七月二五日
七月二五日
ちょっと間隔があいたからまとめて書く。
馬と馬具を買って、旅費で蓄えを使ってしまったから働かなくてはならない。ぼくはふとワードの農家はいつだって人手が足りないということを都合よく思い出して、ワードの農家に出向き、雇ってもらった。リコさんは相変わらずへんな目つきでぼくを見る。観察されているみたいでいい気分がしない。でも文句は言えない。
作業は単純だ。ぼくの背より高いワード草に、麻と絹と綿でこした水をあげる。それだけ。他にもあるんだろうけどぼくにはやらせてくれない、それでいいと思う。こんなことになるなら、前に詳しく書いておけばよかった。ワードの農家には全部で二十四人いる。気が遠くなるほど広い畑は雪の匂いがする。みんなぼくをぼくと知っているけど、根掘り葉掘り聞き出すような野蛮な真似はしない。なんだか訳知り顔でぼくに接するものだから、ぼくはちょっと混乱したけど慣れれば心地よい。家族ってこういうものなのかな。
ひょっとしたらひょっとするかもしれないと思って彼らのことをよーく観察したけど、体のどこにもMade In Fantasyはない。ちょっとがっかり。淡い期待(淡い期待だって? ぼく病気だろうか)はあっというまに消えちゃった。