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賢者巡礼  作者: ナハァト
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情報通が多い(個人的見解)

 海洋国・シートピアの王都・ポートアンカー。

 風のウィンヴィさんの故郷であり、その時よりも発展している。

 記憶の中の王都・ポートアンカーは港と一体化した大都市だった。

 けれど、今は違う。

 港と都市部は大きな壁によって分割されていて、どちらもより大きく発展している。

 元の1.5倍くらいだろうか。

 記憶の中と変わらないのは、王城くらいである。

 まずは近くに下りて、どうするか考える。

 王都・ポートアンカーに入るための門は二つ。

 都市部の方に入るのと、港部の方に入るのとに分かれている。

 正確にはもう一つ都市部の方には貴族用の門があるが、そこは関係ないから除外。

 といっても、結局はどちらも行く予定なので、どちらを先に行くか、でしかないが……今は昼に近い……港部から行こう。

 新鮮な海産物でお昼ご飯だ。

 港部の門から中に入る。

 いつも通り商業ギルドのギルドカードを提示して中に入ろうとしたが――。


「え? 商業? 本当に?」


 と、ギルドカードを確認した門番の一人が首を傾げる。

 あっ、もしかして商人に見えないとかだろうか。

 確かに、竜杖やドラゴンローブの装備品以外は全部マジックバッグに入れているので、一見すると商売品のような物は何も持っていない。

 まあ、元々商売品は何も持っていないが。

 それなら、冒険者ギルドのギルドカードの方がいいだろうか? と思った時、「どうぞ、お通りください」と少し丁寧に通された。

 意味がわからない。

 何もないならそれでいいが。

 王都・ポートアンカーの人の多さに慣れず、空中へと避難しているアブさんに視線を向けると、アブさんも意味はわからないと首を傾げていた。

 そうして中に入った港部は、非常に広い。

 下手をするとここだけで他国の都市くらいはありあそうだ。

 船の発着場には多数の船が出入りし、多くの荷が下ろされ載せられ行ったり来たり。

 倉庫もたくさん立ち並び、都市部寄りになれば住居や商業施設も見られる。

 ただ、港部でもっとも大きい建物は――造船所だ。

 ここは国営であるために入ることはできない――一般立入禁止である。

 という話を、焼き貝と少し辛味の効いたソースを絡めたパスタを食べながら、港の方にあった「新鮮な魚介類を食べたいならココ!」と看板が掲げられた食堂のおばさま相手から聞いた。

 話し好きの看板娘である。


「いやだね、看板娘だなんて。何時の話をしてんだい、まったく」


 そう言って、おばさまは追加で揚げた魚と野菜を挟んだパンを無料でくれた。

 満更でもないようだ。

 ただ、さすがに無料ではと思うが、試作品なので味の感想が欲しいらしい。

 そういうことならと食べる。

 濃厚なソースが絡まっていて……うん。美味い。

 ついでに、お昼前のちょっとした空いた時間帯だったので、そのまま王都・ポートアンカーについても話す。

 やはり、というか、ここでも海賊は出ているようだ。

 といっても、まんま沖合にではなく、王都周辺の海を狩場にしているようで、王都の港に寄港する船を狙っているらしい。

 沖には大小様々な島群が存在しているので、その辺りに海賊の根城がある――のも間違いないそうだ。

 というのも、何度も国軍が動いて海賊討伐に出ては島群で根城を発見して潰している。

 けれど、時間が経てばまだ海賊は現れる――の繰り返しとなっている、とのこと。

 何故繰り返しているのかは、理由もわかっている。

 おばさまでも知っている話で、隣国が絡んでいた。

 何しろ、普通の盗賊と違って海賊には船が必要なのだから、そんな何度も現れる訳がないのだ。

 その理由とは、評判の悪い隣国にも海はあるが港を設置できる数は少なく、また、王都・ポートアンカーほどの巨大な港は無理であるため、そこら辺を欲して――という、そこらに転がっていそうな一方的なモノだった。

 それで海賊を寄こしてまでとか……面倒な話である。

 下々にはいい迷惑なので、仲良くするか、その国が潰れればいいのに――と思う。


「まったくもってその通りだね」


 おばさまが賛同してくれた。勝った。

 王家については……まあ、さすがのおばさまもそこまではわからない。

 ただ、噂が一つあって、王家は何かを探し続けている――らしい。

 さすがのおばさまでも知らないことだが、俺は何を探しているのか見当が付いていた。

 風のウィンヴィさんの記憶の中に、その答えがある。

 しかし、それを口にできる訳もなく、代わりに別にことを聞く。

 話を聞いていて思ったのだ。


「海賊の被害がない――訳はないだろうから、他のところと比べて比較的軽微な被害のところってない? たとえば、どこかの商会とか?」


「商会? そうだね……大体どこも似たり寄ったりだと思うけど……いや、そういえば、あそこはまだ一度に大きな被害を受けたと聞いた覚えがないね」


 おばさまに隠し事はできないかもしれない。


「それは、なんて商会?」


「『イレート商会』だよ」


 おばさまの話によると、他はこれまでに海賊襲撃によって一度に大きな損害を出したり、かなり高価なモノを奪われたりしたことがあると聞いたことはあるが、その――イレート商会だけは、海賊襲撃に遭ったことはあるものの、これまでそこまで大きな損害は出していない、そうだ。

 そんなわかりやすく――と思わなくもないが、一応憶えておこうと思った。


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