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「5秒前、3…2…1…」
ピィィーーーーーー……
青空の下、運動場を走っていた少年たちが徐々に足を止めていく。
少年たちはデジタル掲示板を見ると、口々に話し始めた。
「今回のトップはディーか。」
「2位がヴィヴ、3位がジェイ…やっぱりあの3人は不動だな。」
「テストの成績もいつもトップだし、悔しいけど適わないな。」
少年たちは離れたところにいる3人を眩しそうに見ると、次々と校舎へ戻って行った。
注目を浴びていた3人の少年たちは、それぞれ親しく話すことも、忌々しそうな顔をするでもなく、互いに軽く会釈して校舎へ戻ろうとしていた。
「あ、3人とも…ディー、ジェイ、ヴィヴ!急いで校長室へ行ってくれ。次の教科の担当者には伝えておくから。」
体育の教師が早口でそう言うと、3人は着替えをする時間も与えられず校長室に行くことになった。
校長室は北側の2階にある。
さっきまで3人がいた運動場からは一番遠い場所だ。
3人とも校長に呼び出される心当たりはなく、そもそも、入学してから互いに親しく話したこともなかったので、校長室までの決して短くはない廊下を話をすることなく進むのは少々居心地が悪かった。
3人のなかで、金色の髪をもつ少年を「ディー」という。
彼は無口で不愛想だが、自分自身を高める努力を怠ることなくトップの成績を修めている。
また、自分より成績が下の者でも 決して馬鹿にすることなく、横柄な態度も取らないし、皆で協力しなければならないときは面倒がらずに協力してくれるので、彼に憧れているものは多い。
黒色の髪の少年は「ジェイ」という。
ミステリアスな雰囲気をもっているが、聞き上手で 悩みのある友人がよく相談にのってもらっている。(相談にのってもらった人によると、核心をついたアドバイスがもらえるらしい)
生きものが好きで、生きものからもよく好かれている。
よく図書室で本を広げているが、あまり読んでいる感じではなくぼうっとしている感じに見える。
褐色の髪の少年を「ヴィヴ」という。
明るくて裏表のない好青年なので多くの人に好かれている。
「困ったことがあれば、まずヴィヴに」というくらい周りに人が多く、多くの情報を知らず知らずのうちに知ってしまう。
本人は自覚していないがリーダーシップがある。
3人は一言も言葉を交わさず校長室に着くと、初めてお互いの顔を見合わせた。
ディーが扉を軽くノックすると、中から「入ってくれ」と男の声がした。
「今日は、急に呼んでしまってすまない。」
普段は遠くからしか見ることのなかった男が、3人の少年を温かく迎えてくれた。
近くで見た彼の顔は、眼光が鋭く威厳があったが、生徒を慈しむ温かさも感じられた。
3人をソファに座らせると、彼は徐に口を開いた。
「3人に、リベロへの任務を頼みたいと思っている。」
3人の少年は しばらく口を開くことができなかった。しばしの間、部屋からすべての音が消えたように感じた。
沈黙を破ったのは、だれが発したかもわからない小さな声だった。
「リベロ…?だって、あれは、幻の…失われた文明を持つ国では…」
言葉こそ出なかったが、他の2人の少年も同じことを考えていた。
校長はゆっくりと息を吐くと、3人をまっすぐに見据えて話し始めた。
「リベロは今でも存在している。…意図的に隠していたんだ、私たちを守るために。」
「本当は、もっと早くに、私たちの代で終わらせるべきだったのだ…。いろいろな不運が重なり、私たちはリベロを救うことが出来なかった…。いつか救いたい、救わねばと何度も何度も機会を待っていたのだが、ずるずると今まできてしまった。もう、私たちはリベロに行くことが出来ない…申し訳ないが、君たちに頼む他ないのだ。今の君たちにしか、頼めない…。」
校長は項垂れ、固く目を閉じた。それはまるで死を悟った老人のように見えたし、言っていることも漠然としていて、3人は不気味に感じた。
「リベロって…本当に、あったんだ…」
ヴィヴが小さくつぶやくと、校長や他の2人もはっとしたように彼を見た。
「すまない…私自身が動揺して、説明が足りていなかった。」
校長が力なくそう言うと、横に控えていた女性がすっと進み出た。正直、今まで気配がしなかったので3人は少し驚いた。
「でしたら、私が説明いたしましょうか?」
淡い金髪を一つにまとめた女性はそう言うと、3人に向かって少し微笑んだ。