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ものぐさ魔法嬢の罪滅ぼし  作者: 若柚子
3/9

3.小休止:ティータイムにて

シャーグロッテ邸の大庭園からどーも。

エレーナ・B・シャーグロッテこと所沢結でーす。

今日は天気が良いから取り巻きちゃん三人衆とお茶会中。

「今日の紅茶は一段と美味しいですね。」

「勿論ですとも!お嬢様がいらっしゃるだけで、道端の茶葉すら最上級の味となるのですから!」

「ふふ、そんな事ありませんよ。」

「ううん...本当に美味しくなります...!」

「もうクロエまで...。」

いやまーじで褒めすぎ。あたしは別に女神じゃないんですけどー。

けど本当に今日の...いや今日も紅茶は激ウマ。

茶葉に詳しくないのもあるし、そもそも前世の世界(こっち)に存在する茶葉じゃないからあたし自身なんの紅茶かわかんない。

エレーナの記憶によるとこの紅茶は「マルディカ」っていうらしい。ルジェット共和国からの輸入品で、「マルデラ」っていうお高い茶葉の中でも特に質の良いものを指すんだって。

多分朝摘みーとかそういう感じの違いなのかな?

ようわからんけど確実に超高級な奴なんだろーなー。

んでそのめっちゃお高い紅茶を淹れたのは、あたしの後ろで佇んでいるこの黒髪紅眼の男の子。名前は「ネロ・クローレ」。

代々シャーグロッテ家に仕えてるお家の養子らしくて、同い年の幼馴染だからって理由でエレーナの執事になってる。

「淹れたのは私ではなくネロなのですから、感謝なら彼に言うべきですよ。」

「え、お...私ですか?」

「えぇ、貴方よ。美味しい紅茶をありがとう。ネロ。」

「ありがとうございます!」

「えっと...お茶、美味しいです!」

「あんがとね〜」

おーおー照れとる照れとる。

「はは...。私は当たり前の仕事をしてるだけですし...。」

頬が赤いぞー。照れてんの丸わかりだぞー。

「いいえ。当たり前のことだとしても、それを普通以上にこなせるのはとても素晴らしいこと。誇りに思いなさいな。」

「さっすが完璧執事くんじゃーん?ねぇ、クロエ?」

「うん、すっごく素敵だよね!」

「そうよ?ネロはクローレ家の中で最も優秀な召使いなのですから。」

「ちょ、ちょっとエレーナ!これ以上揶揄うのは勘弁してくれ!」

お、正体表したね。

「ふふ、揶揄ってなどいませんわ。当然のことを申してるだけです。」

「当然の事を揶揄いだなんてネロくんひっど〜い」

「お嬢様直々のお褒めなのです!歓喜し、感涙に咽ぶべきですわ!」

「二人もこう言っているのです。我こそはエレーナ・シャーグロッテの側に仕えるに相応しい者であると胸を張りなさいな。貴方は素敵な執事ですよ。」

「あ〜〜!!おま、そういう所が俺はさ〜!!」

あはは、顔真っ赤。リンゴみたいだな。

いや本当に揶揄っては...半分無いんだよ。ただ感謝してるだけなんだけど。

ほんと、相変わらず褒められ慣れしてないんだな、この子。

「ほらネロ、素が出ていますよ。執事としての振る舞いを重視している貴方がそれを許すのかしら?」

「あっ...ん゛ん゛っ!!失礼しました。私にとってお嬢様方がより良い一時を過ごす為の手助けをし、お嬢様方の平穏と幸福を支える事こそが至上の喜び。感謝の言葉など私の身に余ります。」

「お〜切り替えはや。」

それな。この素と執事モードの差よ。グッピーが死ぬレベルだわ。

拾い子だからこそ、執事としては一流でありたいんだろうね。

何かにおいて劣ってるからこそ、他の何かでは優れていたい...そういうもんなのかね。

「ネロは一流の執事ですものね?」

「えぇ。」

「それにしても...エレーナ様とネロさんって仲が良いよね...!まるで...」

「よしなさい、クロエ。お嬢様は王子殿下と御結婚なさるのですから。」

「あっ...そうだった...。ごめんなさい...。」

「所詮政略結婚です。気に病むことではありませんよ。」

そう。あたしは殿下と結婚し......ませーん!!!!!

