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賢者巡礼  作者: ナハァト
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誰にだって抑えられないモノがあるはず

 たくさんのスケルトンが現れるということで暴走しそうになっていたリノファをどうにか抑え込み、風のウィンヴィさんは「青い空と海ブルースカイオーシャン」と感動の再会を果たすことはできた。

 それは喜ばしいことだ。

 まあ、ゼルさんを先頭にして魔法陣から現れた「青い空と海ブルースカイオーシャン」の面々が、こちらに居る無のグラノさんたちの中から迷うことなく風のウィンヴィさんを見つけ、一斉に跪いたのには驚いたが。


「再びお会いできたこと、望外の幸せでございます。ウィンヴィさま」


「それは僕の方だよ。色々な意味でありがとう。でも、一番はこうしてまた会えたことに感謝かな」


 いい雰囲気だったのは間違いない。

 その光景を見ているドレアも嬉しそうだ。

 けれど、こっちはこっちで必死だった。

 リノファを抑え込むのが本当に大変だったのである。

 カーくんが殺さないように強く握ることができなかったとはいえ、リノファがカーくんの手を払い除けて拘束を破ろうとしたのだ。

 しかも、どうやら近付くだけで死霊系には危険なだけの聖なる波動を放っていたらしく、無のグラノさんたちは協力できなかった――ところに、ラビンさんが戻って来たので助かった。

 無事に風のウィンヴィさんは「青い空と海ブルースカイオーシャン」の感動の再会は守られたのである。

 だから――。


「あ、あの……見せてくれますか?」


「え? 何を?」


「あなたの骨を……」


「は?」


「見せてくれないと……私……気持ちを抑えられません!」


「なんか骨伝導がビリビリする! た、退避~! 退避~! 危険! この子危険だ! デンジャーだ!」


 感動の再会後は各々の自主性に任せた。

 何が起ころうとも自己責任ということで。


「た、助けてください! なんか昇天しそうなんです!」


 リノファから逃げる「青い空と海ブルースカイオーシャン」の船員(スケルトン)たちから救援を求められるが、無理だ、と頭を横に振っておく。

 先ほどまでリノファを抑え込むのに、こちら側は力を使い過ぎた。

 だから代わりに、だろう。

青い空と海ブルースカイオーシャン」の船員(ゾンビ)たちがリノファの前に立ち塞がる。

 状況的にスケルトンだけを追いかけているとわかったからだろう。

 さすがは海兵部隊、と言える状況判断である。


「「「行かせないぞ! 仲間は守ってみせる!」」」


「ゾンビには興味ないのですが」


 リノファの冷たい目線に、立ち塞がったゾンビたちの中の一人が、ぶるりと体を震わせる。

 ……なんか興奮していないか? あいつ。

 しかし、ゾンビの壁は有効的なようで、リノファをとめることには成功する。

 さらにその中の一人がリノファを押さえようと手を出すと――しゅわあ……と出した手の部分の肉体が浄化するように消え、骨が露出した。

 リノファとゾンビたちの視線が露出した手の骨に注がれる。

 ……どうやら、一定以上に近付くと肉体部分だけ浄化されるようだ。


「まあ、わざわざ私に見せてくれるように! 積極的な骨に出会えて私嬉しいです! さあ、もっと見せてください! 私、隅々まで見たいです!」


「た、退避! 退避~! 緊急退避~! 特にゾンビネタ持ちゾンビ! 気を付けろ! 無条件で体が浄化されてネタができなくなるぞ~!」


「「「なんて恐ろしい娘だ!」」」


 場が一気に阿鼻叫喚となる。

 すまない。その方、俺の故郷の国の王女さまだ。

 アブさんが戻ってくれば、守るための壁になっていたかもしれない。

 それはそれで危険だが。

 しかし、俺や母さん、ラビンさんにカーくん、無のグラノさんたちは、寧ろ慣れたモノだ。

 先ほどまでは抑え込むのに必死であったが、今は微笑ましい。

 ほら、リノファがあんなに楽しそうだよ、母さん。


「……いいのか、放っておいて」


 ドレアがそう尋ねてきたので、問題ないと頷く。


「大丈夫だ。リノファは」


 言い切る前にリノファは倒れた。

 母さんが救助に向かう。


「まだ体力がないから。直ぐにバテる。立ち上がれるまで回復する頃には落ち着いている」


「そ、そうか」


 ドレアが苦笑いを浮かべる。


「ぜはあ……ぜはあ……倒れるのなら前に……少しでも、近付いた状態で骨を見るために……」


 ……う~ん。

 冷静になっていることを切に願う。


     ―――


 場が落ち着いたので、ゼルさんの下へ。


「ありがとう。ウィンヴィさまと出会わせてくれて」


「気にしなくていい。俺もウィンヴィさんが喜ぶことをしたかったからな。……ところで、どうしてウィンヴィさんがウィンヴィさんだと直ぐわかったんだ?」


 今は判別できているが、俺もそれなりに時間がかかったのだが。


「まあ、骨は毎日見ているからな。初見でも骨格とかでなんとなくわかる」


「そうか」


 なるほど。

 それはすごい――と思ったが、使う場面が限られているな、とも思った。

 そうこうしている間に、アブさんが戻って来て新たな魔法陣がラビンさんの手で描かれる。

 アブさんのダンジョン地下六階――海階層にある何もない島と直接繋がっていた。

 どうやら、アブさんはここを拠点の一つとして色々開発したいようだ。

 そこを利用することになる「青い空と海ブルースカイオーシャン」と早速相談を始めている。

 その中の議題の一つに、海神の船をどうするか、というのがあった。

 ドレアもその輪の中に加わっている。

 風のウィンヴィさんは、自分には必要ないとドレアかゼルさんに。

 ドレアは、もう船は持っていると、風のウィンヴィさんかゼルさんに。

 ゼルさんは、さすがに自分が使う訳にはと、風のウィンヴィさんかドレアに。

 海神の船を動かせる三人共が、自分以外に――と話は平行線のまま終わらない。

 アブさんの方も、海神の船の方も、話し合いは長引きそうだ。

 ………………。

 ………………。

 時間かかりそうだし、新しい場所にでも行くか。

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