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賢者巡礼  作者: ナハァト
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休息は気を抜いてなんぼ

 現宰相がリュエルの子孫であると、ドレアが言う。

 リュエルは風のウィンヴィさんの兄であり、暗躍して風のウィンヴィさんを嵌めた存在。

 それの子孫が宰相となると……今も何かやっている可能性は大いにある。

 俺とドレアの行動は速かった。

 大急ぎで王都・ポートアンカーに向かうことにする。


「アブさんはどうする!」


「共に行こう!」


 アブさんも同行。

 残念だけど、ゼルさんたち――「青い空と海ブルースカイオーシャン」はここで待機。

 さすがに現状だと余計な争いを起こしかねない。

 だから、海神の船に乗れるようになって、ここから脱出できるといっても出ないように。

 ここは普通の手段では入れないし、「青い空と海ブルースカイオーシャン」を守る砦とも言える。

 俺とドレアの連名で、そう強く言っておく。

 ゼルさんからは――。


「任せていいんだね?」


 と真面目な雰囲気で問われたので、頷きを返す。

 これでも一度救っているので大丈夫だ。

 直ぐに洞窟から出て、来た時と同じようにドレアを竜杖に乗せて空へ。

 その途中でドレアに声をかける。


「このまま向かうか?」


「いや、船員たちのところに戻ってくれ! いざという時のために人手は多い方がいい!」


「……いいのか?」


「大丈夫だ! 海賊として向かう訳ではない! もう一つの顔を使う!」


 ……もう一つ?

 それが何かを問う前に、「青緑の海(エメラルドオーシャン)」が待機していた場所に戻る。

 待機していた島の浜辺には大きな日傘がいくつも置かれ、その下には小さなテーブルと長椅子があり、そこで「青緑の海(エメラルドオーシャン)」の面々が水着姿で穏やかに過ごしていた。

 保養地(リゾート)感が強い。

 体だけではなく、ここぞとばかりに心と精神を休ませている感じがものすごくする。

 だらけているのが一目でわかるからだろうか?

 それとも、小さなテーブルの上にこれでもかと様々な酒瓶が置かれているからだろうか?

 はたまた、余りにも気を抜いているため、俺たちが戻ってきたことに気付いていないからだろうか?

 あと、浜辺に居るのが全員ではないよな?

 もっと人数が居たはずだが……島内散策だろうか?

 時折、「アオオオオオ」と動物の鳴き声のようなモノが聞こえるが……現地動物だよな?

 船員……ではないと思いたい。


「……集合っ!」


 ドレアが叫ぶ。

 怒りが込められていたように感じたのは……いや、気のせいだ。

 そこで初めてドレアの存在に気付いた「青緑の海(エメラルドオーシャン)」の船員たちが大慌てで動く。

 浜辺で穏やかに過ごしていたのはドレアの声が聞こえていたため直ぐに動くが、島内探索に出向いている船員たちはどうするのだろうか?

 そう思っていると、浜辺に居た者の一人が魔法で上空に向けて火の玉を放つ。

 それが合図なのだろう。

 浜辺に居た人たちがドレアの前で整列したあと、島内探索していた人たちも戻ってきて直ぐ整列する。

 ……うん。整列するのは別にいい。

 それはどこにも問題ない。

 きちんと統率されているのだな、と寧ろ感心するくらいだ。

 しかし、いくら急だったからといって、そのままで来るのはどうだろう。

 水着かと思えば下着では? と疑いたくなる人も居るし、中には何がとは言わないが、見えていないというだけで危ない感じで着崩している人も居る。

 島内探索していた人たちの中にも、泥だらけであったり、服が破れに破れて大事な部分しか隠れていないような状態になっているのも居る。

 とりあえず、俺はうしろを向いて多くの……そうだな。600くらい数を数えるから、その間にどうにかしてもらえないだろうか?

 大丈夫だ。ゆっくり数えるから。

 ただ、そんな暇はないとドレアが声を上げる。


「どうやら、グラスの危機はまだ終わっていないと判断する! よって、これから王都・ポートアンカーに向かうこととなった! 総員! 戦闘準備! 最大船速で向かう! ああ、それと、帆を変えろ!」


青緑の海(エメラルドオーシャン)」の船員たちが一斉に動き出す。

 服装が危ない人は、あまり大きく動かないで欲しい。

 というか、わざと俺の視界に入るように動いていないよな?

 疑われる節がある。

 ただ、グラスさまの危機とか、戦闘準備とか、色々と気を引き締める部分がドレアの言葉の中にあったのだが、それよりも一番動揺していたというか、反応していたのが「帆を変えろ」だったのは、どういうことだろうか?

 そう考えていると、ドレアが説明してくれる。


「海賊団『青緑の海(エメラルドオーシャン)』には、もう一つの顔がある。いや、本来はそっちが元々で、『青緑の海(エメラルドオーシャン)』は偽装や隠れ蓑だ」


「つまり、本来の姿がある、ということか?」


「ああ。聞いたことはないか? 『緋色の情熱スカーレット・パッション』という名を」


「……ああ、なんかあるような……ないような……」


 ただ、なんか聞き覚えがある。

 ……アレだ。ソイソースを使っている屋台の筋骨隆々な店主。

 あの人との会話の中であった。


「で、それが、本来の姿なのか?」


「そうだ。『緋色の情熱スカーレット・パッション』はその存在を公にしていないから海賊と思われているが、実際はグラスが選んだ精鋭部隊。――女王直属の海兵部隊『緋色の情熱スカーレット・パッション』。それが、本来の姿だ」


 ドレアがそう言うのと同時に、船の帆が変わる。

 違いは明らか。

 帆には穏やかな海面と空に浮かぶ月を模した、紋章のような絵が描かれている。

 女王直属の海兵部隊……「青い空と海ブルースカイオーシャン」みたいなモノか。

 ……ただ、先ほどの穏やかに過ごしていた光景に、未だ着替えも行われていない上に、これまでのことを考えると……精鋭? と疑問を抱いてしまうのは仕方ないと思う。

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