殿下と結婚するのはヒロインちゃんでーす。

そうするために魅了魔法を習得してんだから。

「正直さー?お嬢が殿下と結婚すんの、なんか変だと思うんよね。」

「変?殿下は気品や礼はお嬢様に劣れども、身分も容姿も申し分無いのでは?」

「そうだけどさ、殿下以外に王子はいない。国間の和平とか同盟を結ぶために他の国...例えばハルミット大公国とかさ、ミズガルズ王国とかの娘さんを娶るのがセオリーっしょ?」

「ミズガルズは我が国と敵対中の上に、グラシアン王子が殿下と犬猿の仲の筈。その憎き相手の親族となるのは気に食わないのでは?」

「ほーん、言われてみれば確かに。嫌いな奴が義兄弟とか死んでもやだわな」

「じゃあ、ハルミット大公国は?」

「...ハルミットは御息女がおりません。故に無理かと。」

「あ〜、ハルミットは娘さんがおらんのか、うちと同じか。」

「そういえばハルミット大公国は病死した第三王子がいらっしゃいましたわよね?以前貴方がその方の死について色々話してましたあの。」

「あー、あれはただ棺の中身のご遺体が人形だったとか、死因だった病気の詳細が明かされてなかったから実は死んでないとか陰謀論じみた噂なだけ。全くもって事実無根、こういうのは真に受けちゃ駄目だよー?特にクロエ。」

「わ、わかった!」

「ほんとぉ〜?」

「多分...大丈夫、だと...。」

「...。」

「ネロさんまでそんな無言で見つめなくても...。ちゃんと騙されないようにするから...!」

「まぁ第三王子の陰謀論なんて別にどうだっていいんだわ。今は我が国の王子サマが娶れる女の子がいる国があるかどうかについての話っしょ?」

「そうでしたわね、ではチェーリカはどうなんです?」

「チェーリカぁ???あんたバカ言うんじゃないよ。チェーリカとか全然無し、無し寄りの大無しだわ。だってアレよ?ミズガルズの女王サマのママはチェーリカの皇女様よ?」

「そうなると...グラシアン王子様と親戚になっちゃうって事だよね...?!」

「クロエ大正解。あそこの犬っころと違って子リスちゃんは利発だねぇ。」

「なんですって?!」

「そのまんまの意味だよワンコロ。あ、因みにだけどガルムも無理だからね。あそこのスルタンって代々敬虔なガルマン教の教徒と結婚してんだわ。うちは無宗教っしょ?論外論外。」

