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賢者巡礼  作者: ナハァト
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顔を見合わせてから言うのは定番

 ゼルさんたち――「青い空と海ブルースカイオーシャン」が、今後どうしたいのかを相談し終わるまで待つ。

 別に急かしていないので、時間をかけて決めればいい。

 大抵のことには……多分対応できると思う。

 どのような結論を出すのかわからないが、待っているとアブさんが声をかけてくる。


「アルムよ」


「ん? どうした?」


「行き場がないとなれば、某のダンジョンで預かってもいいか?」


「アブさんの? ……ああ、確か地下六階だっけ? 海があるところ」


「そう。そこだ。航海技術があるのだし、あそこでなら存分に活躍できる。なんだったら、地下七階への橋渡し的存在でも構わない」


 なるほど。

 ……悪くは、ないかもしれない。

 俺は落ちた先に地下七階への階段があったけど、それは運でしかない。

 一から探索となると……どうなることやら。

 それに、あそこの冒険者ギルドには強く出ることもできるだろうし、ゾンビとスケルトンたちが地下七階にご招待するから攻撃しないように、とお願いくらいはできるかもしれない。

 まあ、その前に広大な砂漠である地下五階をどうにかこうにかしないといけないのだが……。


「悪くはないかな。でも、あそこって、海というだけで他に何かあるのか?」


「ない!」


 そんな断言までしなくても。


「でもまあ、一つの案だな。とりあえず、ゼルさんたちの意思が優先だけど」


「それはそうだ。しかし、某としては友誼を結びたい」


「……そんなに面白かったのか? 歓迎の芸」


「うむ。どれも面白かった。特に骨伝導のくだりは……」


 何やらアブさんが解説し始めた。

 だから、それを俺に言われてもわからないのだが。

 ただ、アブさんが「青い空と海ブルースカイオーシャン」の面々を随分と気に入った、というのはわかった。

 そこで、ふと気になる。


「そういえば、初対面だったのに平気だったな」


「人ではないからな。言ってみれば某と同じ種族のようなモノだ。だから平気だった」


「なるほど。ここがダンジョンというのも関係しているかもな」


「それもあるかもしれないな」


 アブさんと一緒にうんうんと頷く。

 と、そこで気付く。


「あっ!」


「どうした?」


「いや、『青い空と海ブルースカイオーシャン』の面々をアブさんのダンジョンに連れていくにしろ、ウィンヴィさんと会わせたいからラビンさんのダンジョンに連れていくにしろ、その手段がない」


 いや、正確にはある。

 俺が頑張って往復すればいいだけだ。

 ただ、かなりの重労働であるし、そんなに何度も往復していると誰かに見つかる可能性もある。

 それは……さすがに良くない。

 どうしたものかと悩んでいると、ゼルさんがこちらに来る。

 相談は終わったようだ。


「話し合いは終わったよ。言われた通り、私らがゾンビやスケルトンだというのは一旦横に置いて考えた結果、航海できるなら航海したいというのが結論だね」


「わかった」


 まあ、そうなると思っていた。

 となると、まずはどうやって連れていくか、だな。

 ………………。

 ………………駄目だ。いい方法がまったく思い浮かばない。


「どうにかできないか考えてみる。俺としても、ウィンヴィさんに会わせたいし」


「そうか。そうだったね。私らと同じような状態でウィンヴィさまが……それは寧ろ絶対にお願いしたいことだよ。よろしく頼む」


「ああ」


 とりあえず、ドレアを連れていくことは確定しているし、その時にラビンさんに相談してみよう。

 俺だと物理的に運ぶことしかできないが、ラビンさんであれば妙案があるかもしれない。

 そう思っていると、奥からドレアが戻ってきた。

 ただ、普通に戻ってきた訳ではない。

 駆けていて、大慌てである。


「アルム!」


 真っ直ぐこちらに来たので声をかける。


「どうした? ドレア。そんなに慌てて」


「思い、思い出したんだ! いや、忘れていた訳ではなく、今になって状況的にマズいかもしれないと思い至ったのだ!」


「……何が?」


 そう言われても、教えてくれないと意味がわからないのだが。


「アルム! 宰相を憶えているか!」


「宰相? ……グラスさまのところの? あの感じの悪そうなヤツのことか?」


「そう! それ!」


 そう指摘したところで、ドレアが俺の前に。

 大急ぎで大慌てだったため、息が乱れている。

 乱れた呼吸を一呼吸で戻したドレアが俺を見る目は、真剣そのもの。


「これまで確証がなかったというか、それらしい動きが見えなかったから放置していたが、ウィンヴィが無実なのはいいが、それがリュエルの企みだったとなると今の状況はマズいかもしれない」


「ん? 何が?」


「あの宰相の名は『リィバル』。だが、あいつには非公式だが正式な名がある。――『リィバル・マレ・ラメール』。宰相は、『リュエル・マレ・ラメール』の直系なんだ」


 ………………。

 ………………。

 俺とアブさんは顔を見合わせ、揃って言う。


「「な、なんだって~!」」


 あっ、だから、顔を見た時に嫌な感じがしていたのか。

 風のウィンヴィさんの記憶でリュエルの顔を知っているから、無意識に嫌な反応をしたのかもしれない。

 いや、確かにそれどころではない可能性がある。

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