一月五日
一月五日
街道を行っていると、向こう側から来た物乞いに絡まれる。ぼくらは道を外れて彼を昼食に招待した。乞食はぼくらに優しくされて泣いていた。なんでも、最悪、なんだそうだ。
もともと乞食をしていて、ファンタジーを失くしてしまったらしい……失くしたファンタジーを探して旅しているけれど、すでに二年も経ってしまった、きっともう二度と見ることはないだろう、と彼は言った。だからぼくは言う、きっとあなたはもう一度見つける、って。ファンタジーを失くしてしまった人の話はいくつか聞いたことがある。ファンタジーをなくした人は四日以内に見つけてもう一度触れないと一生寝られない身体になるらしい。なるほど、この男にはくまができている。二年間、一睡もしていないのだからあたりまえ。着ているものは服というよりボロの塊で、栄養が足りてないからか、睡眠不足からか、とにかく何かしらの理由で肌が荒れている。顔も、手も、腕も、足も。ぼくは男がかわいそうになって、あのワードの服をあげることにした。リルは眉を上げて訝しげにぼくを見たけど何も言わなかった。そう、彼には事を話してある。どうせ持っていてもぼくには必要ないし、なにより男がかわいそうだった。
もちろんぼくには解ってる。ぼくが男に優しくしたのは、ぼくが持ち主を探しているからだということを。