今代に限ってどいつもこいつもダメなのかい...。

「だから私なのですよ。一番無難に済ませられるのですから。」

確かにあたしだったら無難に済むだろうね。

でもきっとヒロインちゃんの方が前途多難かもしれないけど、皆にとって、あたしにとってハッピーエンドになるんだよ。多分。

「六日後、王宮で舞踏会がございます。そちらで殿下も誰か良い淑女を見つけるかもしれませんよ?」

「んな訳ないっしょ。あの熾炎の貴公子よ?別称に似合わず冷め切った王子サマが舞踏会如きで誰か意中の人を見つけるとかあり得ないって。」

見つけるかも?違うね、見せつけるんだよ。

舞踏会であたしはある作戦を実行する。

面倒事を全てチャラにする大作戦をね。

いんやー...楽しみだなぁ...。

「それよりも!あと六日でお嬢様の晴れ姿が見られるのです!私、期待からか近頃その事で頭がいっぱいで...!」

そうだ、魔法。本来ならそっちがメインイベントなんだよな。

世界でも知る人ぞ知る「魔法嬢」による魔法の披露。

完璧な完成までに半年も要した大魔法に近しい代物。

「は~...お嬢?アメリアったらさ、ずーっとその事しか話してないんよ。どう思う?」

「あら。」

「当たり前でしょう!私にとって舞踏よりも魔法花火よりも軽食よりも大切な事!そのためにイブニングドレスも新調したのですから!」

「マジで?!うちは前に叔父様から買って貰った奴でいいやって思ってたんだけど。」

「お嬢様の勇姿を見届ける為にはそれ相応の恰好をせねば不躾というものでしょう?」

エレーナガチ勢...。

「まぁ気持ちはわからんくもないけどさ。」

「それ程にまで楽しみにして頂けるなんて...。私もご期待に応えねばなりませんね。」

「そういえばクロエは?どうなさるのです?」

「あ...えっと、わたしは...。あはは...。」

およ、顔引き攣ってんね。

行きたくない...って訳じゃあなさげだけど。

「ちょっとー?なにその反応?お嬢の魔法、誰よりも見たいのはあんたっしょ?」

「ノエル?私もクロエに負けず劣らずお嬢様の披露を心待ちにしているのですが??」

「はいはい。ほら、夜会服さえあれば身分問わず誰でも行けんだからさ?一緒に見に行こうじゃん?そ、れ、に?舞踏会で素敵な出会いがあるかもよ?」

「出会いはわかりませんが...。ご期待を裏切らぬ魔法を披露する事はご約束しましょう。」

「他にも楽しいことは沢山あるぜ?軽食はヴェルト中の料理が用意してあってさ、最早一種の世界旅行よ。中々無くない?七国の料理が一斉に集まるなんてさ。そーゆーのを四人...五人かな?楽しもうじゃん。」

「...もちろんわたしも行きたいよ...。でも、でも...」

「でも?」

「わたし...イブニングドレスどころかドレスなんて...持ってない...。だから、行けないです...。」

あーそうだこの子、三人の中で唯一庶民の子だった。

確かにドレスは一着でも庶民の人たちにとっちゃあ高価なもんだろうよ。

だっていっちゃん安いドレスだとしても3、4週間分の食費に相当するもん。もっと高い物となると...はは、考えたくも無いな...。

「...クロエ、貴女は...どうしたい?」

「...え?」

「舞踏会、参加したいのかしら?正直におっしゃって頂戴な。」

「い...行きたいです!!素敵なドレスを着て、綺麗なエレーナ様をお側で見たいです!!」

他にも行きたい理由はあるだろうに...。

全くこの子は...。

「ふふ、私を見たいのはともかく、行きたいのは十分わかりました。」

「クロエ。お茶会の後、シャーグロッテ邸においでなさい。」

「!!それ、って...!!」

「一着、貴女にドレスを差し上げましょう。」

「あ、あぁ...ありがとう、ございます...!!」

あーあー泣いちゃったよ。そんなに嬉しいんだね。

持て余してるんだったら持たざる者に少しでも分け与えた方が宝の持ち腐れになるよか良いっしょ?

