表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者巡礼  作者: ナハァト
17/614

悩んだ時は遡ってみるのも一つの手

 最初感じたのは、眩しさだった。

 人工的なモノではない。

 自然の光――暖かさを感じる陽の光だ。

 眩しさに視界が慣れてきたので、周囲を確認する。

 小さな部屋。

 床に魔法陣が描かれ、火の灯っていないランプと一枚の紙が置かれている台があって、その横の壁に肩掛けカバンがかけられていること以外、これといって特徴はない。

 窓からは雲一つない青空と木々が見えるので、森の中だと思う。

 まずは、一枚の紙を確認。

 最初に書かれていたのは、ここが世界最大ダンジョン――要は、ラビンさんのダンジョンだが、それがある中立国の国内にある森の中に、この小屋があるということだった。

 この小屋自体はかなり隠蔽に力を入れたようで、姿を隠す結界の中にあって、その周囲には道を迷わす呪いなど、色々と手段を用いているため、まず見つからないそうだ。

 それに、見つかってもこの魔法陣は俺専用で、魔法陣上で「転送」と言えば最下層の魔法陣と繋がって移動するような仕組みらしい。

 補足のように書かれているのは、他の者には使えず、無のグラノさんたちも挑戦してみたが駄目だった。

 非常に悔しがっていたことと、何事にもルールはあるってことだね、と記されている。

 ただ、そこで俺は疑問に思う。

 あれ? これって、俺も外に出たら戻れないんじゃ? だったのだが、そこも抜かりはなかった。

 渡された竜杖に「帰還」と囁けば、この小屋まで自動で飛んでくれるそうだ。

 ありがたいことである。

 あと、肩掛けカバンについても書かれていた。

 俗に言う「マジックバック」。

 見た目以上の容量のカバンで、時間停止まで付いている最上級品だそうだ。

 ただ、これは俺専用という訳ではないので、盗まれたりしないようにと注意書きがあった。

 そんなマジックバックの中には、当面の間の食料、回復薬一式、地図、着替え……それと、俺の母さんへのお土産まで入っている。

 念のため、確認。

 食料は食料で、お土産はお土産。

 着替えは今俺がドラゴンローブの中に着ているのと同じ物が二着入っている。

 計画的に洗濯しないとな。

 回復薬一式は、回復薬とか状態異常回復薬などが、それぞれ複数本用意されているのだが、一番の優れモノは地図かもしれない。

 初めて見るが、これは世界地図だと思われる。

 ただ、それだけではない。


「詳細」


 世界地図を手に取り、魔力を流しながらそう言うと、変化が起こる。

 世界が描かれていた地図が、俺を中心とした周囲一帯の現状の表示へと変わった。

 何故それがわかるかといえば、俺の名前が書かれている点が中心にあって、周囲に小屋と森が描かれているからだ。

 魔力を切れば、元の世界地図に戻る。

 こちらも注意点として、俺専用という訳ではないため、燃えるとかでなくなるとかはいいのだが、盗まれたりはしないように、と同じく注意書きされていた。

 あと、最後に「用事がなくても、顔見せだけでも来ていいから。困った時の相談でもいいよ。一人でできることも、一人で考えられることも、限界があるからね。それじゃ、頑張って」と書かれている。

 ありがたいことだ、と一枚の紙もマジックバックにしまおうとして気付く。

 裏面に何か書いてある。


 ――もし国の力が必要になったら、この国を頼ればいいよ。代々の国王とは友達だから――


 ………………。

 ………………。

 意味がわからない。

 いや、書いていることは読めるし、わかる。

 でも、代々の国王と友達ってどういうこと?

 ラビンさんって……もしかして、俺の想像以上にすごい人なのかもしれない。

 あっ、ダンジョンマスターだった。

 とりあえず、この一枚の紙も大事にした方がいいと思い、改めてマジックバックにしまう。

 マジックバック自体はドラゴンローブの中で肩掛けしておく。

 これで大丈夫だろうと、部屋を出た。

 出た先は小屋のリビング。

 キッチンと繋がっていて、他に机と椅子が置かれ、出入口と他の部屋に繋がっている。

 他の部屋を確認すると、寝室とトイレと風呂。

 ここで過ごすこともできるようになっているようだ。

 ……よし。ここを「ラビンさんの隠れ家」と名付けよう。

 緊急避難先とかで使えそうだ。

 そう決めたところで、外に出た。

 自然が溢れているからこその澄んだ空気が俺の鼻孔をくすぐる。

 視界一杯に広がる緑の森と大地。

 その隙間から差し込む光は輝き、俺の行く道を照らしているかのようだ。

 ……まあ、歩いていくのではなく、飛んでいくつもりだが。


「さて、それじゃ、いきますか」


 ………………世界地図を取り出して確認。

 あっちがアレで……こっちがコレだから……そっちがそうなって……確か、ラビンさんのダンジョンに来た道順を逆に辿れば……え? どっち………………ああ、わかった、わかった。

 行き先がわかったので、早速竜杖を使う。


「飛翔」


 言葉と共に魔力を流し、手放す。

 竜杖は地面に落ちず、空中に浮かんだままでとまる。

 恐る恐る立ったまま乗ってみるが、不思議と一体化しているかのような安定感があった。

 これなら落ちることはないだろう。

 この状態で、上昇・下降、前進・後退は俺の意思で動く。


「それじゃあ、出発」


 竜杖に乗って、大空へと飛翔する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