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賢者巡礼  作者: ナハァト
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怪しい言葉には注意してください

 川沿いに進んでいくと町があった。

 その町の門番にここがどこか尋ね、既に三柱の国・ラピスラに入っていたことがわかる。

 方向は間違っていなかったようだ。

 なので、王都・ガレットまでの道を聞き、まだ昼過ぎということもあって、町には寄らずに出発する。

 方角を聞いて進むのが一番早いのだが……少しでもずれるとそのまま通り過ぎる可能性が高いため、道沿いを飛んで進むことにした。

 なんというか、アブさんは海でも迷わなかったし、すごいダンジョンマスターなのだと改めて思う。

 ……いや、これにダンジョンマスターが関係あるかどうかは疑問だが。

 いや、そんなことはない。

 ダンジョンの中には広大な場所がある場合があるし、進むべき方向がわかるのは凄いことだ。

 そうして道沿いを進んでいき………………分かれ道は想定外。

 運命の選択……左か……右か………………ひだ、立て札があった。

 ……右か。

 そうして道沿いを進み、いくつかの町を通り過ぎることもあれば、偶に立ち寄って料理やベッドの寝心地に喜び、久し振りの一人野宿では妙に周囲の音が気になってビクビクしたりと――そんなことをしている間に王都・ガレットに辿り着く。

 近場で地上に下りて、徒歩で向かう。

 高い壁に囲まれていることや、城が見えているのは他の王都とそう変わらない。

 しかし、他とは違う部分がある。

 それは――塔。

 王都。ガレットの近隣にあるその塔は、上の方が崩れているが、それでも天高くそびえている塔である。

 その塔こそ、目的地。

 ――「天塔(ヘブンタワー)」。

 そう呼ばれるダンジョンだ。

 これから「天塔(ヘブンタワー)」の上層部に行かないといけないので、まずは王都・ガレットに拠点を用意しないといけない。

 とりあえず、まずは宿探しだと考えながら王都・ガレットに入るための列に並び、ここには冒険者として来たつもりなので、順番がきた時に門番には冒険者ギルドカードを提示し――。


「……厳しいかもしれないが、頑張れ。通って良し」


 何故か励まされた。

 なんで? と理由を問いたいが、俺のうしろにも行列は続いているので――まあ、いいか、と中に入る。

 建物の造りは他とそう大差はない。

 ただ、目に付くモノとして屋台が多く、その分非常に賑わっている。

 祭りか何かのようだ。

 近隣に「天塔(ヘブンタワー)」があるし、そこから得られるモノで活気が溢れているのだろう。

 何はともあれ、まずは宿だ、と歩を踏み出し――。


「いやあ~、そこのお兄さん! そこの、如何にも凄腕の魔法使いといった姿のお兄さん!」


 俺のことかな?

 足をとめると、軽い口調だが仕立てのいい服を着た男性が、行く手を遮るように現れる。

 見た目で言えば商人のように見える。


「いや、近くで見ると増々凄腕だね。やっぱアレ、これまでいくつもの修羅場を潜り抜けてきた感じ?」


「は、はあ。まあ、それなりに」


「だよね。わかる。私、そういう目利き、みたいな……得意なんですよ。できる人を見抜くっていうのかな。なんかこう、できる人から発せられるオーラ? みたいなのがあって、それが見える、みたいな」


 商人のような男性が、自信満々の表情(ドヤ顔)でそう言ってくる。

 なんだろう。胡散臭い。


「そうか。じゃ」


 関わらない方がいいだろうと判断して、商人のような男性の横を抜けて歩み出すが、直ぐに回り込まれる。


「いやいやいやいや、待って待って。ノンノンノンノン。そんなせっかちだと、商人だったら商機を逃しちゃうぞ。いや、ほんと、商機大事! で、凄腕の魔法使いさまに向けたとても良い話があるから、是非聞いてよ!」


 ……どうしよう。

 関わりたくない。

 無視していくが、再び回り込まれる。


「ちょいちょい! まだ途中! 大事なこと言ってないから! ほんと、聞かないと損! いや、これマジで!」


 既に絡まれているレベルであり、心象的には既に損している気分なのだが。

 もう口を開くのも嫌だったのだが、沈黙は肯定と思ったのか、俺が話を聞く気になったと思ったようで、商人のような男性が口を開く。


「はーい! これでお兄さんもビッグな金持ちの仲間入り! 成功者、一名入りまーす!」


 どうでもいいから、さっさと本題に入れ。

 その気持ちが通じたのか、商人のような男性が本題に入る。


「つー訳で、一応確認だけど、所属は冒険者ギルドだよね? うん。大丈夫。言わなくてもわかるから、俺。俺も元冒険者ギルド所属なんで。でもね、だからこそ――ビッグチャーンス! 所属を冒険者ギルドから商業ギルドに変えて、手にした魔物素材なんかを商業ギルドに卸すと、なんと買い取り価格が冒険者ギルドの……1.2倍! モノによっては、2倍もあり得るから! はい! これでお金持ちー!」


 ……胡散くせー。

 怪訝な表情で見ていると、商人のような男性はニッコリと笑みを浮かべる。


「これね、今だけの特典だから。他にも冒険者ギルドとは違って色々と好待遇な措置もあるよ。ただね、そっちは元となった冒険者ギルドのランクによって変わってくるんだけど……お兄さんなら大丈夫だよね? 一応聞くけど、冒険者ギルドのランクは? いやいや、高いっていうのはわかっているんだけど、事前確認は必要だから。ほら、いきなり『A』ランクとか言われると緊張しちゃうしね」


 別に隠すようなランクでもないので正直に言う。


「『F』だが?」


「ちっ。雑魚が。いきがった格好してんじゃねえよ。紛らわしい。さっさとどっか行け。……あっ、そこのお兄さん! うわっ! もしかして剣豪? 自分、そういうのわかるんですよ!」


 商人のような男性の態度が豹変したかと思えば、別の人に声をかけに行った。

 解放されたのは喜ばしいが………………なんか納得できない。

 所属しているという商業ギルドを崩壊させてやろうか、と思ったが、怒りのままにやると王都・ガレットもそのまま崩壊するだろうから、やめた。

 アブさんが居たら、即死魔法をお願いしていたかもしれない。

 そういう意味では、商人のような男性は命拾いしたな、と思った。

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