特にエレーナはドレスなんて腐るほど持ってんだから、使わないでとっとくより使う人にあげた方がドレスにとっても良いじゃんね。

あー...あたし前世では多分こんな事微塵も考えなかったのになぁ...。

エレーナの影響かなぁ...。

「では、後で共に参りましょうね。」

「なんて慈悲深い...!!あぁ、少しでもずるいと思ってしまう自分が憎いですわ...。」

「うちらはいーの。」

「ですわね...。」

そーそー。君たちは持ってるんだからさ。

「この話はここまで。お茶会を続けましょう。」

こっから二時間くらい経って、今あたしはクロエを連れてネロと一緒に帰宅中。

アメリアとノエルは解散時にそれぞれの家に帰ってった。

クロエは...親に付いてくペンギンの雛みたいにあたしの後ろを付いて来てる。

やっぱ小動物みたいだな。

「ですがお嬢様、本当に宜しいのですか?ご主人様の許可も取らずに...。」

「大丈夫よ。お父様には後で私から言っておきます。『大切な友の為に譲ってさしあげた』と。」

「なら良いですが...。」

「クロエ。もう着きますよ。くれぐれも礼儀にはお気をつけくださいね。」

「は、はい!」

ネロが侯爵家の豪邸に相応しい、大きな扉を開く。

「エレーナ・B・シャーグロッテ、只今戻りました。」

お出迎え専用の使用人達がこっちを振り向く。

「「「「おかえりなさいませ!」」」」」

うおっ、声の圧すご。

一番に話しかけたのは家政婦長のミルファだった。

「おかえりないませ、エレーナお嬢様。ネロも給仕の務めご苦労様です。あら、クロエ様も。今日はどの様なご用事で?」

「あ、えっと、その...」

クロエがあうあうと唇を震わせながら狼狽える。

「クロエに一着、ドレスを差し上げようと思いまして。衣装部屋に腐るほどあるでしょう?」

「ドレス...ですか?あぁ!舞踏会でお召しになられる...」

「えぇ。彼女なら大切にしてくれる筈なので。それに一着程度どうってことありませんわ。私は侯爵令嬢なのですから、ね?あぁ、無論お父様にはきちんと話しておきますのでご心配なく。」

「承知しました。」

玄関正面、階段の踊り場から二手に分かれた階段の左側の方を上って、長い廊下にある

【Salle des costumes】

って書かれた金の表札が指す他のよりも縦に長い扉を開けると...。

「わぁぁぁ...!!綺麗...!!!」

一面に広がる、煌びやかなイブニングドレスの数々。

これぜーんぶエレーナ...とエレーナのママ(あと妹ちゃんのもちょっと)の。

割合はエレーナとママで4.5:5位じゃないかな。

いやエレーナのパッパが家族大好きマンでさ。毎年毎年何着もプレゼントしてくれんの。

いやそんなに貰っても宝の持ち腐れになるだけだっつーの、って思うよねー。有難いけどさー。

「クロエ、どれが欲しいか選んでくださいな。」

「あの、エレーナ様が選んで...」

「だーめ。それでは貴女の好みに合わないかもしれないじゃない。貴女が、一番気に入ったドレスを選んでくださいな。」

「...はい!」

クロエが両手に抱えてた一冊の本を開いて、衣装部屋の中へ駆け込む。

何の本なんだろーね。エレーナも中身を知らない...っていうか見せて貰えんかったみたいだし。

「....は...だから、紫で....」

本とドレスを交互に見ながらなんか呟いてんだけど。

「あっ、これ良いかも...。いやでも....」

...凄く真剣に選んどる。ドレス如きにそんな考えることかね。

いや、初めての自分が着るドレスなんだから考えるのも当然か。

だとしたらあの本は着てみたいドレスのメモとかか。

「...クロエ様、ドレス選びに時間をかけすぎでは...?」

「ネロったら乙女心がわからないのね。遂に憧れのドレスが手に入れられるというのに、そのドレスを妥協して、ましてや適当に選ぶなんてこと、出来ないでしょう?」

「はぁ...。」

「だから彼女が満足のいくドレスを選ぶまで考えさせてあげましょう。それに...」

「それに?」

「彼女のあの輝く顔をご覧なさい。あれを時間なんてもののせいで奪うのは酷ではなくて?」

今のクロエは、凄く生き生きとしてて楽しそう。

まるで、好きな漫画やアニメを見てたり、推しカプの妄想してたり、コミケ行ったりする時のあたしみたいだなぁ...。

こんな顔したクロエ、どの記憶を探しても見たことない。

ドレスが好きなんだろうなぁ。いやドレスだけじゃないのかもね。

そういう好きな物事のが金銭的な問題で出来ないのはさぞ辛いことだろうよ...。

「...あ!...これだ!エレーナ様!!」

「お決まりになられました?」

「はい!私...これがこれがいいです...!!」

クロエが手にしたのは花とフリルで飾られているけど上品で優雅な紫と白のドレス。

「それですね。では包装させますのでお先に玄関に行かれてくださいな。」

「ネロ。クロエを玄関まで案内なさい。」

「承知しました。」

ネロがクロエを連れて玄関へ戻っていく。

その姿を確認してあたしも歩き出す。

まずレスィーヴ・ボンネ...いわゆる洗濯担当のメイドのとこへ行って、これ畳んでもらって、メゾン・ボンネ...これはなんていうかオールラウンダーなメイドに包装して貰って...っていやこれメゾン・ボンネに全部やって貰った方が速くね?!

