おむこさんは さがしてないのに
冬童話2021投稿作品です。
おやしきを でていった アグリーは こうしゃくさまと おくさまに みつかって なかれるほど だいじに されていることをしって ふたりの こどもに なりました。
おけしょうと ドレスで まほうみたいに アグリーは きれいになりました。
みなしごで いっしょうけんめいに はたらくことしか しらなかったアグリーは うつくしい こうしゃくけれいじょうに なりました。
うわさをききつけた たくさんのきぞくが アグリーに けっこんをもうしこみました。
でも アグリーは せっかくできた おとうさん おかあさんと はなれたくなくて ぜんぶことわっていました。
あるひ おしろから てがみがきました。
「おうじさまが アグリーを おきさきに ほしいと……」
こうしゃくさまの こえは ふるえていました。
うれしくて では ありませんでした。
「これをことわれば おうさまから きびしいおしかりを うけるだろう。 だがアグリーが うちから いなくなるなんて……」
おうじさまの おきさきとなれば おしろに すむことに なります。
おしろに すめるのは おうさまの かぞくと とてもえらい だいじんたちだけです。
こうしゃくさまでも おしろに はいれるのは だいじな ぎょうじのときくらいです。
おくさまは はいったことも ありません。
アグリーが きがるに おしろを でられるとも おもえません。
こうしゃくさまも おくさまも あたまを かかえてしまいました。
「だいじょうぶよ」
アグリーは むねをはって いいました。
「おうじさまに ことわってもらえば いいのよ」
こうしゃくさまも おくさまも アグリーの じしんが どこからくるのか わかりませんでしたが ほかにほうほうもないので アグリーに まかせることにしました。
「こうしゃくけれいじょう アグリーさま おみえになりました」
おうさまと おうじさまの まえにでた アグリーは ていねいに ごあいさつをしました。
「このたびは わたくしを おうじさまの おきさきにと おこえかけいただき ありがとうございます」
「おぉ まっておったぞアグリー。 うわさに たがわぬ うつくしさだ。 おうじも そうおもうであろう?」
「はい。 まるで はくちょうの ようですね」
おうさまも おうじさまも うっとりしています。
「おほめくださって ありがとうございます」
ていねいに おじぎをした アグリーは
「あの おゆをはったせんめんきと タオルを おかりできますか?」
そうおねがいしました。
おうさまも おうじさまも あたまを ひねりながら おつきのものに よういさせました。
「では」
アグリーは せんめんきに かおをつっこんで あらいはじめました。
あまりに よそうがいの できごとに おうさまと おうじさまのくちは あんぐりあいたままです。
「おまたせしました」
タオルで かおをふいた アグリーは ちいさなめ ぺしゃんこのはな そばかすだらけのかおに もどりました。
「わたしは おうじさまの おそばに いられるような うつくしさは ありません。 こころならずも だましてしまったこと おわびいたします」
ふかぶかと あたまをさげる アグリーに おうじさまが こえをかけます。
「なぜ こんなことを? だまっていれば つぎの おうひに なれたかも しれないのに」
アグリーは もういちど あたまを さげます。
「わたしは こうしゃくさまに ひろわれるまで みなしごでした。 はじめてできた おとうさんと おかあさんから はなれたくないのです」
いうはずではなかったことばが アグリーのくちから こぼれおちました。
「よくわかった」
「……」
おうさまは おこったようなこえで おうじさまはむごんで へやをでていきました。
(どうしよう……!)
しっぱいしたと おもった アグリーは そのばに へたりこんで しまいました。
読了ありがとうございました。
アグリーは おもいきりが よすぎ。
おうじさまが スッピンずきだったら えらいことに なっていた。
いよいよ次話が最終回! アグリー一家の運命やいかに!