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賢者巡礼  作者: ナハァト
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状況的にそう見える場合もあるかもしれない

 下に下りると、漸く俺を認識してくれた。

 騎士たち、騎士たちに守られている人たち、海賊たち――全方位から敵意を向けられる。

 敵意を向けてこないのは、現在戦闘中の方たちだけ。


「な、何者だ!」


 騎士の一人が俺に剣の切っ先を向けてそう言ってくる。

 俺としては少し前から居たのだが、向こうからすればいきなり現れたようなモノだ。

 驚くのはわかる。

 しかし、悲しい気持ちになるのでやめて欲しい。

 ただ、答える言葉は決まっている。


「通りすがりの凄腕魔法使いだ」


「ふざけたことを。敵だな」


 剣の切っ先を向けてくる騎士の敵意が強くなった。

 ついでに言えば、さらに騎士の数が増える。

 何故そうなる?

 というか、俺に構うのではなくて、海賊の方を構えよ。

 それに、俺と海賊と比べた場合、明らかに海賊が敵だと思うのだが?

 ……そんなに怪しく見えるかな?

 竜杖にドラゴンローブ……うん。どこからどう見ても凄腕魔法使いにしか見えない。

 怪しい要素は一切ないが?

 だが、騎士たちの俺を見る目付きは厳しい。


「怪しげな魔法使いだ! 総員、気を付けろ!」


「「「おう!」」」


 見解の相違が見受けられる。

 けれど、それを正す暇はない。

 海賊たちが待ってくれる訳がないのだ。

 騎士たちが俺に注目している隙を突いて、今にも襲い――かかって……きていない?

 海賊たちも、俺を怪しむように見ていた。

 どう扱えばいいのかわからないようだが、その中の一人と目が合う。


「やめろ。こっち見んな。同類だと思われるだろうが!」


「どういう意味だ、こらあ! 『緑吹 振るわれるが目に見えず あらゆるモノを断ずる 鋭き一閃 風刃(エアブレイド)』」


 勢いのままに風属性魔法を発動。

 気持ち的には燃え上がる心を表すように火属性魔法でいきたかったが、それをやると間違いなく王城大火事……で済まない気がするので、風属性魔法にしておいた。

 もちろん、気持ち分が上乗せされているので、風の刃ではなく風の大刃となっているのは当然と言えば当然である。

 ただ、燃え上がったままで放つのがよくなかった。

 狙いが海賊たちから外れ、海賊たちの足元付近の床に着弾。

 小さな風の刃であったり、威力が弱かったりすれば、跳ね返ったり、爆散したりしたかもしれないが、大きくて威力の高い気持ちの入った風の大刃である。

 そのまま床を貫通するように斬って、あとに残ったのは線引きしたような跡だった。


『………………』


 俺の周囲は沈黙して静まるのだが、どこか遠くの方では戦闘音が響いている。

 思いっ切り狙いを外した……いや、違う。


「死にたくなければ、その線を越えないことをオススメする」


 パチン! と指を鳴らして、そう言う。

 良し。これで失敗は挽回された。

 いや、挽回じゃない。

 元々そうするつもりの魔法だったのだ。


「はあ? 何言ってんだ、お前!」


「失敗したくせに! こいつ、へっぽこ魔法使いだぞ!」


「やれやれ! 俺たちにたてつく敵なら殺してしまえ!」


 海賊たちが風の大刃で作った線を容易に越えてくる。

 そんな海賊たちに言いたいことがある。


「失敗ではない! それと、へっぽこではなく凄腕だ!」


 あれだ。さすがに怒るぞ、俺でも。

 少なからず感じている怒りのままに体に魔力を流して身体強化魔法を発動。

 竜杖を構え、俺に襲いかかってくる海賊の一人に狙いを定める。

 海賊が振るう剣をかわして、竜杖を思いっきり振る(フルスイング)

 振り抜くと同時に海賊は飛んでいき、天井、床、壁と何度かバウンドしたあと、床にべしゃりと倒れて沈黙する。

 俺はゆっくりとその海賊を指差し――。


「わかったか! こうなる!」


「「「いや、魔法使えよ!」」」


 海賊たちだけではなく、騎士たちの方からも同じ言葉が聞こえた。

 え? 身体強化魔法を使ったのだが?

 ……そういうことではないのかもしれない。

 それなら、と今度はわかりやすく魔法を使って海賊たちを倒していく。

 もちろん、火属性、光属性だと被害が王城にまで及ぶので、風属性魔法で――それも、きちんと気持ちを上乗せしていない、制御されたモノを使う。

 それでも充分な威力だった。

 普通の風の刃なだけで、海賊たちの武器を裂き、その体にも充分な裂き傷を与えることができる。

 偶に身体強化魔法で蹴り飛ばしもした。

 そうして海賊たちだけを相手にしていると、俺が味方とわかったのか、騎士たちも参戦してくる。


「今だ! こちらも攻めて一気に決めるぞ! だが、あいつには迂闊に近付くな! 胡散臭い魔法使いだ! 警戒は怠らないように!」


 騎士の一人がそう言い、他の騎士たちが頷く。

 ……味方とは思ってくれていなかったようだ。

 というか、胡散臭いってどういうことだ。

 あの騎士が取り纏めている隊長、あるいは団長と思われるが……あとで個人的に話し合う必要があるかもしれない。

 とりあえず、今はこの状況をどうにかしないといけないと判断して、海賊たちの相手をする。

 魔法と身体強化魔法である程度の数を減らして、あとは騎士たちだけで大丈夫だろうと判断できたところで、まずは女王さまの援護に向かう。


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