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「すみません、リベロってどのくらいで着きますか?」
ジェイは機体の操縦士に声をかけた。
「リベロの上空には30分くらいですね。」
「さんじゅっ・・・」
「・・・意外と近いな。」
「もう少しかかるかと思ってたけど。」
ジェイは気の毒そうにヴィヴを見ながら「君の御両親には言わない方がいいかもね」と言った。ヴィヴはがっくりと肩を落としている。
「君のところは、やけにあっさりと別れていたけれど、リベロの場所は知っていたのか?」
ディーは不思議そうにジェイに尋ねた。
「さぁ、どうなのかなぁ・・・。」
ジェイは(もとから、ああいう人たちだけどね・・・)と思ったが黙っておいた。
「あと15分で小型機に乗り込みます。リベロの上空に待機し、新月になるタイミングで動きます。」
「リベロに向かって発進する前にアナウンスするから、よく聞いておいてくれ。ディーは1号機、ジェイは2号機、ヴィヴは3号機だ。間違えるなよ。」
「はい!」
緊張する少年たちを見つめるように、上空から見たリベロは緑色の靄にかかったような光に包まれていた。
「時間だ。三人とも、小型機に移ってくれ。」
アナウンスが流れ、機内は慌ただしくなった。
「幸運を祈る。」
「二人とも、元気でね。」
「何かあったら連絡しろよ!」
三人は言葉少なに別れを告げた。
『新月開始。1号機、2号機、3号機を切り離します。幸運を祈る。』
ガチャ、シュゥゥゥゥゥーー・・・
思っていたよりも小さな音を立てて小型機は別々の方向へ飛んでいった。
母船から見た機体は、暗闇に溶けてすぐに見えなくなった。
「幸運を、祈る・・・。」
母船にいたパイロットは、暗闇に向かってひとり呟いた。