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賢者巡礼  作者: ナハァト
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どこで聞いたとか、思い出しにくくない?

 一度魔力を使い切って少しの間眠っていたため、少しばかり体が鈍っている。

 起きてからも激しい運動はしていないし……そもそも、外にも出られなかった。

 なので、ここぞとばかりにカーくんに頼んで鍛錬を行う。


「よろしくお願いします」


「うむ。アルムも神なる筋肉を得るために精進するのだ!」


 ……ん? なんか聞き憶えのあるフレーズだが、どこで聞いたのだろうか?


「頑張りましょう!」


 俺の横でむんっ! とやる気を見せるリノファ。

 可愛らしい、と思う。

 一緒に頑張る人が居れば、やる気も上がるというモノだ。


「……ん……くっ」


 ここに居た時はそうでもなかったというか、習慣になっていたのだが、今は久々の感覚なので、カーくんから受ける鍛錬のキツさを実感する。


「ふん! ふん! ふん! ふん!」


 だからだろうか。

 隣でリノファが平然と鍛錬を行っている。

 もしかすると、俺よりも体がしっかりとできているかもしれない。

 いや、現実を見よう。

 見た目は別に変っていないようだが、俺よりもしっかりと体ができている。

 ……既に遅かったのだろうか?

 いや、そう断ずるのは早い。

 鍛錬終了後、見守り役である母さんに尋ねてみる。


「母さん。リノファのことだけど……鍛え過ぎてない?」


「そう? まだまだだと思うけど? というか、アルムの方こそ、もっと鍛えた方がいいのでは?」


「それはまあ……確かに」


 残りの属性魔力と記憶を受け継ぐには、まだまだ鍛えないといけない。

 それを考えると、俺の体はまだまだ貧弱というか、一般的な魔法使いよりまだ劣っている。

 ……あっ、そうか。

 今の俺を基準に考えるから、リノファが鍛え過ぎだと感じたのか。

 一般的に見れば、まだまだ、ということ。

 それは俺もだけど。

 負けていられない、と思った。


     ―――


 少しばかり鈍った体を鍛え続け、ついでに火属性、光属性魔法をさらに上手く扱うために、火のヒストさんや光のレイさんに聞きながら練習する日々を過ごしつつ、次の目的地を森の国・フォレストガーデンだと決めたので、そのことを魔法の練習中に光のレイさんに伝える。


「……そう。気を付けて。世界樹によろしく」


 それだけかな? と思ったが、そうではなかった。


「……それと、もし姉と妹に会った場合だけど」


「会ったら? 会えるだろうか?」


「……大丈夫。アルムにはワタシの記憶があるから、誰かは判別できる」


「まあ、できなくはないと思うが」


「……それに、世界樹の様子を見に行くんでしょ? なら、会えると思う。少なくとも、姉は私が出て行く時、既に世界樹の守人だったから。成熟していたし、姿形も変わってないはず」


「いや、でも……あっ、そうか。エルフは所謂長命種だったな」


 今でも生きている可能性は充分にあるな。


「……そう。あと、妹も成長しているだろうから、どう成長したか気になっている。……状況がわかったら教えて欲しい」


「それはもちろん」


 ありがとう、と光のレイさんが微笑んだ……ような気がした。

 骸骨だからまったくわからないが、そういう雰囲気である。

 ただ、その雰囲気は直ぐに霧散して、悩むというか、懸念を抱いたような雰囲気を発し始めた。

 魔法、失敗しただろうか?


「何か思うことが?」


「……妹はなんか勘が鋭いから、アルムから私に繋がる何かに気付くかもしれない」


 光のレイさんの記憶を正確に見た訳ではないけど、光のレイさんがわざわざ忠告するように言ってくるのなら、そうなんだろう。

 少し、気を付けた方がいいかもしれない。


「もし気付かれたら、その時はレイさんのことを教えた方がいいか?」


「……それはアルムに任せる。どっちでもいい……けど、ここに連れて来るのは、少し抵抗がある」


 骸骨スケルトン、だからかな。

 俺は慣れたし、母さんは普通に受け入れ、リノファは寧ろ喜んでいるが、普通は敬遠したいかもしれない。

 光のレイさんの身内だからそんなことにはなって欲しくないし、身内のそんな態度を光のレイさんにも見せたくない。

 もし接触してバレた場合は、慎重を期さないといけないな。

 まあ、今から心配しても仕方ないし、出会ってから考えよう。


     ―――


 そうして数日間、体と魔法の鍛錬を続ける。

 この数日の間に、アブさんは随分と打ち解けたと思う。


「ハハハッ」


「アハハッ」


 今では無のグラノさんとも笑って話せるくらいだ。

 無のグラノさん、火のヒストさん、風のウィンヴィさん、闇のアンクさん、あとカーくんとは普通に話せるようになった。

 けれど――。


「――ハッ!」


 水のリタさん、土のアンススさん、光のレイさん――つまり、女性陣スケルトン・レディースに、母さんとリノファが相手となるとまだ俺を盾にするし、ラビンさんに至っては未だ前を通るだけで俺を盾にして完全警戒する状態である。


「う~ん。やり過ぎだったかもしれないけれど、ボクからすれば侵入だからね。仕方ないさ」


 ラビンさんはもう気にしていないようだが、こればっかりは時間が解決するしかない、か。

 まあまあ、とアブさんを宥めて落ち着かせることが度々あった。

 そうしている内に、次へと出発する時が来る。

 もっと鍛えないとな、とも思いつつ、みんなに見送られながら魔法陣に乗って出発する。


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