三度あることは四度……
お土産に巨大タコとイカのこんがり焼けた足を渡す。
普通であれば出すことはできない。
何しろ、元が山のように巨大なタコとイカの足の一本なのだから。
その分、足一本でも大きいのだ。
だが、ここはラビンさんのダンジョンのボス部屋。
さすがに本体は無理っぽいが、足一本くらいなら余裕で出すことができた。
また、海産物であることに間違いはない。
なので、すごく喜ばれた。
駄目になる前に消費できるかな? と思ったが問題なさそう。
カーくんがバクバクと食べているし、ラビンさんによると保管でも消費でもなんでもできるから問題ない、と言われた。
任させて大丈夫そうだ。
ふと、気になったので、巨大なタコとイカによる質問をここでしてみた結果、母さんとカーくんはタコ、ラビンさんとリノファはイカ、だった。
無のグラノさんたちは、アブさんと同じく味覚がないため、不参加。
俺が引き分けなので……いや、結果変わってないな。
中々難しい質問である。
巨大なタコとイカの悩みが増すというか、決着はまだまだつかなさそうだ。
―――
早速、戻ってきた理由をみんなに話す。
一緒に受け継ぐことができるかどうか確認してもらったが……問題なかった。
「うむ。大丈夫じゃ、受け継ぐことができる。漸く、普通くらいにはなったの」
貧弱から普通になったか。
無のグラノさんの言うように、漸く、という思いが強い。
「それで、水属性を希望しておったが……リタ」
「私はいつでも構いません」
「なら、アルムも疲れてはおらんようだし、早速受け継がせるか。練習も必要だしの」
お願いします、と頷くと、水のリタさんが胸を張る。
「これで、アルムにバレてしまいますね。私の胸がバインバインだということが」
『………………』
誰も肯定しなかった。
「ハッハッハッ! お前がバインバインって、そんな訳ねえだろ!」
いや、一人――火のヒストさんが笑い出し、水のリタが黙って鉄拳制裁。
誰もとめないのは、慣れた光景というか、いつものことだからである。
でも、やり過ぎるとお互いの骨が砕けることになるので、ほどほどでとめないといけない。
―――
早速、ラビンさんに線で繋がった二つの魔法陣を用意してもらう。
「それじゃあ、リタはこっち。アルムくんはこっちね」
指示された通りの位置に立ち、早速始まる。
ラビンさんが鼻歌を歌い出し、そのまま何かがあるように空中で両手を動かしていく。
まず、水のリタさん側の魔法陣が輝き出し、時が経つと輝きは収まっていき、その輝きが集まった発行体が繋がっている線を通ってこちらへ。
こちら側の魔法陣が輝き出し、何かが俺の中に流れ込んでくる。
腹部の辺りが熱を持ち、頭の中に何かが刻まれていき――俺は水のリタさんの人生を駆け抜けていく。
やっぱりというか、どれくらいの時間が経過したのかはわからない。
気が付けば魔法陣の輝きは消え、確かな実感として俺の中に新たな記憶と魔力がある。
――俺は、水のリタさんの魔力と記憶を受け継いだ。
「大丈夫? アルム」
水のリタさんが心配そうに尋ねてきたので、大丈夫だと頷きを返す。
そして、動く。
「水」
「それはいいから」
いつの間にかこちらに来ていた水のリタさんに、水属性魔法のお披露をとめられる。
いや、これから俺の見せ場なのに。
「不満そうな表情を浮かべていますが、どうせ失敗するのですから、構わないのでは?」
……ま、まあ、これまで最後まで成功したことはない。
それは事実だ。
けれど、それで諦めてはいけない。
諦めていい理由にはならない。
次こそは成功してみせる、と挑戦し続けることに意味があるのだ。
その結果が、成功に繋がるのである。
「意気込むのは結構。まあ、それはあとで好きなようにやってください。それよりも先に、アルムは皆に告げないといけないことがあります」
「え? 皆に? 告げないといけないこと?」
……何かあったか?
特にないと思う。
いや、風のウィンヴィさんにはあるが、皆に、となると別に……。
お土産も渡したし。
思い当たらず首を傾げると、水のリタさんが仕方ないと答えを教えてくれる。
「いいですか、アルムが言うべきことは一つ。私の記憶を得た以上、私の容姿もわかるということ。特にヒストにはきちんと教えてやってください。さあ、言ってやりなさい、アルム。私は、ボインボインだということを」
水のリタさん以外の視線が俺に向けられる。
どうなの? と。
「………………まあ、そういう記憶があるにはあるが、でもこれ」
「それで結構です。どうです? アルムもこう言っていますし、私がボインボインのバインバインであることは証明されました」
ふんっ! と自信満々という風に胸を張る水のリタさん。
皆の視線はどこか懐疑的だ。
まあ、俺が何か言おうとして口止めしたから仕方ない。
ちなみに何を言おうとしたかといえば、不正というか……いや、涙ぐましい努力か。
水のリタさんが水属性魔法で胸とお尻を大きく見せていた、というモノ。
しかも、風邪をひかないように温水にして、その時の服は耐水素材という徹底振り。
ここまで変えると別人では? と言いたくなるような記憶もある。
……でも、これは見方を変えれば、そのような状態を維持し続ける訳だから、それだけ卓越した魔法操作技術と言えなくもない。
少なくとも、俺には無理だ。
何しろ――。
「……冷たい。……ハックション!」
水属性魔法が使えるようになった披露をしたが、結局失敗してずぶ濡れで終わったからだ。
……練習しよ。