いやあたしがやった方が思いこもってるよな?でもあたしドレスの畳みかたも包装の仕方も知らんし...。それでぐっちゃぐちゃになったドレス渡すなんてクロエが可哀想すぎるし...。

じゃあ畳みと包装はメイドに任せて、あたしはせめてもの気持ちとしてカード作るか...。

「あ、マルガレット。ちょっといいかしら?」

「どうなされましたか?」

マルガレットはベテランのメゾン・ボンネで、エレーナが子供の頃からここで勤めてる人。

「業務中だったら申し訳ないのだけれども、このドレスを畳んで、プレゼント用に包装して欲しいの。お願いできるかしら?」

「えぇ、構いませんよ。ドレスの畳みと包装ならすぐ終わらせられますので!」

「ありがとう、心強いわ。私は少し自室に戻りますが、終わり次第戻ってきますので。」

「わかりました。完了しましたらここで待っていますね。あ、リボンは何色にします?」

あーリボンか包装するもんな。リボンの色かぁ...。クロエの目の色が黄緑だし...

「黄緑でお願いします。」

「かしこまりました。」

ドレスを後にして、自室へ足速に戻る。

さてと、なる早でやりますか。マルガレットの事だからマジですーぐ終わらせちゃうし、クロエも待ってるしね。

えーと、カードカードっと...。多分二番目の引き出しにあったはず...。あったあった。

で、なんて書こうか。

...てかあのドレス、クロエにしては上品でない?紫とか...なんてゆーか、クロエよりエレーナっぽい気がするんだよなあ。

いや元々あれエレーナのドレスだから当たり前っちゃ当たり前だけど。

まぁ人の好みなんて人それぞれだし、わざわざ他人が口出しすんのも野暮ってもんだけどさ。

それにしてもクロエはもっと水色とかピンクとか可愛い系の方が似合うと思うよなぁ..。

や、でも好みと似合うものが別ってのはよくある事だし、これ以上考えないようにするか。

いやあたしカードの文章考えろよ...。

って言っても、思いつくのは一つしか無いんだけどね。

えーっと


『親愛なる(Cher )( ami.)へ。貴女へ真心を(Un petit)込め(cadeau )て、(pour vons)ささや(tout votre)(cœur.)な贈り物を。貴女の友(De ton)(amie)エレ(Helaina.)ーナより。』


これでよし。

後は、蝋を溶かして、空いた所に垂らして、その上に急いでハンコをぎゅーっと押せば...おけ!シャーグロッテ家の紋章入りのカードの完成ー!

これを持ってマルガレットのとこへ行かねば。

小走りで廊下を走る。

「マルガレット!」

「お嬢様。完成致しましたよ。」

「ありがとう。業務中にごめんなさいね。」

「これくらいどうって事ないですわ!では、どうぞ。おっしゃった通り、黄緑のリボンで飾りましたよ。」

「確かに受けとりました。感謝するわ、マルガレット。」

包装されたドレスに巻いてある青リンゴみたいな黄緑色のリボンにカードを挟む。

「あら、カードを書いたのですね?」

「はい、贈り物にカードは必須なので。」

「成程。きっと贈り主の方は喜んでくださいますよ。では、私は元の業務に戻りますので。」

「えぇ。いってらっしゃい。」

さーて、クロエも待ってるし玄関へレッツゴー!

