表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Made In Fantasy  作者: 大西
22/81

七月十六日

 無事に帰ってこれた。ジェスにはこれでもかというくらい怒られたけど適当に聞き流した。反省はしてないよ。もちろん。反省はしてない。

 さて、ぼくがどこに言ってきたかというと、監獄。まず馬を買った。馬具を揃えて町を出た。二日間馬に揺られて、三日目の朝に着いた。ぼくは監獄で働いてる一人の少年に眼をつけた。そりゃ、囚人を相棒にするわけにはいかないもの。こういうところで働いている人というのは、親がいなかったり、親が犯罪者だったりする。つまり、えーと、奴隷。だから相棒には丁度いい。囚人を監督しているその少年が一人になった時、ぼくは無言で手紙を押し付けた。これは賭けだったよ、だって相手が字を読めるとは限らない。えーと、なんだっけ、あれ…………識字率は七割だから。

 ぼくは都で育った。だから都しか知らない、なんてのは大違いだ。ジェスはぼくを……あまりにも…………そう、侮っていた。ぼくをバカだと思っていたけどそれは間違いだ。そりゃ、ぼくはバカだ。上手に喋れないしものをよく知らない。でも、だって、ぼくは図書館に住んでいるんだよ! 世界がどういう風に回っているかくらい知ってる。

 話が逸れちゃった。もちろん、ちゃんとじっくり観察して決めた。年齢は近いほうがいいし、あんまりにも目立った顔立ちとかってのは駄目だ。ぼくは手紙を押し付けて、くるりと背をむけ、さっさと愛馬のもとへ立ち去った。後から「おい」とかなんとか聞こえたけど当然無視。

 行きしなとおなじように二日かけてのんびり帰ってきた。そして今に至る。今に至る? どこでそんな言い回しを覚えたんだろう?

 ジェスの言葉が気がかりだ、彼は、自分にはぼくに対する責任があった。って。それから、うろたえたようにこう付け加えた。

 いったいどうしちゃったんだ?

 いったいどうしちゃったんだろう。でも、気付いたことがある。最近、どうも場違いな感じ、背中が落ち着かないのとは別のこの感じがしていたのはみんながどうかしたんじゃなくて、ぼくがどうかしたんだってこと。ぼく、どうしたんだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