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賢者巡礼  作者: ナハァト
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ボロボロになりました

 森の国・フォレストガーデンからラビンさんのダンジョンに戻ってから数か月経った。

 直ぐに別のところに出発しなかったのは、森の国・フォレストガーデンを危機に陥れたダグとの戦いの際、魔法がまったく通じなくなると、途端に何もできなくなる、ということを実感したからである。

 いや、まったくではないな。

 多少……少し……かなり……まあ、何もできない訳ではない……いや、現実を見よう。

 身体強化魔法は使える。

 しかし、魔力を注ぎ過ぎると体が付いていかない。

 ある程度までと瞬間的にであれば、使用しても筋肉痛にならないくらいにはなったが、そのある程度というのがまだまだ低いし、そもそも身体強化魔法はある意味最終手段に近い。

 魔法を主体で使う俺が発動するからこそ、相手の虚をつけるのだ。

 今の俺が無理なく使える身体強化魔法の魔力量は少ないし、使えると知られていれば充分に対応できるレベルである。

 魔法に関しても、完全とはいえない。

 気を抜けば、いつだって暴走だ。

 なので、次を受け継ぐためにも必要なことなので、しばらくここで鍛えることにしたのである。

 魔法の練習もそうだが、別の戦う手段として、杖術を習った。

 指導係はラビンさん。


「……ラビンさん」


「ん? なんだい?」


「ラビンさんができないことってあるのか?」


「そりゃあるよ。ボクにだってできないことが。そこまで万能じゃないよ」


 今のところなんでもできている印象なので、万能としか思えない。

 教え方も丁寧でわかりやすい。

 ただ、そんな直ぐ身に付く訳でもないので、まずは基礎からだ。

 何事も基礎が大事ということである。

 あと、心なしか、杖術を習い始めてから、竜杖の機嫌がいいような気がした。

 いや、それはおかしい。

 竜杖は杖。意思はない、はず。

 念のため、竜杖を用意してくれたラビンさんにも確認を取った。


「竜杖に意思? う~ん……そんなことはない、とは言い切れないかな。なんにだって可能性はある訳だし、絶対はない。アルムくんがこれまで通り大切に使っていれば、明確な意思表示みたいなことをするかも」


 なるほど。ゼロではない、と。

 何とも言えないが、機嫌が良さそうに感じるのなら、とりあえず今はそれでいいのでは? と思った。

 そして、この数か月の間に、光のレイさんに森の国・フォレストガーデンでの出来事を話して、最後にロアさんとルウさんに光のレイさんがスケルトンとなって生きていると教えたことを伝える。


「……そう。二人の反応は?」


「最初はピンときてなかったようだけど、どういう姿かはいい例が直ぐ傍に居たから、なんとなくどういう状態かは察することができたと思う」


「……いい例? ……ああ、そういうこと」


 アブさんと見れば、どのような状態かは直ぐわかるだろう。


「今は王都・ツリーフの復興で忙しいけれど、それが終われば会いたいってさ」


「……そう」


 スケルトンだから、どのような表情を浮かべているのかはわからない。

 けれど、発している雰囲気はどこか嬉しそうにしているので、教えたことは間違いじゃないと思う。

 まあ、ロアさんとルウさんはアブさんを見て忌避感を抱かなかったし、実際に光のレイさんを見ても大丈夫だろう。


「……ところでアルム」


「なんだ?」


「……ドラゴンローブに汚れは目立たないというかない。けれど中に着ているのは汚れがあるはず。ここは一つ、漂白に優れたワタシの洗剤を」


「さあて、そろそろ杖術の鍛錬の時間かな」


 逃げた。

 まわりこまれ――。


「逃がす訳にはいきません!」


「ほらほら、杖術の鍛錬でいい汗掻いているでしょ?」


 たのではなく、水のリタさんと土のアンススさんが立ちはだかった。


「……汗で汚れているのは間違いない。……さあ、洗濯の時間」


 背後に光のレイさんが立ちはだかる。

 しまった! 囲まれた!


「ア、アブさ~ん!」


 仲間を呼んでみる。

 ……現れなかった。

 でも、気持ちはわかるというか、女性陣スケルトン・レディースはまずアブさんのローブが汚れていると洗おうとしたのだが――。


「こ、これは汚れているのではなく、こういう色だから!」


 アブさんの必死の抵抗で断念。

 しかし、その時の女性陣が怖かったそうで、アブさんは男性陣メンズ・スケルトンとよく一緒に居て、ボードゲームに興じている。

 多分、今も。

 助けを求める声が聞こえているかわからないが、聞こえていたとしても助けに来たかどうか……いや、気持ちはわかる。

 状況把握している間に捕まってしまい、無理矢理脱がされて洗濯されることに――。

 無事に帰ってくるんだよ……と思っていると、洗濯先で爆発音が響く。


「……新しいの買うか」


 今までありがとう、衣服。

 これからよろしく、まだ見ぬ衣服。


     ―――


 杖術、魔法、身体の鍛錬はもう一月ほど続いた。

 一応、杖術に関しては基礎的な動きが身に付いた――と思う。

 ラビンさんも、まあ大丈夫だろう、と判断してくれた。

 けれど、杖術も魔法と身体と同様に継続が大事なので、怠けないように頑張っていこうと思う。

 なので、そろそろ次へと向かうことにした。

 次は、風のウィンヴィさんの故郷である国に向かう。

 アブさんと共に、みんなに見送られながら出発した。


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― 新着の感想 ―
[一言] 最近の洗濯って爆発を伴うのかぁ……
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