はいはいはいはい、いっそげ、いっそげー。

玄関先ではネロとクロエが立って待っている。

「クロエ。」

「エレーナ様!」

「やっと来ましたか...。」

申し訳ないね。これでも急ぎ目にした筈なんだわ。

「待たせてしまいごめんあそばせ。では、これを。」

クロエに包装されたドレスを手渡す。

「ありがとうございます...!わ、カードまで...!」

「私からのほんの気持ちです。」

「本当に...ありがとうございます!!わたし、わたし...今すっごく幸せです...!」

おいおい、涙ぐむんじゃあないよ可愛いけど。

「さぁ、もうお帰りなさい。貴女の御家族様方がきっと心配なさっている筈です。しかしこんな可愛いらしい少女が夜道を一人で歩いてしまっては妖精に捕まってしまうかもしれませんね。なので馬車を出しましょうか。」

「そんな...!一人で帰れるので...!」

「貴女が帰路で事故に遭ってほしくないのです。馬車でお帰りになってちょうだいな。」

「じゃあ...お言葉に甘えて...。」

「ありがとう。ではネロ、馬車の手配を。」

「承知しました。」

ネロが御者の所へ向かっていく。

数分後位で目の前に馬車が一台来た。

馬車とかファンタジーものの漫画とかでしか見たこと無かったから、結として実際に見るのは初めて。

てか馬もポニーランドでちっこい頃見たことある程度だし。

あっ、鬣サラサラ。丁寧にブラッシングされてらぁ...。

「ブルル...」

かんわいいなぁ...。

それよりも、クロエを見送らないと。

「では、クロエ。また会いましょう。六日後の舞踏会、是非そのドレスでいらしてくださいな。」

「...はい!おやすみなさい、エレーナ様...!」

「お休みなさいませ。」

クロエが馬車の中に入ったのを見計らって、ネロが馬車の扉を閉める。

そして、馬車は街へ向かって走っていった。

...んじゃ、戻るか。

「では、私は自室に戻ります。晩餐の時になったら呼んで頂戴。」

そう言い残して、自室へ戻る。

...バタン

「はぁぁぁぁ〜〜〜〜」

ボフっ、とベットにうつ伏せに倒れる。

布団が最高に気持ちいい触り心地であたしを包み込む。

つ、疲れた〜〜...。お嬢様言葉って気ぃ抜くとボロ出やすいし、言葉選ぶから頭使うし、無駄に集中力消費すんだよ...。

寝たい...。いや寝ちゃあかんわ...飯あるし...。それに準備せんと...。

「すぅぅぅぅ〜〜〜...はぁぁぁ〜〜〜〜...」

...よっしゃよっしゃいけるいける。

まーずーはー、作戦の確認だ。

端的に言うと、あたしは六日後の舞踏会で魅了魔法を掛ける。

こんにちは、若柚子です。

またもや長文になってしまったのにも関わらず読んでくださり感謝感激雨あられです。

今回はそこそこ早めに(二ヶ月経ってはいますが)投稿できました。一応不定期投稿なので遅いのは目を瞑って...。

今回は宮廷舞踏会、今作最初の事件(?)の舞台の前置きの前置きとさせて頂きました。...にしてはまた長々したものになってしまいましたが...。

これは本当にサブタイ通り小休止なので、へー、ふーん。程度に読んで頂ければ幸いです。

多分次の次の話あたりで舞踏会行くと思います。多分!

次回は舞踏会への準備回です。彼女達が紡ぐ物語をどうぞお楽しみに。

あ、そういえばメモライが一周年迎えました!これも読者の皆々様方と、お紅のお陰です。私はサボり魔なので...。

Twitterでも言いましたが一周年記念イラストを手掛けさせて頂きましたー!それぞれキャラのイメージ(?)物語っぽいのから別にそうじゃないものまで色々な本を描きました。そしてセンターは我らが主人公の長船響ちゃんです!何気初出しな気がします。顔は隠してます。まだキャラデザ出して無いので...。

あと、メモライの方にちょっと前に番外編としてそれぞれ主要キャラの日常が書かれているのがあるのでそれも読んで頂けると幸いです!エレーナ達の物語とは全く関係ない物語ですが、読んで頂ければ幸いです。お紅と私が喜びます。

本文だけでなく後書きも無駄に長いのに最後まで読んでくださり本当にありがとうございます!また、次回でお会いしましょう!



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