けるならと戦力としても期待されている。

 しかし、俺はFランクである。

 冒険者ギルドでも、商業ギルドでも。


「「……冗談か?(よね?)」」


 ラフトとビネスから、まったく同じ反応を返された。

 しかし、事実である。

 二つのギルドカードで証明。


「……上げるか? 統括権限でSでもいけるぞ」


「……上げましょうか? 統括権限でSランクにできるわよ?」


 ラフトとビネスから、まったく同じ反応を返された。

 やっぱり、根は同じというか、実際のところは相性がいいのでは? と思わず口にすると――。


「は? お前の目は飾りか? こいつと仲がいいとか、あり得ないから。まだまだ状況を読む力が足りないようだ。しばらくはランクを上げる話はなしだ」


「冗談でも勘弁して欲しいわね。それがわからないようでは、商機を掴むのは夢のまた夢よ。当分はそのままのランクでいなさい」


 そう言われる。

 いや、そもそも上げてくれと言った憶えはないし、Fランクのままでいいのだが。

 しかし、今からこれでは前途は多難だ、とジルフリートさんと顔を見合わせていると――。


「……まっ、今回のことがすべて上手くいけば、今後の在り方についても考える必要はあるだろう。その時にランクを上げたくなったら来い」


「……あり得ないかもしれませんが、冒険者ギルドと今後は手を組む回数も増えていくかもしれません。そうなれば、あなたはとてつもない広い視野を持っていたということですから、ランクを上げても構いませんよ」


 二人が互いを見てはいないが、どこか気恥ずかしそうにそう言ってきたので、大丈夫そうだとジルフリートさんと共に頷く。

 もちろん、ランクはこのままで結構なので、上げるつもりはない。

 興味がない、とも言う。


     ―――


 それから数日間は、王都・ガレット全体が慌ただしくなった。

 名目上は、冒険者ギルド・総本部、商業ギルド・総本部、王家が協力して歴史を超える――天塔(ヘブンタワー)・62階以降に向かう、というモノ。

 といっても、本当のことを知っているのは、ほんの一部だけ。

 今情報を公開して、自分たちもと挑んで何かの手違い、あるいは運によって64階まで行けてしまった場合、石化している「王雷」がどうなるかわからないからである。

 バジリスク・特殊個体は……うん。手違いとか運とかでどうにかなるような存在ではないので、ただしい処置だろう。

 それでも慌ただしくなっているのは、攻略に必要なメンバーの選出と確保に、数週間分の物資の調達と、石化を解くために必要なモノを集めているからである。

 そちらは王家が主動で、冒険者ギルド・総本部と商業ギルド・総本部が協力している感じだ。

 いや、協力という言葉には語弊があるかもしれない。

 実際は競い合っている、というのが正しいだろう。

 冒険者ギルド・総本部は商業ギルド・総本部が調達した物資よりも品質が高いモノを、商業ギルド・総本部は冒険者ギルド・総本部が調達した物資よりも品質は難しそうだが数を多くしようとしている。

 その結果、高品質なモノが続々と集まっていっているようだ。

 こんな時くらい……と思わなくもないが、戦うことになるであろう相手がバジリスク・特殊個体である以上、品質が高く、数があることに越したことはない。

 ……どんどん競い合え!

 ……いや、煽るのは良くない。

 それに、俺は一応王家所属。

 仲裁・中立の立場を心掛けないといけない。

 ……万全の態勢を整えるのなら、今の状況は悪くない気がする。

 黙認するか。

 ただ、やはりというか、冒険者ギルド・総本部と商業ギルド・総本部の突然の協力路線に、双方のギルド員、所属している者は少なからず困惑しているようだが……まあ、悪いことではないし、これからそうなっていくかもしれないのだ。

 今の内から慣れていってもらわないといけない。

 そうして、俺は元々マジックバッグに必要なモノは全部入っているし、これといって準備は必要ないため、英気を養うという意味で宿泊している「穏やかな木漏れ日亭」の情報通の女将さんと話したり、王都・ガレット内を観光したりしていた。

 何しろ、今はどこも慌ただしい。

 勧誘なんてしている暇はない。

 こうなって初めて、俺は王都・ガレットを観光することができた。

 なんというか、天塔(ヘブンタワー)から得られる素材も豊富であるようだし、元々というか実際は今もまだ継続中ではあるが、冒険者ギルド・総本部と商業ギルド・総本部が対立して競い合っていたということもあってか、食事が美味いというのもそうだが、販売している物も質が高い。

 他のところではあまり見かけないような高品質なモノ――例えば最高品質の回復薬なんかが普通に店頭に並んでいる。

 まあ、さすがは冒険者ギルド・総本部と商業ギルド・総本部がある王都、ということだろう。

 さらに数日が経ち、準備がそろそろ終わろうかという頃、ラフトとビネスから呼び出され、天塔(ヘブンタワー)・64階まで共に行き、バジリスク・特殊個体と戦うことになるだろう選抜メンバーと会うことになった。

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