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賢者巡礼  作者: ナハァト
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手を組まれなくても勝てません

 俺に魔力と記憶を受け継がせる代わりに、やって欲しいことがあると、無のグラノさんは言う。

 ただ、それがどのようなことなのかは、聞かないと判断できない。

 無のグラノさんを見て……火のヒストさんを見て……風のウィンヴィさんを見て……闇のアンクさんを見て……理解する。

 わかったと一つ頷いて答えた。


「伴侶となるスケルトンを見つけてくればいいんだな?」


「「「「違うわっ!」」」」


「え? 違うのか? 女性陣のスケルトンが怖いから、もっと大人しい……お淑やかなとか、物静かなスケルトンをご所望したい、と前々から画策していたことを果たす時がきた、と実行しようとしたのかと」


「いや……それは、まあ……の」


「まあ、考えたか、考えなかったと言われれば……」


「考えるよね。そりゃ、やっぱり」


「しかし、世の中、そう都合よくはいかないといいますか……」


 色々と思考し続けたのだろうと窺える。

 いや、今も続けているのだろう。

 ただ、俺も無のグラノさんたちも、口を滑らせてしまったというか、迂闊な内容だった。

 時と場所をもっと考えるべきだったのだ。


「あら? 中々面白そうな話をしているわね」


「色々と問い質す必要があるようですね」


「……内容次第では、折る」


 共通の敵を前にすれば、敵同士が手を組むことだってある。

 そんなことを実感した。


     ―――


 女性陣に説教された。

 いつまでも続きそうな説教だったが、「すみませんでした。ですが、俺はまだ出会ったばかり……皆さんの魅力もわからずに、不適切な発言だった。申し訳ない」と素直に謝ると――。


「まあ、それもそうね」


「そういうことなら仕方ないですね」


「……うん。これくらいで許してあげる」


 解放された。

 男性陣と喜ぶが――。


「いやいや、許すのはアルムくんだけだから」


「あなたたちとは長い付き合いなのに、私たちの素晴らしい魅力をわかっていなかったとは……嘆かわしいです」


「……許されるとでも?」


 解放されたのは俺だけだった。

 とりあえず、説教が終わるまで大人しく待つことにする。


     ―――


 どれくらい経っただろうか。

 時間を測れるモノがここにはないため、感覚的にしかわからない。

 一時間……は経過したと思う。

 そんな頃に、男性陣が漸く解放された。

 解放された男性陣はこころなしかやつれ……はしないから、すり減ったように見え、逆に女性陣はツヤツヤ……はしないから、骨密度が増えた? ように見える。


「それで、どこまで話したのかしら?」


 土のアンススさんの問いに、闇のアンクさんが女性陣に説明しつつ、無のグラノさんが続きを俺に話す。

 ちなみにだが、俺用の新しい椅子が用意され、全員で円卓を囲む形に落ち着いている。


「それで、なんじゃったか……そうそう、やってもらいたいことじゃったな」


「ああ、待っている間に、俺なりに考えてみたが――」


「いやいや、待て待て! それはきっと違う! 間違いなく違うじゃろうから、これからワシが言うから大人しく聞くのじゃ! それでもその考えを言いたいのなら、あとでワシが個人的に聞くから!」


「……わかった」


 残念だ。

 結構自信があったというか、他の女性スケルトンを連れてくるではないのなら、母性を求めて母親になってくれそうなスケルトンを連れてきて欲しいと願っていると思っていたのだが……いや、まだ間違っていると決まった訳じゃない。

 まずは無のグラノさんの話を聞こう。


「……なんか助かった気がするな」


「そうだね。助けられた気がするよ」


 火のヒストさんと風のウィンヴィさんがホッと安堵しているが、きっと説教から解放されたという実感を、今感じられたのだろう。


「ごほんっ! さて、お主にやって欲しいことじゃが」


 無のグラノさんから真剣な雰囲気を感じた。

 本当に、心からの願いのような気がする。


「……ワシらの誰も、好き好んでここでこうしている訳ではない。いや、今の言い方では語弊があるの。誰も好き好んで、ここに落ちた訳ではないのじゃ。誰しにも、そうなった理由、原因があって、それを今でも抱えている……後悔、無念……抱く思いはそれぞれ存在している」


『……』


 気付けば、この場が静寂に満ちていた。

 周囲を見れば、抱えている思いを思い出したのか、誰しもがなんとも言えない表情を浮かべている……ように見える。


「そんなワシらの思いを、お主に果たして欲しい、と強制はしない。だが、その結果だけでも、見てきてもらえないだろうか。最早ここから出ることができなくなったワシらの代わりに……」


 無のグラノさんの……いや、スケルトンたちの願いを聞き、俺は少しだけ考えたあとに答える。


「なるほどな。これで合点がいった。魔法の知識だけなら口頭だけでも充分なのに、そこに記憶が関わってくるのは、そういうことか」


「まあ、言葉だけでは伝えられない部分もあるからの」


「でも、納得もいった。だから……」


 無のグラノさんをしっかりと見て言う。


「力を譲り受けるんだ。俺にできることならやらせてくれ」


 無のグラノさんたちがやって欲しいということを、俺は引き受けることにした。


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