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賢者巡礼  作者: ナハァト
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気になったから確認するのは当たり前

 ドレア任せになってしまうが、それでも王城の二階に女王の姿はなかった。

 もちろん、すべてを見た訳ではないが、時間をかけてもいいことはないので、一階へと下りる。

 聞こえてくる音が一気に変わった。

 どこからでも戦闘音が聞こえてきて、その激しさを物語っている。

 ドレアと自然と顔を合わせ、頷く。

 ここなら居そうだ――と思ったところで、通路の先にアブさんを見つけた。

 あっちあっちと、さらなる通路の先を指し示している。

 今現れたということは、どうやらアブさんも探すのに手こずっていたようだ。


「こっちだ!」


 俺は確信を持って――というよりは、アブさんを信じて駆け出す。


「いや、おい! 急にどうした! というか、道わからないだろ!」


「いいや、大丈夫だ! 信じろ!」


「……いいだろう。なんか確信しているようだし、信じてやるよ!」


 ドレアが俺のあとに付いて駆け出す。

 細かいところを追及してくれなくて助かる。

 まあ、あとで教えろと言われそうだが、その時は風のウィンヴィさんのことも纏めて話すか。

 ……アブさんが退治されないように気を付けないと。

 そうしてアブさんの指し示す方向に進んでいく。


「一つ聞きたいが、いいか?」


「なんだ?」


「……あの、大幹部ってのは他にも居るのか?」


「大幹部か? いや、居ないな。幹部は他にも居るが、大幹部と呼ばれているのはあいつらだけだ」


「そうか」


 まだ居るのかと思ったが、ホッと安堵。

 いや、油断はできない。

 大幹部でアレなのだ。

 あそこまでとは言わないかもしれないが、幹部も似たようなモノかもしれない。


「だが、副船長も似たようなモノだ」


 ドレアの言葉で転びそうになる。

 居るのか、まだ!


「ああ、それと船長も居るだろうな。間違いなく」


 さらに上が! ……いや、確かにそうだ。

 船長が居て当たり前。

 大幹部たちの存在感が強過ぎて、その存在が抜け落ちていた。

 あの大幹部と似たような副船長を従える船長……まともであるはずが……いや、まともであるからこそ従えることができている、はず。

 そうであることを切に願う。


「ちなみにその船長というのは――」


 どのような者か尋ねようとしたところで通路の角を曲がると、徐々に大きくなっていた戦闘音が一気に大きくなる。

 同時に、視界に映るのは海賊たちが大きな扉の中に駆け込もうとしている様子。

 ただ、中で激しい抵抗にでも遭っているのか、駆け込もうとしても中々駆け込めないようだ。

 この中だとアブさんが指し示して、壁をすり抜けて中に入っていった。

 あとは俺とドレアも入るだけだな、と進むと、当然相手も気付く。


「おい! 新手だ!」


「こっちにも敵だ! 警戒しろ!」


「騎士か!」


「いや、騎士ではないが冒険者かもしれない!」


 海賊たちが警戒を強め、それぞれ武器を構える。


「死にたくなけりゃ、かかってこいや!」


 威勢のいい海賊がそう言い、他からも似たようなことを口々に言ってくる。

 乱暴な言葉が多く、中にはドレアの姿――女性が居るとわかるや、「裸に剥いてやる」や「存分に楽しませてもらう」といったことまで言い出し、ドレアがキレそう……いや、キレているな。

 まあ、その怒りはごもっともだが、今は俺が先に進んでいるので、仕掛けるのは俺だ。


「そっちこそ、死にたくなければどけ! このまま押し通る! 『緑吹 振るわれるが目に見えず あらゆるモノを断ずる 鋭き一閃 風刃(エアブレイド)』」


 風属性魔法を発動。

 通路の上から下まで、左から右まで、隙間なく風の刃を乱射する。


「ぎゃあ!」


「うわあ!」


 風の刃を食らい、痛みから悲鳴を上げる海賊たち。

 中には避けようとするのも居るのだが、大きいとはいえここは通路でしかなく、そこに海賊たちが大勢集まっていたのだから避け場なんてあってないようなモノ。

 通路に居た海賊たちは風の刃をもろに何度も食らい、阿鼻叫喚の絵図となった。

 呻く海賊たちの間を縫って進み、起き上がろうとする海賊はドレアが海神の槍で叩き伏せる。


「ドレア! 先に! 魔法で進んでもいいが、下手に魔法を放つと被害が出る!」


 基本、俺の魔法は威力過多なので通路で問題ないが、室内だとその中に居る人を敵味方問わずにやってしまう可能性が大いに高い……というか、そうなるのはほぼ間違いない。


「任せろ!」


 ドレアが前に出て、海神の槍を振り回しながら大きな扉の中へ入っていく。

 離れないように付いていき、大きな扉を越えて中へ。

 中は――広大な空間だった。

 多分、ダンスホールだろう。

 色彩豊かな造りで、天井には豪華絢爛といった灯具が設置されている。


「どけどけえ!」


 ドレアが周囲の海賊を倒しながら進み、最後は跳躍して飛び越える。

 ……俺のこと、忘れていない?

 身体強化魔法でもいけるが、その先がどうなっているかわからないので、仕方ないと竜杖に乗って飛ぶ。

 幸い、ここは三階まで吹き抜けていて天井が高いため、問題な――あぶなっ! 灯具に当たりそうになった。

 ただ、上がったことで状況がよく見える。

 ダンスホールの奥に貴族や文官のような戦闘が行えないような人たちが集まり、その周囲を騎士たちが守りながら海賊たちと戦っていた。

 その中の一人――海を思わせる蒼い長髪の女性が、その手に持つ剣で海賊を斬りながらドレアに声をかける。


「ドレアか!」


「待たせたな! グラス!」


 ドレアがその女性に向けてニッと笑みを浮かべる。

 どこぞの英雄みたいでカッコいいと思った。


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