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賢者巡礼  作者: ナハァト
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他にも失ったモノがあったようだ

 俺は無のグラノさんたちの魔力と記憶を受け継ぐことを決めた。

 ただ、決めて直ぐ受け継ぐことはできなかった。

 無のグラノさん曰く、今の俺の状態では受け継ぐことができないらしい。

 簡単に言えば、今の俺の体が貧弱過ぎて、受け継ぐ魔力に耐えられないそうだ。

 これまでまともに食べることができなかった影響だと思われる。

 なので、まずは体を鍛えることから始まった。

 一人分の魔力を受け入れられるまでの最短が、一月くらいということだが、場合によってはもっと時間がかかることもあるそうだ。


「つまり、じゃ」


 そう付け加えて、無のグラノさんが言うには、今の俺の状態は身体能力のすべてが貧弱であるだけではなく、生命力も不健康という訳ではないが相当弱っているらしい。

 大穴に落ちて助かったのは、本当に運が良かったとしか言えないそうだ。

 ……本当に運が良かった。

 なので、俺の状態が多少なりとも上昇……というか、年齢・体格による本来の状態にまで近付くくらい回復しないと、一人分に耐えられないと言われる。

 という訳で、まずは回復と目標として、ここで鍛えることになった。


「しかし、こういうのって、確かステータスと言われていて、専用のスキルがあれば確認できるんだよな?」


「その通りじゃが、残念ながらワシらの中でそのスキルを持っているのはラビンだけじゃ」


「ラビンさんが?」


 それなら確認してもらおうと思ったが、既に確認されていた――治療された時に確認していたようで、先ほどの貧弱、弱っているというのが、ラビンさんによる鑑定結果だそうだ。

 数値にもできるそうだが……多分、これはアレだな。

 曖昧にすることで、俺のやる気が下がらないようにとか、そういうことなんだろう。

 気遣いとして受け取っておく。

 そうして、俺の鍛錬……とまではいかないから、運動の日々が始まる。

 まず、ダンジョン最下層で過ごすにあたり、専用の部屋というか寝室が用意されたというか、あっという間に作られた。

 製作者は、ラビンさん。


「このダンジョンはボクの直轄地だから自由自在なんだよ」


 なんか訳のわからない内に作られた。

 ……ダンジョンマスター。恐るべし。

 ただ、広過ぎると落ち着かないので、やり直しを要求した。

 そんな寝室よりも驚いたというか、感動したのは腹が一杯だと言えるまで食事にありつけたこと。

 しかも、美味い。


「いくらでも食べられるくらい美味い。いや、実際は胃袋にも限界があるから、食べられる量にも限界はあるんだが」


「あはは。わかっているよ。でも、褒めてくれるのは単純に嬉しいよ! ありがとう! 腕の振るい甲斐があるな! なんといっても、ここでこういう食事を取るのは、ボクとカーくんだけだったからね!」


 ラビンさんが食事も作ってくれた。


「ここまでダンジョンに引き籠っていると、色々と手を出していてね。料理も趣味の一つさ!」


 趣味を超えた腕前だと思う。

 いや、当初は違っていたんだが、なるべくしてなったと言うべきか。

 当初は、料理自慢が他に居たのだ。

 そう、料理が得意だと言っていた水のリタさん。

 ただ――。


「どうですか? これでも腕に自信がありまして」


「………………これ、味見した?」


「残念ですが、していません。というより、できません。私、スケルトンですので」


 舌がなく、味見ができないため、微調整が上手くいっていないというか、変な方向に進んでしまっているというか、その腕前に審議が入る。


「あらあら。うふふ。自慢の料理が振るえなくなるなんて……これで女としての魅力はウチの方が上ってことね!」


「……リタの自滅。ワタシたちの勝利!」


「キイエエエエエッ!」


 女性陣の戦いに、終わりはない。

 そっと目を逸らした。

 ただ、水のリタさんの手際は良かったし、彩りというか、盛り付け方が綺麗だったのは間違いない事実である。

 また、食材に関してだが、ここはダンジョン最下層。

 どうしているのかと思えば、ラビンさんがダンジョンマスターの力を行使して、ダンジョン最下層の一区画を丸ごと畑にしていたことには驚いた。

 これも趣味の一つ、らしい。

 肉類に関しては、カーくんが上の階に行って取ってきてくれる。

 所謂、魔物の肉。

 ただ、最下層付近に居る魔物の肉ということもあって、レア度? や部位、品質的には最高級品らしい。


「……倒して大丈夫なのか?」


「いいのいいの。ここまで来る人は居ないし、放っておくと増え続けていく一方だから、多少は減らさないとね。微調整だよ、微調整」


 ラビンさん側の都合も兼ねているようだ。

 よくわからないが、ここは好意に甘えておこうと思う。

 なので――。


「その……できればお土産に……」


「お母さんに食べさせてあげたいんだね! 大丈夫! その時になったら持たせてあげるよ!」


「ありがとうございます!」


 俺の中で、ラビンさんが最上位――は母さんだから、その次くらいの位置付けになった。

 そして、大事なのは食事だけではなく、運動も、である。


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