自業自得な時もある
『ドゥラーク海賊団』の大幹部の一人――『クッコロスキー』はドレアと女性騎士三人によるフルボッコを受けて倒れた。
一応生きているというか生かしているのだが、大幹部である以上、色々と情報を知っているだろうから吐かせるために、という判断である。
何がなんでも吐かせます。吐いてもやめません。と女性騎士三人が酷薄な笑みを浮かべていたので、俺には想像も及ばないキツい尋問が行われることだろう。
自業自得である。
あとは任せてください、という女性騎士三人をこの場に残し、俺とドレアは別のところへと向かう。
戦闘音が方々から聞こえるが、まだ見つかっていない可能性もあるため、一部屋ずつ確認していく。
といっても、扉を開けて気配があるかどうかだけだが。
そうして王城内を進んでいると、突然前方にある扉が開き、中からメイドが五人飛び出すようにして現れた。
何かから逃げているような感じなので、隠れているところを見つかった、とかだろうか。
「メイド……まさか……」
ドレアの呟きが俺の不安を煽る。
メイド五人は俺とドレアの姿を見つけると、こちらに逃げてきた。
「た、助けてください! 変な人が!」
それだけで十分だったのか、ドレアが海神の槍を構える。
俺も竜杖を構えた。
すると、メイド五人のあとを追うように、金髪の男性が現れる。
「うひょひょひょひょひょ! どこ行くのかな? メイドちゃんたち! 俺に捕まえて欲しいってことかな? ほおら、早く逃げないと捕まっちゃうよお~! 捕まっちゃうと……うひょひょひょ!」
風貌的に海賊だと思われるその金髪の男性が、手をワキワキしながらメイド五人を追いかけ――俺とドレアの姿を見て動きをとめる。
メイド五人は俺とドレアを盾にするようにして、背に隠れた。
「ああん? なんだ、てめえら。俺のお楽しみの邪魔をしてんじゃねぇよ!」
先ほどとは違って剣呑な雰囲気を出す金髪の男性。
腰に両手を回し、ナイフを取り出して投擲。
狙いは俺とドレアの二人。
「ひっ!」
俺のうしろに隠れていたメイドの一人がドラゴンローブを引っ張る。
それで体勢を崩した――ことでナイフが素通りしていく。
結果的に助かった。
でも、怖いというか危ないから、次はやめて欲しい。
ドレアの方は海神の槍で払い落したようで、そのまま前に飛び出す。
「邪魔者は死ねやあ!」
感情剥き出しのドレアが海神の槍を振るうが、金髪の男性は巧みな身のこなしで回避。
どうやら身体能力がかなり高いようだ。
ドレアのうしろに隠れていたメイドたちがこっちに合流して、俺を前面に出す。
盾としての性能を期待されても困るのだが。
金髪の男性とやり合っているドレアに対して、俺は意を決して尋ねる。
「一応聞くが、そいつもなのか?」
「ああ、そうだ。『ドゥラーク海賊団』大幹部の一人――ブレイだ!」
「ああん? メイドでもないくせに俺の名前を気安く言って……ああ、誰かと思えば、お前『青緑の海』の船長か。てめえらも全員メイドの恰好をすりゃ、俺が遊んでやるのによ」
ドレアがゾワッと震え、海神の槍を振る速度が上がる。
「メイド、メイドと……気色の悪い」
回避する金髪の男性。
「そんなのは当たり前だろうが! 俺はよ、メイドに囲まれて生きていきたいんだよ! 毎日毎食、飯が美味しくなるように魔法をかけてもらって、『は~い、お口開けてくださ~い。あ~ん』て言いながら食べさせてもらいたいんだよ! 他にも色々とお世話して欲しいんだよ!」
思っていたよりも酷いな。
特に、言って欲しいというところを自分で言うのが……実際にメイドに言われると違うかもしれないが。
ドレアとメイド五人は嫌悪感丸出しである。
そんなドレアとメイド五人に気付かずに、金髪の男性は続ける。
「それと、『青緑の海』の船長。俺はブレイじゃねえ。『メイドグルイ』って真名が」
「『白輝 天から隠れることはできず 悪逆に対して 裁きを下す光柱 断罪光』」
頭上というか真上からの攻撃は気付きにくいのか、金髪の男性は頭上に魔法陣が描かれたことに気付かず、そこから降り注いだ光輝く柱をもろに受けた。
「ぎゃあああああ!」
時間にして数秒。
光輝く柱は消え、残ったのは焼け焦げ倒れた金髪の男性のみ。
「よくやった! アルム!」
そう言ったドレアが金髪の男性に対して海神の槍を上からぺしんと叩き付ける。
いつの間にかメイド五人も前に出ていて、ドレアと一緒に金髪の男性をフルボッコ。
悪は去った――と、一人のメイドが晴れ晴れとした笑みを浮かべていた。
やっぱり、メイドって怖い。
―――
『ドゥラーク海賊団』の大幹部――『クッコロスキー』と『メイドグルイ』を倒した。
メイド五人に関しては、どうしようかと思った時に『クッコロスキー』を連行していた女性騎士三人が現れたので、任せることにする。
情報交換をしていたので、多分大幹部二人は更なる追い打ちを受けそうだ。
まあ、自業自得だろう。
再び探索を始め、時折海賊とやり合っている騎士たちを助けつつ、先へと進んでいく。




