六月六日
六月六日
まずい、ちょっと疲れて昼まで寝ちゃった。図書館でずっと気になってた本を借りる。すぐに読みきってしまってもう一度読んだ。一人の男の人生を物語っていて、彼はいわゆる英雄だ。物語は楽しくて、主人公はかっこよく、彼と同じような立場にあるような羽目に陥ったら彼のようでありたいと思うけど、ぼくは納得できない。何度失敗しても振り出しに戻ることができて、敵だった者が見方に付いたり、闇に取り付かれた親友を助ける為に戦ったり、世界を救ったり。都合よく主人公は筋肉隆々で、運動能力に優れ、勇気がある。容姿端麗文武両道(使い方あってるかな?)――冗談じゃない。だってそんなことあるわけないじゃないか。実は敵にはかわいそうな過去――悪におちたそれなりの理由――があって、主人公はその過去を拭い去ってあげる。正義を糧とし悪を憎む。そんなに都合よく人生は進んでくれない。ぼくは小柄で、うまく喋れない、髪は黒いままだし(これ本当にどうにかならないかな、)ぼくの持ち主は現れない。これが主人公のような人ならば、前向きに考え、自分から何らかの行動を起こすのだろうけど、ぼくは地獄を見て人生を%、人生を肯定できる超人ではないから。
人生はおおきな物語であるらしいというのは解った。ぼくの物語もそうであったら。ぼくはそう感じずにはいられない。
本を読み終わって、やることがない。疲れているから出かけたくもない。だから昨日買った万華鏡を眺めて過ごした。この万華鏡にもMade In Fantasyは入ってる、けど持ち主はぼくじゃない。この万華鏡の持ち主がぼくであればどんなにいいだろう。
Made In Fantasyは何にでも入ってるわけじゃない。なんでも、ありとあらゆる「もの」は売りに出される前、ワード草から作られた生地の布を被せて、七日間、夜の間だけ外に晒さなければいけないらしい。食べ物や何かは別として。ワードじゃないと駄目で、日が沈んでからきっかり三十九分後から始めなきゃいけない。太陽が昇りきった瞬間、ワードの上から真っ黒の布を被せないといけない。詳しいことはよく知らない。
で、一週間経つと、Made In Fantasyと入っているものと入っていないものがある(千個に一つの確立で。これはキリーの情報だから確かじゃない)。入っていようが入っていまいが売りに出される。どういう仕組みでどうなっているのかジェスに聞くのを忘れないように。
こんなに長い文章を書いたのは久しぶりかも。本を読んだ日は、なんだか言葉が軽く感じる。すらすら出てくる。もっと本を読もう。