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賢者巡礼  作者: ナハァト
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気付けば目の前にある、もしくは居る

 ハーフェーン商会が海賊団――確か、近海最大勢力という「ドゥラーク海賊団」とことを構えるという。

 でも、不思議ではない。

 仮にも、今回相手にして捕らえて事実上潰したのは、その海賊団の第三船団なのだ。

 ハーフェーン商会を目の敵にしているのは間違いないだろうし、これで何もない――何も起こらないと考えるのは楽観的過ぎる。

 向こうも黙っていないだろうし、狙われ続けることになるだろうから、それならば――ということなのだろう。

 なので――。


「わかった。協力しよう。そうするのが一番話は早そうだ」


 既に事態は動き出しているようだし、別の商会のちょっかいや、この国の王と会うのにハーフェーン商会を経由するのがもっとも早い手段だろうから、そのハーフェーン商会に恩を売れる訳だし、協力すればこちらの願いも早く叶えてくれるだろう。


「ありがとうございます。こちらもアルム殿には全力で協力させていただきます」


 ハーフェーン商会代表のオセアンさんが頭を下げ、次いでマレハダさんとジェリさんも揃って頭を下げた。

 ただ、気になることはある。


「しかし、どうやってやり合うつもりだ? ここは商会だろう?」


「もちろん、私たち自体には戦う力はありません。商会で雇っているのも護衛であって戦闘集団ではありません。ですが、こう見えて顔はそれなりに広いですから、国軍、それと冒険者にも依頼を出して動くように動いています。何しろ、相手は近海最大勢力ですから、こちらも相応の数を揃えないといけません」


「まあ、そうなるよな。随分と話が進んでいるようだが」


「ええ、お察しの通り、元より話は進んでいました。近海最大勢力なんて海賊団を野放しにするは国の恥ですから。それを前倒しにしただけです」


「なるほどな。それで、協力といっても俺は何をすればいい? マジックバッグによる補給か?」


 空を飛べば、港から戦場まであっという間に行けるだろうし。

 大勢が動くとなると、補給はまさに生命線だ。


「それもありますが、今回は戦力として期待しています。マレハダから聞きました。一度で状況を一変させるだけの大魔法を平気で放っていたと。それに近海最強の海賊とも渡り合っていた、というのも」


 魔法は……あのミスった風属性魔法のことか。

 ふう……いいように伝わったようで良かった。

 少なくとも失敗したと、捉えられていないようでホッと安堵する。


「……それは別にいいが……近海最強の海賊?」


「はい。海賊団『青緑エメラルドオーシャン』の船長――ドレアは近海最強の海賊として名が通っています」


 それは――考えてみれば、別に不思議ではない。

 何しろ、海神の槍を使えるのだ。

 海で敵なしと言っても過言ではない。


「それで……早速協力していただきたいことがありまして……そのお力を見込んで」


 ……この話の流れ。嫌な予感がする。

 急用ができた。腹痛でちょっと。急いで両耳を両手で塞ぐ。

 どうするかを悩んでいる内に、オセアンさんがハッキリと言う。


「海賊団『青緑エメラルドオーシャン』の協力を取り付けてもらえないでしょうか?」


     ―――


 オセアンさんの話によると、基本的に海賊団「青緑エメラルドオーシャン」が誰かに従うことはないらしい。

 普通にお願いしようにも、まず話を聞いてもらえるかどうかもわからないそうだ。

 なら、無理。

 と思うが、俺の場合は違うらしい。

 その理由は、海賊団「青緑エメラルドオーシャン」の船長であるドレアが、俺の名を聞いたことが関係している。

 簡単に言ってしまえば、どのようにかはわからないが、ドレアが俺を認めているそうだ。

 それで、認めている俺からならば、話を聞く可能性が高い、と。

 そんな訳……と思うが、オセアンさんも可能であればという希望的観測によるモノらしいので、上手くいけばいいし、駄目なら駄目で仕方ないと割り切ることができるそうだ。

 少なくとも、敵に回って欲しくはない、という感じだった。

 ただ、これは俺にとっても好都合である。

 ドレアとは、誰にも聞かれない話をしたかったのだ。

 その機会があるかもしれない。

 なので、この話を受けたのだが――気になることが一つ。

 話を受けた際、オセアンが元々渡されていた海図に印を付け、「この島に行けばドレアと会うことができます」と言ってきたのだが……。


「どうして場所を知っていると思う?」


 一度宿に戻ったあと、アブさんに疑問に思ったことを尋ねてみる。


「それだけ有名――と考えるのは無理があるな。海賊のような存在が、その住処を、拠点を知られているというのは、そのまま弱みとなる。まあ、あの槍の力であれば、それでもすべてを薙ぎ払らえるかもしれないが……少なくとも気は休まらないな。某はごめんだ」


 いや、ダンジョンマスターもその場所は知られているようなモノだと思うが。

 ダンジョン最下層に居るのは間違いないだろうし。

 それとも、徘徊型ダンジョンマスターとか居るのだろうか?

 ……いや、目の前に居たな。


「どうした? 某の顔に何か付いているか?」


「いや、なんでもない。となると、あとは裏で繋がっているかもしれないってことだが……まあ、いいか。どちらにしろ、ドレアに聞きたいことがあることに変わりはない」


 そう判断して、この話は一旦終わらせ――翌日。

 海図に記された場所へと向かう。


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