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賢者巡礼  作者: ナハァト
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こういうこともあるかもしれない

 天塔(ヘブンタワー)・61階。

 ここから先は、推奨冒険者ランクS(超常)だ。

 それだけでも厳しいというのに、冒険者ギルド・総本部で記録されている最高到達階が62階――つまり、ここから一階上でしかないのが、より厳しさを伝えてくる。

 いや、実際厳しいなんてモノではないだろう。

 水のリタさんの記憶だけでの判断だが、正直俺の魔法でもやれるかどうか……いや、やれるとは思う。

 体感でしかないが、受け継いだ魔力はどれもランクSを超えるレベルだと思うからだ。

 ただ。それを未だに使いこなせているかと問われると……否、と答えるしかない。

 一番得意であろう火属性であっても、だ。

 力押しでどこまで通じるだろうか……不安だ。

 それに、ここからは罠も即死系しかない。

 一歩でも間違えば……不安だ。

 しかし、行くと決めた。

 逝くしか……間違えた。行くしかない。

 思わずそう考えてしまうくらい、危険で不安なのだ。

 目的としているのは――64階。

 そう。冒険者ギルド・総本部に記録されている最高到達階よりも上。

 記録には残っていないが、水のリタさん――それとパーティメンバーはそこまで行っている。

 そこから戻れた――と言っていいのかはわからないが、水のリタさんだけ。

 そういうことだ。

 ……言葉にしなくてもわかるだろう。

 随分と時間が経っているし、何かが残っているとは思わないが……それならそれで、そのことを水のリタさんに伝えるつもりだ。

 そのために……俺は前へと進む。


     ―――


 61階以降は推奨冒険者ランクS(超常)だ。

 といっても、現れる魔物もそのランクという訳ではない。

 寧ろ、現れる魔物の強さは51階~60階のランクA(天才)で、その種類が増えたくらいだろうか。

 なので、炎光線の檻でどうにかここまで来ることができたため、同じ手法で魔物の方はどうにかできると思う。

 問題なのは、罠の方。

 確認できているだけでも即死系ばかりということもそうだが、寧ろ、この場合の問題は炎光線の檻で対処はできないし、水のリタさんの記憶があっても、61階以降はほぼ探索されていない。

 つまり、情報がないために、どこに罠があるかわからないのだ。

 水のリタさんとそのパーティメンバーが通ったところはわかるが、それでも絶対ではないだろうし、そもそもその通りに進めるとも限らない。

 そういうことを考えると足がとまってしまいそうになるが、自分で自分を鼓舞して前に進んでいく。


     ―――


 |天塔・62~63階。

 なんとか上に進むことができていた。

 それで、一階上がるのに二、三日は必要だったのがつらい。

 単純に距離の問題もあるが、やはり妨げとなるのは罠だろう。

 できることなら水のリタさんとそのパーティメンバーが通ったところを通っていきたいのだが、中には無理な場合もある。

 炎光線の檻、あるいは魔法が通じない魔物が先に居て遠回りするしかないなかったり、あるいは単独(ソロ)では突破できないような仕掛けの罠であったりと、どうしても知らない通路を通らないといけない時があって、その時は危険度の高さから、慎重に慎重を重ねるような行動になるため、歩みがさらに遅くなるのだ。

 それでも、というべきか、なんというか……こう……運が良かったのか、悪かったのか……いや、結果だけを見れば運が良かったという時があった。

 それは、知らない通路を通っていた時のこと。

 慎重に慎重を重ねていたとしても、引っかかる時は引っかかってしまうものというか、あとで言われると何故それで? と思うような罠に引っかかってしまう場合もある。

 まさにそれ。


     ―――


 慎重に調べたはずなのに、足を出した先がガコッと僅かに落ちる。

 あっ、罠だな、と思った瞬間、飛び退く前に罠が作動した。

 横の壁から大鎌のような鋭利な刃が飛び出してくる。

 速度が超速というのもあるが、高さも丁度腰くらいで、飛び上がろうとも、しゃがもうとも、多分間に合わない。

 飛び退くのも――範囲外から逃れられないだろう。

 ヤバい! と思うのと同時に、大鎌のような鋭利な刃は俺の腰に届き、そのままスパッ! と両断――されることはなかった。

 寧ろ傷一つ付いていない。

 軽く衝撃はあったが、それだけ。

 というのも、大鎌のような鋭利な刃はドラゴンローブに触れた瞬間にパキッと折れた――で終わらず、折れた刃は壁、地面と勢い良くぶつかっていき、上手い具合に炎光線の檻の隙間を抜け――。


「ギャッ!」


 床に落ちる前に何かとぶつかって、そんな叫び声が聞こえてきた。

 何かはわからない。

 いや、刃が刺さっているのでそこに何かが居るのはわかっているのだが、見えないのだ。

 所謂、透明。

 刺さっている刃が動く気配がないため、即死したのかもしれない。

 当たりどころが悪かったのだろう。

 まあ、俺も即死するところだったが。

 奇しくも、ドラゴンローブの性能の高さが証明されたのである。

 とりあえず、炎光線の檻を解いて、充分に気を付けながら、竜杖でつんつんしてみるが、動きはない。

 本当に即死したようだ。

 思い切って触って形を確認してみるが……人型……鱗っぽい感触……多分、リザードマンだろうか。

 しかし、透明で見えないというのは……危なかった。

 多分、狙われていたと思う。

 炎光線の檻を解いた瞬間に襲いかかってくるつもりだったのかもしれない。


     ―――


 という感じで、罠にかかったがそれで別の難を逃れたという訳だ。

 だから、まあ……結果として良かったが、罠にかかったのと、ドラゴンローブがなければ死んでいたのも事実。

 より気を引き締めて進み始めて……どうにかこうにか――64階に辿り着くことができた。

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