表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者巡礼  作者: ナハァト
217/614

安心しきるって難しい

 海洋国・シートピアに再び向かう。

 俺の隣には、当然のようにアブさんが居る。


「ここ数日、魔法の練習ばかりで気にかけられなかったけど、アブさんはどう過ごしていたんだ?」


「某か? グラノ殿から色々と学んでいた」


 無のグラノさんから?


「色々って?」


「うむ。主に気配遮断についてな。相談してみたところ、グラノ殿は某以上の博識で、同じような身体の持ち主だから、様々な術を心得ているのだ。おかげで、もう大丈夫だ!」


 グッと親指を立てて見せるアブさん。

 ドレアに勘で襲われたことが、まさかここまで引きずるとは……。

 でも、ドレアにはアブさんのことを話すことになる。

 ラビンさんのダンジョンまで来るだろうから、というのもあるが、合流してからどこに向かうかわからないが、そこがどこでどのようなところであれ、アブさんが居てくれた方が心強いのは間違いない。

 なので、結局話すことになる。

 一度話して、アブさんの存在を見せれば、もうドレアがアブさんを勘で襲うことはない……と思う。

 思うとしか言えない辺りが、ドレアらしいと言えばらしいが。

 間違えて海神の槍を投げる、というのがあるかもしれない。

 ……そう考えると、アブさんの気配遮断が強まるのは悪いことではないな。

 何より、今後のことも考えて、アブさんの存在がバレないこともそうだが、安全のためには必要なことだと思う。


     ―――


 王都・ポートアンカーには向かわず、青緑の海(エメラルドオーシャン)の拠点がある港町の方に直接向かう。

 王都・ポートアンカーの方は、多分まだ落ち着いていないだろうというのもあるが、正直言ってあそこに用はあまりない。

 女王であるグラスさまには会うことができたし、風のウィンヴィさんのことに関してはドレアから聞けばいい。

 だから用は……あっ。ハーフェーン商会。

 そういえば、協力の見返りに王族との仲介を頼んでいたな。

 今となっては不要になってしまったが……さすがにそのままにする訳にはいかないか。

 仕方ない、と王都・ポートアンカーに向かうことにする。

 特に寄り道もせず、これといったことも起きなかったので、それほど時間がかからずに辿り着く。

 空から見た限りだと……一応の落ち着きは見えた。

 とりあえず、緊急時でもないし、そのまま空から入るのは違法と言われる可能性が高いというか、まずそうなるので、大人しく王都・ポートアンカーの門から中に入る。

 内部は落ち着きを取り戻し、日常が戻っているようだった。

 ハーフェーン商会に向かい、オセアンさんと会えるかどうか従業員に聞いてみる。

 駄目だったら駄目で別に構わない。

 言伝くらいは頼んでも大丈夫だろう、と思っていたのだが、すんなりと会うことができた。


「此度は、女王陛下をお救いくださり、誠にありがとうございます。まさか、『ドゥラーク海賊団』の狙いが女王陛下のお命とは……それに気付かなかったのはお恥ずかしい。私も耄碌したものです」


 以前と同じ部屋に案内され、オセアンさんに会うとそう言ってきた。

 随分と落ち込んでいるようである。


「別にそういうことではないのでは? そもそも、誰も気付いていなかった、というのもあるが、いくら近海最大勢力といっても、まさか王城にまで侵入を許すとは、普通誰も思わないだろうし」


 そう考えると、少し不思議だ。

 確かに、戦力の大半は海に出ていた。

 残った戦力が少ないのは確かだが、だからといってまったくないという訳ではない。

「ドゥラーク海賊団」の方も、数という意味では大半は陽動に回していた訳だから……いくらなんでも侵入速度が速過ぎないだろうか?

 まあ、確かに大幹部以上は強か……癖は強かったが、だからといって、あんな一気に侵入できるとは思えない。

 となると……協力者が居たのか?

 飛躍し過ぎかもしれないが、居ないと断定するより前に調べた方がいい気がする。

 居る、と判明してからでは遅いかもしれないし……と考えていると、オセアンさんが頷く。


「今、アルム殿が何を考えているのかわかります。女王陛下としても同じ考えに至っていますので、今裏切り者が居なかったか調査しています」


 行動が速い――いや、グラスさまなら納得だな。


「それで、本日ここに来られたのは、報酬の件ですか? 既に自力で女王陛下とお会いになって、懇意になっているようですので何か別の」


「ああ、それがあったな。まあ、それはあとで。今は海の方の戦闘についても、どうなったのかわかれば聞きたいんだが?」


「わかりました。では、私のわかる範囲でしたらお教えします」


 という訳で教えてもらった。

 まず、王都と王城の方はもう落ち着きを取り戻しているが、綿密な調査はまだ継続中で、今のところ隠れ潜んでいる海賊は見つかっていない。

 見つかるか、居ないと判断されるのはもう少しあとになる。

 海の方での戦闘も既に決着はついているそうだ。

 元々戦力として数も質も圧倒しているのだから、当然と言える。

 ただ、まだ調査から戻って来てはいない。

 報告のために一部が戻って来ただけで、大半は「ドゥラーク海賊団」壊滅による後処理で残っている。

 その中には、食料狙いで襲われていた島々も入っていた。

 わかっている範囲ではそこまで被害を受けていないそうだ。

 多分、青緑の海(エメラルドオーシャン)のおかげだな。

 あとわかっていることは、近海最大勢力である「ドゥラーク海賊団」がなくなったことで、海に平和が訪れたということ。

 まあ、他にも海賊は居るし、その内新たに現れるだろうから完全ではないし、一時のことではあるが。

 とりあえず、「ドゥラーク海賊団」に関してはもう終わりと思ってもいいかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