早い再会って偶にない?
それが誰で、どのような目的を持っているのかはわからない。
フードを深く被っているので、対峙していてもその容姿はわからないので、誰がどのようなという推測も立たない。
辛うじて、声から女性だとわかったくらいだろうか。
けれど、間違いなく俺に何かしらの用があるようだ。
とりあえず、向こうが俺をここに誘い込んだと思っているようだが、俺が自らここに来た、と訂正しておいた方がいいだろうか?
どうしたものかと思っていると、それは懐から短剣を取り出して構える。
「やあっ!」
「そこはまず何か目的とかを言うところではっ!」
いきなり襲いかかってきた。
誰だか知らないが、
それは殺意があるのかないのかわからない様子で、短剣を振ってきた。
何かしらの術を学んでいるのか、振り筋はしっかりとしている。
――即座に判断。
魔法は周辺被害が間違いなく起こる。
竜杖に乗って空に逃げるという手もあるが、ウッドゲートに居る限りはまた追われるかもしれない。
向こうは完全に俺に狙いを定めているし、その理由を知りたいところだ。
……となると、ここは相対してみるか。
即座に体に魔力を流して身体強化し、対応する。
振るわれる短剣を上昇した身体能力で無理矢理回避しつつ、声をかける。
「何が、目的だっ! 襲われる、憶えはないっ!」
「そんな人の身で持ちえないような魔力を持っていながらよく言う!」
魔力? 魔力が関係しているのか?
というか、それがわかるというのか?
「それに、お前の魔力には憶えがある! 混ざり合っているようだが、その一つは間違いなく……」
「間違いなく、なんだ?」
「それを確認するためにも、まずは捕らえる! 多少は痛い目をみてもらうわよ!」
「何故そうなる! 普通は先に言葉を交わすだろ!」
「素直に話すとは限らないからな! だから力関係をわからせて素直に口を割るように先にしばく!」
「しばくで済まないと思うが!」
斬り刻むの間違いでは? と思う。
出会ったことのない、目の前の人物の関係者が今直ぐ出てきてげんこつの一つでも落としてくれないだろうかと本気で願う。
確かなのは、今のところ、こちらの話を一切聞くがない、ということか。
ただ、理由もなくやられるほどお人好しではない。
それに、そっちの理屈に合わせるのなら、力関係をわからせて素直に話させるのは、こっちでもいい訳だ。
まずは短剣を叩き落として、あとは――。
「あっ! ここに居ましたか! 大変な事態が起こりました! 直ぐに協力してください!」
行動を起こそうとする前に、新たに人が――人たちが現れる。
俺に襲いかかってきた者と同じようにフードを目深に被っているのが二人に、兵士のような装いをしているのが五人。
フードを目深に被った二人が俺に襲いかかってきた者に話しかけ始める。
明らかに、あちらの関係者で、仲間。
それと、兵士たちの中に、つい先ほど色々聞いた三十代の兵士さんが居た。
「「……あっ」」
お互いにお互いを指差し、一言。
「えっと、どういう状況?」
「それはこっちが聞きたいんだが」
お互いに困惑である。
すると、フードを目深に被った者たちの話が終わったのか、襲いかかってきた者が兵士たちにお願いする。
「そいつには色々と聞きたいことがあるから、捕らえておいてください」
兵士たちが即座に俺を取り囲み、身構える。
その中には、もちろん三十代の兵士さんも居た。
「悪いな。兄ちゃん。できるだけ悪いようにはしないから、大人しく捕縛されてくれるか?」
逃げ出してもいいが……それは悪手だろう。
仕方ない、と割り切ることにした。
誤解もあとで解けるだろうと判断して……捕まった。
―――
竜杖とマジックバッグが押収され、手に縄がかけられるのは仕方ないと受け入れたが、できれば顔は隠させて欲しいとお願いしたが、却下された。
三十代の兵士さんは味方してくれたというか、それくらいは構わないと思ってくれたのだが、残りが却下の多勢に無勢。
誤解が解けたら、火属性魔法の一つでも撃ってやろうかと思った。
あと、竜杖とマジックバッグに何かあったら……間違いなくキレるだろうな。
そうして顔を晒され、少しばかり有名になりながら連行されたのは、兵士たちが利用しているであろう詰め所。
牢屋かと思ったが、小部屋に入れられ、座らされ、尋問を受ける。
名前、出身地、ウッドゲートに来た目的とか色々と聞かれた。
ただ、尋問をしている四十代ほどの兵士は恫喝するように凄んでいるし、これで何か出ると確信しているかのように自信満々だ。
正直言って甘い。
こちとら物心付いた時から貴族に虐げられてきたのだ。
これぐらいなんでもない。
少しして俺が堪えてないとわかったのか、それとも向こうに何かあって忙しくなったのか、尋問は早々に打ち切られ、牢屋に入れられる。
今晩はここで過ごすのか……風邪引かないようにしないといけないな。




