九月九日
九月九日
旅に変化がないのでこれといって書くことはない。
追記
書くことがないだって? よくもまあそんなことが言えたものだ。ぼくの万華鏡は持ち主を見つけた! おめでとうリル。彼は喜んだけど、ぼくは驚いた。ぼくが万華鏡をのぞいていると彼が興味をもって貸してくれと言う、ぼくは貸す。きれいな万華鏡だな…………。彼はもっと覗いていたかった筈。それでも、きっと彼には高価なものに移ったのだろう、すぐに返してきた。ところが、ぼくは触れられない。どうしても触れられない。
これはつまり、出遭いだ。
ぼくはリルと一緒に喜んで、驚いたけど内心がっかりした。この人ではないのか、って。まあ解っていたことだから別にどうってことはない。
面白いなあ、と思う。あの時ぼくが万華鏡を買わなかったらリルは一生出遭わなかったのかな。ぼくがこの万華鏡を買ったから、ぼくはリルを相棒に選んだのかな。万華鏡がぼくにそうさせたのかな。ぼくの物語もなかなか面白いじゃないか。