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賢者巡礼  作者: ナハァト
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あると確信する時がある

 海洋国・シートピアの王家は「ラメール」。

 それは海洋国・シートピア建国時から変わらず、約百五十年前まで続いていた。

 何しろ、ラメール王家には、海という特定の環境下において絶対的の力があったのだ。

 それが、自在に海水を含む水を操る「海神の槍」と、風がなくても動き、海の魔物を一切寄せ付けることなく、あるいは撃退することができる「海神の船」である。

 陸地は少なく、大半が海という国柄において、この二つは神器という扱いであり、海において絶対の力を持っていると言ってもいい。

 また、その二つの神器を扱えるのが、ラメール王家だけだったのだ。

 といっても、歴史を紐解いた時、ラメール王家の誰もが神器を使えた訳ではない。

 特定の条件が必要なのだ。

 定かではない。

 けれど、これで間違いないだろう、と言われている条件がある。

 ――血筋と、水と風の二つの属性を持っていること。

 この条件を満たせば、海神の槍をその手に持って使うことができ、海神の船の操舵輪を回して操船することができるのだ。

 条件が満たせなければ、その逆で海神の槍はただの槍であり、海神の船は操舵輪を回すことはできない。

 だが、この条件によって、たとえラメール王家といえども、その中では差が生まれ、確執となっていた。


     ―――


 約百五十年前。

「ラメール」が王家であった最後の時。

 当時のラメール王には三人の子が居た。

 上から。

 長男――リュエル。

 次男――ウィンヴィ。

 長女――ソフィーリア。

 ただ、長男のリュエルは正室の子であり、ウィンヴィとソフィーリアは側室の子と、生まれた時からある種の確執があった。

 また、リュエルは傲慢で横暴という所謂典型的な悪い貴族のような性格で、ウィンヴィとソフィーリアはそんなリュエルを反面教師にしたかのように育ったため、確執の溝は深まるばかり。

 そんな確執が決定的に深まり、もう埋まることがなくなったことは、リュエルは海神の槍と海神の船を使うことができなかったが、ウィンヴィとソフィーリアは使えたという事実。

 それが、決定的となり、リュエルはウィンヴィとソフィーリアにつらく当たっていくことになる。

 ただ、ウィンヴィとソフィーリアはそれでもへこたれなかった。

 寧ろ、二人のその善性によって、当時もあった海賊問題に対して、王都・ポートアンカーがある大陸側と各町、村、それと各島との繋がりを深め、さらなる密な連絡が取れるよう尽力し、海賊に対しては私掠免許の発行だけではなく、より直接的に戦える組織を作る。

 組織の名は「青い空と海ブルースカイオーシャン」。

 ウィンヴィが直接指揮を執り、数多くの海賊を退けることでその名が名声となって響き渡るが――後年においては、悪逆の海賊として語られることになる。

 そのきっかけとなったのは――ラメール王の死。

 それがただの死ではなかった。

 誰かに殺されたのである。

 しかも、それが可能であったのは、ラメール王と近しい者――つまり、王族だけであった。

 さらに言うのであれば、犯人を示すような見つかった証拠が指し示しているのは、ウィンヴィであったのだ。

 当然、ウィンヴィには心当たりは一切ない。

 父親であるラメール王との関係は良好であり、殺害しようなどとは一度も考えたことはなかった――のに、自分が殺したという証拠が見つかるのだ。

 嵌められたのは間違いない。

 では、誰に? と考えた時、答えはそう難しくなかった。

 正室、側室は国内視察でその場に居らず、居たのはリュエル、ウィンヴィ、ソフィーリアの子供たちだけ。

 ソフィーリアではないことは、ウィンヴィは知っている。

 その逆も。

 つまり、残るのはリュエル。

 だが、リュエルを追い詰めることはできなかった。

 そうだとウィンヴィが行動を起こそうとした時には既に遅く、何もかもが後手に回り、自分にかけられた殺害の嫌疑を払拭させ、リュエルへと向けることはできなかったのである。

 リュエルは確かに傲慢で横暴であるが、同時に狡猾さも兼ね備えていたのだ。

 ウィンヴィが取れる手段は、このまま王殺害の大罪によって殺されるか、この国から逃亡するしかなかった。

 ソフィーリアの願いで、ウィンヴィは逃走を選択する。

 けれど、ウィンヴィはただ逃亡した訳ではない。

 ラメール王家を王家足らしめんとする神器を、秘密裏に隠す。

「海神の槍」は、ソフィーリアに託された。

 表向きは紛失した、あるいは自分が持ち去ったということにして、ソフィーリアには、いざという時はこれで自分の身を守れ、と告げて。

「海神の船」は、「青い空と海ブルースカイオーシャン」に、名もなき無人島の一つに隠すよう指示した。


 そうして、逃亡生活を続けるウィンヴィであったが、同時にそれは逃すつもりは一切ないというリュエルの意思によって差し向けられた暗殺者に追われる日々となり、その途中でラビンさんのダンジョンに逃げ込むこととなって、その中で暗殺者とやり合う中で大穴に落ちた。


     ―――


 それが、風のウィンヴィさんの記憶。

 その記憶の中に出てきた「青い空と海ブルースカイオーシャン」が、今目の前に居るゾンビとスケルトンたち――なら、本当にここにあるのだ。

「海神の船」が。

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