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三月二十八日
三月二十八日
ある世界には、ファンタジーという言葉は存在するらしい。でも言葉が存在するだけでファンタジーという世界の存在はない。いくつのも国があって、国と国で戦うのを好む連中の住む世界を、エンデはこう表現してる。夢無――ドリームレス。言葉はこっちの世界と似通っているところもあるらしい。
ドリームレス。なんて詰まらなそうな世界だろう。人を殺すことしかできない道具を作るのに忙しくて、恐ろしくせっかちで、その創造性を違う方向に向けようとしない。けど、そうでもない者もいるにはいるという。物語の書き手達だ。彼らは素晴らしい物語を創る。だからドリームレスにまったく夢がないのかといえばそうではない。それでもスズメの涙ほどしかない、つまり結局夢無しということだ。
エンデは、ぼくと、リルと、ジェスと、フリアンと、ワードの農家のリコさんと、さらい風に街を壊された人々と、王都に住んでいる全ての人がいる世界、つまり今、ぼくがいるこの世界を「空の裏」と呼んでいる。